2003年12月13日に第117回研究会を実施した。

事例検討

① 「CAEによるAl合金フェイスミル加工切りくずの分断性評価」(神戸製鋼 赤澤浩一):

CAEを使って,Al合金表面のフェイスミル加工時に発生する切りくずの状態を解析した。解析時は,切り込み量やブレーカの傾斜角度,形状を変えて切りくずの発生状態を調べた。切りくずが加工表面にキズをつけたり加工性を変えたりするので,できるだけ細かく分断した切りくずにするのが目的である。切りくずを回収する機構を考えても,細かく分断された方が良い。課題としては,CAEの解析が非常に時間がかかっているので,解析方法も検討が必要である。またFEMでは切りくずの分断は解析できないので,切りくずのカール状態,切削温度,切削抵抗,応力歪などの評価も考えている。本事例に対して,下記のような意見が出された。

・切削加工のエネルギー変換を考えれば,切りくずは分断されるより,繋がっている方がよいように思う。分断されるということは,エネルギーがスムーズに伝わっていないのではないか。切りくずが分断されても切削面の精度や,切削効率に問題が出ることが心配である。

・切りくずの状態評価は,切削の機能ではなく品質項目である。

・切りくずの評価であっても,形状や状態が安定しているかどうかは評価できる。(標準SN比)

・切りくずの出方と切削加工の安定性は別々に解析してはどうか。その方が簡単にできそうである。

・CAEで最適化したあとの実実験はどうするのかなどの疑問も有り,今後の研究を期待される。

② 「レーザ切断装置最適化条件検討(株)日立コミニュケーションテクノロジー 安濃守人ほか」の事例について(タツタ電線 高木正和):

本事例に対して下記のような質問や意見が出された。

・評価特性は最大加工速度でなく,加工のエネルギーに関連した特性,たとえば切断除去量,切断幅,除去体積などが望ましく,入力を変化させてこれらを評価すべきである。最大加工速度の評価では,切断できる,できないのON,OFF評価になっているので,エネルギー変換を基本とした加工の基本機能を評価できていない。

・確認実験結果がないので実験そのものが不完全である。利得の再現性を知りたい。

・品質工学の実験手順は守らなければ実験の意味がなくなる。

③ 「品質工学機能分類分けの検討(富士ゼロックス(株) 大西章夫ほか2名)」の事例について(松下電器産業 山口新吾):

本事例に対して下記のような質問や意見が出された。

・富士ゼロックスの分類は,基本機能と品質特性がごちゃごちゃになった分類になっている。エネルギー変換を基本とした基本機能の分類にするべき。

・原顧問の「品質工学の機能」による分類は,完全にエネルギー変換である。すべての機能はトランスジューサで表現できるはずである。

・山口氏の宿題として,松下電器内部の課題を機能分類し,一覧表を作成する。

松下電器の機能分類一覧は,世の中での機能分類一覧に匹敵するはずである。

グループ検討会:3つのグループに分かれて,個別のテーマについて議論した。全部で9つのテーマが議論されたが,全体で討論するテーマは今回提案されなかった。原顧問より,最近の傾向として許容差の決め方が理解されていないのではないかとの指摘が行われた。これに関して,品質工学の研究がパラメータ設計に集中しているのと,組織的に品質工学を企業内に導入されていないのが原因として考えられる,などの議論が行われた。

 (コニカミノルタ 芝野広志 記)

 

2003年11月17日に田口玄一氏を招聘して第116回研究会を実施した。

田口玄一氏の講演「音声伝達目的機能と技術の立場」(標準化と品質管理Vol.56,No.11「機能と機能性」連載29):音声伝達の機能について解説された。

CCIFの電話機の性能テストは官能評価であり,測れない音を1つの値で表す測定技術がないからである。計測できなければ,技術者は何もできない。音は波の問題であり入力と出力が一致すれば良いが,これは基本機能でなく目的機能である。転写性は基本機能ではない。基本機能は無限にある信号の水準を減らすこと,早く簡単に実験することである。基本機能は計測できなければならない。100音節の信号は品質特性だから品質工学としてはまずい。周波数特性では,異なる周波数が同時に来たときの保証がない。音は,その大きさ(感度)には関係なく,SN比のみが問題である。音声は周波数を測るべきで,パワーを測ってはならない。

