損失関数 Loss Function

品質の定義には、さまざまなものがある

「製品またはサービスがそのニーズまたは能力を満たす機能に関する特性の全体」ISO

「明示または暗黙のニーズを満たす能力に関する、ある”もの”の特性の全体」JIS

「品質とは使用に耐えうるかどうかという適合性」ジュラン

どれもうまく表現しているが、具体的な評価にまでは及んでいない。

 

田口玄一博士は「製品が出荷後、社会に対して与える損失、ただし、機能そのものによる損失は除く」と定義し、損失金額で品質を評価することを提案している。

さらに目標からのズレの2乗に損失が比例すると近似する損失関数での評価を提案し、標準偏差を用いた品質管理や最小二乗法が妥当であることを経済的に裏付けることに成功している。

 

損失関数は目標からのズレによる損失金額は、偏差の2乗に比例すると近似したもので、近似であるから、偏差により対処法が異なる場合など、明確に損失金額が示せる場合はそれを用いても良い。しかし、技術開発段階では、ほとんどの場合そのような明確な損失金額を示せないため損失関数を用いるのがよい。

 

損失金額L=A/⊿*(x-m)^2

A: 機能限界における損失金額、⊿:機能限界、m:目標値、x:特性値

 

2次の近似はテイラー展開の考え方に基づく。

この関数は近似のため、機能限界内での使用に留めるべきで、外挿での使用は注意が必要。

逆に考えるなら、「2乗が経済に比例するような特性値を選ぶ」べきということ。

 

この損失関数はSN比の数式のベースとなっている

変動は

望目特性:目標値が正負やゼロの場合。データの変動は総変動(St=y1^2+y2^2+・・・)。

  これはSt=Sm+Seと分解され、Seは望まない有害成分であり、Smは平均値の2乗で有効成分  を示す。有効成分/有害成分の比を取り、比率に加法性を持たせるためオメガ変換を行い

  10log(Sm/Se)

望小特性:小さければ小さいほどよい場合で負はとらない。ゼロからの偏差の2乗に比例

         St/n  比率ではないため対数を取ることは疑問。

望大特性:大きければ大きいほどよい場合で負はとらない。寿命や強度など。寿命が100サイクルの場合、損失は価格/100となり逆数に比例する。

     

デミング(W. Edwards Deming)博士もその著書「Out of The Crisis」 p.141(ISBN 978-0-262-54115-2) にて、以下のように損失関数の効用を認めている

"The fallacy of zero defects

There is obviously something wrong when a measured characteristic barely inside a specification is declared to be conforming; outside it is declared to be nonconforming." 中略

"Better description of the world is the Taguchi loss function in which there is minimum loss at the nominal value, and  an ever-increasing loss with departure either way from the nominal value." p.141

 

訳 

「不良ゼロ(ZD思想)の間違い

ぎりぎり規格に入っていれば適合品、ぎりぎり規格外は不適合品として、測るのはあきらかに間違っている。」 (中略)

「目標値における損失を最小する場合は、田口の損失関数(目標の両側に外れるにしたがって損失が増加するとする)が最も良い表記である。」

 

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