事例相談

① 「穴検索加工条件の最適化」(三菱マテリアル神戸ツールズ 原田 孝):

ホブ穴研削の精度改善である。穴が工具としての基準になるので加工精度が必要。電力の計測ができなかったので,目的機能であるが,切り込み量と取り代の転写性で評価した。切り込み前の隙間Δが不明だがSN比計算時にどう処理をすれば良いか。隙間Δがあっても良く,M1を基準点とした基準点比例式で解析すれば良い。動特性ではなく,標準SN比で計算すれば良い。製品(ホブ)を使わず,テストピースを使って研究(研削の技術開発)をすべきであるなどの意見が出された。

② 「画像による健康度判定へのMTS適用検討」(コニカミノルタ 松田伸也):

人間が行う舌診(舌の色による健康診断)を画像解析による自動診断できないかを検討している。健康な人を基準空間にして,患者のマハラノビス距離を求めた。人間の段階評価を特徴量とした判別精度は不十分。人間の評価に色の計量値を加えたものを特徴量としたがやはり判別精度は不十分だった。舌画像の画像の統計量など64項目の画像特徴量のみにすると,精度が向上し判別可能となった。患者の疾患部位によって特徴量に差があることがわかり,疾患部位を特定できる可能性がある。田口氏から,分布を見るのは間違っている,真値に対するSN比に意味がある,病気かどうか,病気の程度の判定は医師がやる,などの意見があった。

③ 「絶縁心線被覆加工の評価検討」(タツタ電線 高木正和):

心線に絶縁加工をした後の伸びが20%以上で安定させたい。「心線の軟化条件」と「被覆加工条件」の安定性に分けて検討しようと考えた。何を測るかの案として,「軟化条件→無負荷で伸びを評価」と「被覆条件→組成変形量で線形を評価」を考えた。加工工程の評価と,指示用での伸びの安定性の両方を評価することが必要であるとの意見が出て,このテーマは12月の研究会で引き続き議論することにした。

④ 「ガスタービン翼の冷却性能評価」(三菱重工 高濱正幸):

ガスタービン翼にあける冷却用の穴の設計定数で,冷却効率の改善をしたい。冷却空気量に対する熱交換量を評価特性とし,シミュレーションで解析した。現行より冷却効率が38%改善した。本事例は制御因子が少ない。制御因子が多ければ,もっと改善するだろうとのアドバイスがあった。  

(コニカミノルタ 平野雅康 記)

 

10月3日に第115回研究会を第1回関西品質工学研究会シンポジウムとして開催した。他の研究会からの参加者を含め63名の参加者があった。これまでの研究発表会やシンポジウムでは時間的な制約もあり,十分な討論ができていなかったことを踏まえ,今回は討論の時間をたっぷり取り,会員の希望が多かった優秀な事例をお招きし,シンポジウムを企画した。

  ① 基調講演「今なぜ品質工学か,その意味と重要性について」(関西品質工学研究会顧問 原 和彦):企業の役割は顧客を創造することで,そのためにはイノベーションが不可欠である。戦後,日本の経済成長を支えてきたのは品質管理,信頼性工学等の管理手法で輸入したものであった。これからは自分の立場でムダを省いているだけではダメで,自前の技術がなければ勝組にはなれない。技術に絶対はなく,相対であり,比較が重要で,多次元でものを見る必要がある。この多次元でものを見るところに品質工学が貢献できる場がある。このシンポジウムに参加された方々が核となって,幅を広げ,裾野を広げる活動・実行をしていただくようお願いするとの趣旨の講演が行われた。

「マイクロコンピュータソフトウェアの直交表を用いた効率的評価法」(松下電工(株) 木村哲夫):ソフトウェアをユーザーが使う立場でデバックを行った「温水洗浄便座」と「エアマッサージャー」の事例で,「温水洗浄便座」の場合,動作はすべて正常であった。「エアマッサージャー」の場合,正常動作でないものが三つ発見された。プログラム上で原因が発見できバグ対策を実施した。誤差因子は調合すべきか否か,対策はソフトで行うべきか,ハードで行うべきか,ソフトウェアの場合は多信号に対する機能の正しさを評価していることになる等の意見があった。

「周波数をノイズとした誘導コイルの基本機能評価」(コニカミノルタ(株) 岡林英二):プリンタのヒートローラーでは,その温度を保つため,使用電力の90%がプリントを行わない待機中に消費されている。短時間で昇温できる新しいシステムの開発を行った。インバータ回路の評価は何で行うのがよいか。矩形波(あらゆる周波数が含まれる)を入力として,過渡特性をみるのはどうか。部品のばらつきや周波数はノイズか,使用環境条件や劣化を考えなくてよいのか等の意見があった。

「シミュレーションによる衝突安全性能向上のためのコンポーネント特性の最適化」((株)いすゞ中央研究所 阿部 誠):貨物自動車における衝突安全性を質量と質量の間に繋いだ非線形ばねのモデルを用いてシミュレーションでの実験を行ったが,水準間隔を±50%としたため,再現性が悪かった。水準幅を小さくし,SN比が単調増加している因子はSN比が増加する方向に水準をスライドさせて,逐次的に実験を繰り返した。その結果,6回の繰り返しで再現性のよい最適条件を見出した。再現性が悪いのは特性値が悪いからで,特性値を見直す必要がある。外的荷重を加えた時の時間と変位の関係を計算してはどうか。制御因子間の「悪玉の交互作用」が作用しないように特性値,評価方法を決める。制御因子を6回もスライドさせないといけなかったのか,最初に水準を設定する時に十分検討すればこんなことをしなくてよかったのではないか等の意見があった。

「テーラードブランク工法における溶接の機能性評価」(日産自動車(株) 中澤 栄):従来は基本機能を弾性域でのフックの法則としていたが,プレスでの成形性を評価できないと考え,弾性変形領域から塑性変形領域までの全域の評価が必要と考えた。母材の伸び-反力特性を標準条件とした標準SN比による解析を行った。追加解析として,弾性域のみでの0点比例式による解析,N1の出力を信号とした標準SN比での解析を行った結果,母材を標準条件としたものの再現性が最もよかった。母材の特性は目標値であり,これを標準条件とするのではなく,劣化前のN1での出力を信号として,修正後(2rで割る)の標準SN比で解析すべき等の意見があった。

「シミュレーションと品質工学によるSAWフィルタ安定性設計」(山形富士通(株) 細川哲夫):従来の設計は試行錯誤により条件を振り,目標値に合わせ込む方法であり,ロバストネスを考慮した設計は行われていなかった。今回はシミュレーション実験を行い,標準SN比を用いてロバスト設計の後,目標値へのチューニングを行った。パワーより周波数の安定性が重要である。モデルのようなすだれ状の電極を並べたものでは改善の余地が少ない。現物での再現性は確認しているのか等の意見があった。

いずれの事例に対しても,予定時間では足りないような活発な討論が行われた。

(ダイハツ工業(株) 清水 豊 記)

 

9月6日に第114回研究会を実施した。

勉強会

「マイクロコンピュータソフトウェアの直交表を用いた効率的評価方法」(松下電工(株) 木村哲夫):直交表を用いて効率的にソフトウェアのバグを発見する方法の事例発表を行った。ユーザが操作することによって「影響があって欲しい因子」を信号因子としてL36に割り付け,「影響があって欲しくない因子」を誤差因子としてL8で外側に割り付ける。36×8=288通りの条件でソフトバグを評価した。信号因子と誤差因子の割り付け方法によってもっと実験回数を減らす事ができないか。バグはハードとソフトが関連しあって生じることがあるが,このような場合の改善の仕方の判断はどうするか等の議論が行われた。

「シミュレーションによる衝突安全性向上のためのコンポーネント特性の最適化(いすゞ中央研究所 阿部氏)の事例」(ダイハツ工業(株) 清水 豊):貨物自動車の正面から衝突した場合の生存空間を確保するための,車両コンポーネントの最適化の事例で,非線形バネ・質量モデルを用いたシミュレーションを用いている。今回のシミュレーションでは,水準の間隔を狭くし,利得の再現性を確保したうえでSN比が単純増加する方向で逐次スライドさせる方法を採用した。その結果6回目の最適条件の利得は約6db得られた。評価特性は,最終変形量で評価していたが過渡特性で評価したらどうか。1回目から6回目までのシミュレーションの利得の再現性は得られたかなどの意見,質問が出された。

グループディスカション:各自が持ち寄った事例,相談,質問について4グループに分かれてグループディスカションを行った。全体討議では,その中から「ソリッドホブ軸穴研削加工条件の最適化」(三菱マテリアル神戸ツールズ 仲田慎平)について討議が行われ,評価特性を除去量/時間の関係より除去量/消費電力とした方が良いのではないか等の意見が出された。

(ヤンマー(株) 残間茂雄 記)

 

8月1日に第113回研究会を実施した。

田口玄一氏の講義:「標準化と品質管理」Vol.56,No.7の「機能と機能性」を資料として,「率のデータの標準SN比とオメガ変換」について講義が行われた。

事例検討会

①「流動性分布測定器の最適化」(ミノルタ(株)/荘所義弘):複写機のトナーなど粉体は気体,液体,固体のいずれの特性にも関係し,その計測にはいくつかの提案があり,ここではトナーの流動性評価を利用した測定器の評価について討論された。粉体を振動ベルトに乗せて移動させ,粒径,かさ密度を計測する方式で制御因子は装置の条件など,誤差因子は試料の投入位置などで評価している。討議内容は測定器としての基本機能に関する事項,誤差因子の拡大,SN比の改善か,感度のチューニングか目的の明確化などであった。

②「流動性による比重分布の精度確認」((株)神戸製鋼所/原 宣宏):粉体状の媒体を下から高圧空気を注入して流体特性を持たせ,さまざまな形状をした物体の比重を計測する装置の評価方法が討論された。制御因子としては風速,媒体の種類,層の高さ,フイルタなどで誤差因子は被測定物の形状,寸法,計測時間などである。同じ比重でも形状,寸法などでばらつきが大きく,何とか機能性を向上したい。討議内容は信号も誤差因子もユーザの条件して扱う。要求される分別精度を明確にしてはどうかなどの意見があり,フロアの専門家から「粉体でも空気中で動く場合は液体のように振舞う」など貴重な意見が出たりした。

③「臭いの官能評価」(ミノルタ(株)/安永英明):複写機のトナーに不快な臭いが付き,ユーザークレームになることがあり,特に最近は粒径が小さくなり臭いが付きやすくなっている。MT法を用いて臭いの評価方法を確立しようとして,社内モニターを依頼して,基準と比較した5段階法で実施している。基準空間は「臭わない」としている。この方法は環境,揮発成分の有無,モニターの特性が影響してデータのばらつきが大きく,マルチ法を用いて交互作用をなくしている。討議内容は基準空間はひとつでなく,いくつか選んではどうか。ばらつきをなくす方法としてデータ取得の条件を選んではどうか。評価のための基準空間とトナーの材料,製造工程の定数などを区分して,評価センサーと臭いを抑える方法に区分してはどうかなどであった。

<関連事項>

研究会終了後,芝野幹事長が品質工学論文賞で金賞を受賞されたことをお祝いして,田口氏の参加を得て,参加者全員でお祝い会を開催した。  

(ティ・ティコンサルタント 竹ヶ鼻俊夫 記)

 

7月10日に第112回研究会を第6回関西地区(滋賀・京都・関西)合同研究会として京都府中小企業総合センターで実施した。

関西品質工学研究会の原顧問より,上杉鷹山の言葉「なせば成る,為さねばならぬ何事も,成らぬは人の為さぬなりけり」を引用し,品質工学も田口氏から吸収するだけでなく,これからは,われわれが実行することにかかっている,そのためには,何をなすべきかを考えてほしい。ぜひ,幅を広げ,裾野を広げる活動・実行をお願いしたいとの主旨の挨拶があった。

「ガンマ線カメラにおける検出器の機能性改善」((株)堀場製作所/馬場康雄):CTは鮮明な画像が得られるが静止画像である。一方,ガンマ線カメラは鮮明な画像は得られないが放射線を発する薬品により動画が得られるという利点がある。評価方法はNEMA規格準拠のLSF(Line Spread Function)特性とした。L9直交表実験を行ったが最適条件が現行条件と同じになった。最適条件では画像の見え方に不満がある。NEMA規格は満足しているが,フォトマルのある部分が明るく,周囲の隙間部が暗い。本事例について,シミュレーションでできないか。ターゲットに合わせるのが目的ならば,チューニングのみでよいのではないか。コバルト57スペクトラムの半値幅を誤差因子としているが,誤差因子ではない。基本機能の検討がなされず,LSF特性という品質特性を取り上げている等の意見があった。

「誘電体のSPS焼結条件のパラメータ設計」(滋賀県東北部工業技術センター/井上栄一):未経験な技術であるSPS(Spark Plasma Sintering)における生産技術に対してパラメータ設計を行いたい。SPSでは通常の焼結と違い,混錬後すぐに焼成できる,粒径の粗大化が少ない等の利点がある。現在計画段階であり,基本機能として何を取り上げればよいか相談したい。本事例について,形状重視であれば転写性を主に,特性重視であれば密度,電気特性,力学特性を主に考えればよいのではないか。電気特性ならば周波数を誤差因子としてはどうか。とにかく実施してみてからいろいろ考えればどうか等の意見があった。

「シミュレーションの活用によるクリーニングシステムの機能評価」(ミノルタ(株)/安永英明):感光体のクリーニングシステムのパラメータ設計をシミュレーションで行った。ブレードの押圧と食い込み量はそこそこ再現したが,エッジの横移動量・周期は再現しなかった。また,開発スピードが約3倍になった。本事例について,振動振幅の解析は振幅と周期を別々に解析しても再現しない。周期を望大,振幅を望小で解析したらどうか。エッジの振動解析を行うのであれば,XY方向の時間に対する変位の安定性をみればよい。ブレードエッジのRは必須ではないか等の意見があった。

)「自転車用ヘッドランプのシミュレーションによる配光設計」((株)シマノ/石川記尉):目標とする配光パターンを持つランプを設計したい。拡散光では光をコントロールできないので梨地ガラスバルブを透明ガラスバルブで採用することにした。10本の光線を選び,受光面(10m先)でのx,y座標をデータにしたが再現性が悪い。受光面での光線の相対距離をデータとしたがやはり再現性が悪い。実際の光源データ(松下電工による測定)を取り込み,y軸上での照度の分布をデータとして新しくシミュレーションを行うことを検討中である。本事例について,光源の向きは後からでもよく,最初は点光源でよいのではないか。再現性が悪いのは,誤差因子の選択,制御因子間の交互作用等が考えられるので,再検討してはどうか。光学系への品質工学の適用は行われているようであるが,うまくいった事例が出てこない等の意見があった。

研究会終了後,懇親会を実施し,引き続き活発な意見交換が行われた。

(ダイハツ工業(株) 清水 豊 記)

 

6月7日に第111回研究会を実施した。

勉強会

「シミュレーションと品質工学によるSAWフィルタ安定性設計(品質工学誌Vol.10,No.2」(松下電器産業(株) 山口新吾):本事例では,信号因子を6水準としているが周波数の上下各1水準では駄目か,計算値(データ)は対数値を用いるべきか真数を用いるべきか,中心周波数はどのように決めたか,誤差の調合は結果オーライでよいのかなどの疑問点を中心として,出力ではなく周波数のばらつきを見るべきではないかについて等について議論が行われた。本事例は10月に開催される関西シンポジウムの招待事例であることからシンポジウムでさらに議論を重ねることになった。

「周波数をノイズとした誘導コイルの基本機能評価(第9回品質工学発表大会論文集)」(三洋電機(株) 貴志宗紀):本事例について,立ち上がりを評価しなくてもよいのか,周波数をノイズにする意図は何か,周波数はノイズでなくチューニングすべきものではないかなどについて議論が行われたが,本事例も関西シンポジウムの招待事例であるのでシンポジウムでさらに議論を重ねることになった。

グループ討議;各自が持ち寄った事例,相談,疑問等の話題を4グループに分かれて討議した。その中から全体で検討すべき問題として,「一方クラッチの寿命試験をやらずに評価するには」(光洋精工(株) 合田憲和)について検討した。:一方クラッチの寿命試験は一週間の期間が必要であるが,寿命試験を行わずに評価したい。そのためにはどうしたらよいかとの相談が行われた。一方クラッチの評価を行うためには,部品の十分な精度と何をノイズにとるかが問題であるが,部品の精度についての詳しい内容とどのような評価方法をとるかが不明であるので,結論を持ち越して継続的に検討を行うことになった。  

((財)日本軸受検査協会 中井 功 記)

 

5月14日に田口玄一氏を招聘して第110回研究会を実施した。

田口氏の講演;「官能による識別力の評価」(標準化と品質管理誌)を資料として,ピアノを習った時期が異なる人に対する和音の識別力に関する試験,タバコを吸うことによる味覚識別能力低下を研究するためのビール銘柄における識別試験を例に,デジタルシステムに対する解析法(水準別SN比の総合尺度)の解説が行われた。これは,入出力表(入力に対する出力の判別表)を基に,寄与率およびSN比を算出して総合比較を行う方法である。

事例相談

①「洗濯機の振動低減」(三洋電機(株) 貴志宗紀):家庭用洗濯機の振動問題に,シミュレーションと品質工学を適用した。直交表を活用して,洗濯機数カ所の変位の最大/最小データを評価したところ,解が得られるまでの計算回数が低減した。外力を変化させる解析や,静的にバネ変位を過渡評価する等の意見が出された。田口氏からは,シミュレーションではばらつきの改善は一点でよい,式を考えて変数をばらつかせる,共振点については共振周波数のばらつきを低減するといった指摘を受けた。

②「MTシステム活用による感光体生産工程の管理」(ミノルタ(株) 安永英明):感光体の生産工程に関し,MTシステムを用いたフィードフォワード制御について検討し,予測精度が高いことを確認した。重回帰分析では予測値が実績値とずれていたが,これは重回帰が過去のデータを使用した“あてはめ”に過ぎないためとの意見があった。田口氏からは,項目数に対してデータが少ない場合,項目をいくつかのグループに分けて各グループについてMT法で解析し,そのうえでさらにMDを算出するマルチ評価が有効との指摘を受けた。

③「文字/写真画像の判別方法の誤差因子を考慮した開発」(ミノルタ(株) 平野雅康):デジタルカメラで,文書と画像が入った対象に対してコントラストをつけて文字を読みやすくするソフトを開発中である。文字画像を基準空間としてMT法を適用し,誤り率が向上した。写真の占有面積とMDとの関係を調査して動特性で評価するしきい値の変更を損失関数で評価する等の意見が出た。

④「流動性分布測定器の最適化検討」(ミノルタ(株) 荘所義弘):粉体の流動性を評価する試験器を開発し,3種類の流動性指標について検討し,SN比の利得再現性を調査した。移送性の計測値をまず標準SN比で安定化し,次に値をチューニングする2段階設計を行うのが良いとの意見が出た。田口氏からは,流動性と移送性の区別について指摘があった。

(神戸製鋼 原 宣宏 記)

 

4月5日に第109回研究会を実施した。

勉強会

 「アンテナアンプの技術開発の事例について」(古野電気 林 忠夫):本事例の説明を行い,電気・電子回路設計に品質工学を適用するには,どのようなプロセスで適用すればよいのか議論した。回路設計では,パラメータ設計の前に,まず目標曲線を実現する回路を創造し,次にCAEでシミュレーションを行って目標曲線との合致性を確認することが重要である。合致しない場合は,新しいシステムを新たに考案する必要があり,品質工学以前に技術者のスキル・創造力が重要になるなどの活発な議論が行われた。

 「機械加工ラインにおけるオンライン品質工学の展開とサイクルタイムの短縮」「品質工学による最適工程設計」の事例について(シマノ 太田勝之):本事例について解説を行い,オンライン品質工学の適用について議論した。オンライン品質工学の適用はトップダウンで推進することが重要である。損失関数を現場に説明する場合に,不合格損失Aをいかに説明し,理解してもらうかについて活発な議論が行われた。

グループ検討会:各自が持ち寄った事例や疑問をテーマとして3グループに分かれて討議した。その中から全体で討議すべき問題として次のテーマについて検討を行った。

 「粉体の流動性測定器について」(ミノルタ 荘所義弘):粉体の総合特性を測る測定器の最適条件を探求するために,入力M:移送時間,出力y:排出重量,誤差因子:3水準,標示因子:粒径3水準で実験を行い,標準SN比で解析を行った。結果は,粒径差が検出できない条件が最適条件になり,計測器としては使えない結果になった。どのような解析を行えばよいのかという相談に対して全体で討議した。データ解析を,入力M:排出重量,出力y:移送時間に置き換え,基準点比例式または動的機能窓法で解析すればよいなどの議論が行われた。本事例については,本年度の品質工学研究発表大会で,その結果の報告を行ってもらうことになった。

 「洗濯機の振動問題について」(三洋電機 貴志宗紀):洗濯機は振幅と床荷重を低減させる必要があり,過去に静特性でトライしたが改善できなかった。どのような評価方法でトライすればよいのか全体で討議した。振動の問題は,まず,ノイズに対して振幅を安定させる。次に,共振点を変化させる方法でトライすればよいなどの議論が行われた。本事例は,5月度の研究会で田口氏の意見を聞いてみることになった。  

(富士ゼロックス 櫻井英二 記)

 

3月8日に第108回研究会を実施した。

勉強会

 「標準SN比について」(ITEQ 中野惠司):20世紀型ロバスト設計の問題点として,再現性が悪いということがあり,その原因の一つに直線のゆがみの影響と誤差因子の影響を分離せず評価していたことがある。この直線のゆがみの影響を安定性の評価に入れないようにしようということから,21世紀型標準SN比が出てきた。21世紀型では2段階設計法の完全適用が必要である。この時,実験毎に信号因子の水準が違えば,SN比がその影響を受ける(信号の水準値が小さくなるとSN比が大きくなる)ので,基準化が必要となる等の解説があった。再現性を悪くする要因は計測誤差等たくさんあり,直線のゆがみだけを取り除くだけで,再現性が良くなるといえるのかなどの議論が行われた。

 「表面温度計校正システムの不確かさの研究 東芝コンポーネンツ」(エスペック 中浜寛和):93年出版の「計測における不確かさの表現方法のガイド」により,データに不確かさを付記するよう求められることになった。不確かさを求めるのに通常では使われないSN比や直交表をつかっているので参考にしたい。

不確かさを求めることにどのような意味があるのかなどの議論が行われた。

 「自動ドアセンサの機能性評価 オプテックス」(松下電工 大日方俊哉):自動ドアセンサのビームスイッチにおいてセンサヘッド部の金型が磨耗したため,改善を盛り込んだ新規金型を手配した。新規金型による変更品の評価期間を短縮するため,機能性評価を行うことにした。信号は投光電流とし,受光部の出力電圧を計測した。その結果1週間の評価が2時間で行うことができた。誤差因子のレンズ面の汚れについて光を減衰させるプレートで代行したが,それでよいのか,信号を変えていることになるのではないか。遮光の機能を測る通過スピードに合わせた出力を測るべきではないかなどの議論が行われた。

グループディスカッション:3グループに分かれ,計11件の事例・相談・質問・話題についてグルーディスカッションを行った。全体討議では「粉体の流動性測定器」(ミノルタ 荘所義弘)について議論が行われた。粒径の違う粉体を用意し,実機での実験結果で2種類の解析を行ったが,よい結果が得られなかった。ばらつきをなくすだけでなく,感度も見る必要がある。基準点比例のSN比・感度の計算を見直すなどの意見が出された。

(ダイハツ 清水 豊 記)

 

2月14日に田口玄一氏を招聘して第107回研究会を実施した。

講演「シミュレーションによるロバスト設計を中心にして・戦略としてのタグチメソッド」(田口玄一)

事例相談

 「光学フィルタの評価方法」(タツタ電線(株),高木正和):熱緩和の影響の少ない条件を見つける実験を行い,2通りの出力で解析した。その結果,2つの出力で要因効果図の形が異なった。データ解析方法,誤差因子の取り方等について活発な議論を行った。田口氏から,波長と遮断率に分けて,それぞれの目標値からの差をゼロ望目特性で解析するとの意見があった。

 「粉体の流動特性測定器の紹介」(ミノルタ(株) 荘所義弘):粉体の総合特性の測定器の紹介があった。本事例については,本年6月の品質工学研究発表大会で発表がある。

 「ゲートエッチングにおける光干渉型エンドポイントの検討」(松下電器産業(株) 山口新吾):半導体のエッチング加工に関する事例相談があった。田口先生から,計測は真値を作って計測することが肝要である。先ず,エッチング時間と削れ量,削れ量と光干渉強度を測定できるようにすることなどの意見があった。

(富士ゼロックス 櫻井英二 記)

 

1月18日に第106回研究会を実施した。2003年度総会の後,グループに分かれて討議が行われ,次のテーマについて全体討議を実施した。

「薄肉の射出成形技術の評価方法について」(松下電工(株),大日方俊哉):薄肉品の射出成形において強度補強としてリブを裏側に入れてあるが,リブ部分の表側にヒケが発生する。転写性以外で何かよい評価方法がないかとの質問があった。安定してヒケを発生させるという考え方をして,金型を事前に加工してヒケを発生させないよう補正すればよいのではないか,充填後の冷却と流れの両方の研究が必要ではないか,などの議論が行われた。

「光学フィルタの評価方法」(タツタ電線(株),高木正和):光学フィルタの特性が熱で低下するが,どのように評価すればよいかとの質問があった。実験N0ごとに信号(波長λ)の値を変えて評価してはどうか,波長をデータにとって標準SN比で評価してはどうか,などの議論が行われた。また,標準SN比の計算方法について,分母も2Rで割ると変更されたが,これをどう解釈すればよいのかについても議論が行われた。

「現像材の攪拌シミュレーション」(ミノルタ(株),荘所義弘):現像材の攪拌シミュレーションで,トナー濃度だけでなく位相も含めて評価したい。例えば,N0,N1,N2における波形の第1ピークでの時間tをデータにとって良いか,との質問があった。ピークとその前後のデータを取ったほうが良いのではないか,時間を安定させたいのか,ある時間でのyを安定させたいのか,問題としてはどちらになるのか,目標の波形にチューニングするには,フーリエ変換で周波数を出し,望小特性での評価も考えられるなどの議論が行われた。

(三洋電機(株) 貴志宗紀 記)

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