2007年12月1日(土)に第163回研究会を開催し,以下の事例検討が行われた。出席者は37名。

1.「支持格子の熱水力設計」(原子燃料 村瀬百慶,柿本俊平):原子炉の1次系冷却水温度を上げるための指示格子の羽の混合性能を,シミュレーションで最適化する方法について相談があり,機能は混ぜることではなく,熱変換や熱を取り出すことや,目的の温度勾配とすることが提案された。シミュレーションなら自由にいくらでも検証できるので,もっと大きなシステムの変更を考えてみてはどうか,原発事故の防止にはMT法が使えるなどの意見があった。

2.「プリンタの帯電器の検討」(東レエンジニアリング 稲垣 潤):感光ドラムを帯電させるコロナ帯電器の評価についての相談があった。ドラムを所定の電位に均一に帯電させ,劣化などのノイズに強くしたい。標準SN比での評価や,画像での評価,シールド電流の安定性評価,2信号のSN比での評価などが提案された。

3.「事例による新SN比の検証」(村田機械 鐡見太郎):20世紀型SN比,21世紀型SN比のそれぞれの問題から,関西品質工学研究会で新SN比が提案されたが,それを社内事例にあてはめた結果が報告された。残念なことに,もともと再現性が悪い実験結果のため,理解してもらいにくい部分があった。さらに,わかりやすい事例にて検証を進めてもらうこととした。

4.「MT法での符号付数値予測」(村田機械 荘所義弘):勉強のために,MTシステムを活用して為替変動の予測を試みた結果が報告された。(終値-始値)の予測を,T法ではうまくいかなかったのでMT法を用いた。さらに,単位空間を真ん中ではなく,円高時,円安時の両端に2つ作り,2つの距離を算出。その2つの距離差を用いるとうまくいった結果が報告された。内容として議論の余地はあるが,結果としてうまく予測できているのでさらに検証を進めてもらうこととした。

(シマノ 太田勝之 記)

 

2007年11月3日(土)に第162回研究会を村田機械(株)本社で開催した。出席者は33名。この他に村田機械(株)から11名が特別参加した。最初に村田機械(株)本社事業所の見学があり,その後下記の講演,事例検討があった。

1.講演「技術データは(評価には)役立たない」(原 和彦 顧問):田口玄一氏の「技術データは役立たない」という言葉に対する解説を出発点として,さまざまな観点から評価技術の重要性について論じられた。専門技術で作ったシステムをきちんと評価することが大切である。ロボット大会での日本の敗北は戦略のなさに起因するところが大きい。市場はノイズだらけであり,ノイズに強いシステムを考案することが大切である。形だけ顧客満足を言って実際は「早くモノを作れ」としか言わないリーダーにも問題がある。品質問題のほとんどは社会損失を考えていないことからきているなど,多岐に渡った講演であった。

2.事例検討

(1)「めっき強度の評価方法」(村田機械 荘所 義弘):筒形状のセラミックにめっきし,筒状の発熱体を作る場合のめっきの評価について議論した。めっきの専門技術的な評価を行うのではなく,システムの目的に応じた評価(電気特性,入力電力と発熱量の関係など)を行うべきとの議論があった。

(2)「定着性評価方法の検討」(村田機械 荘所 義弘):コピーの画像の評価で,ノイズとして擦り試験を行っている。データは濃度データである。濃いパターンから削り取られたトナーが淡いパターン部を汚染してしまうやり方はまずい。汚染を含めた評価をするなら,無パターン部の変化を測定すれば良いなどの議論があった。

(3)「荷電粒子の軌跡検討」(村田機械 荘所 義弘):電界レンズを用いて荷電粒子を集中させ,目的基材に小さなドットを形成するシステムの評価方法について検討した。ドットの拡大画像では粒子の存在/非存在の境界線がはっきりしないなどの問題がある。ピーク濃度や半値巾などの考えを導入して特性値をとってはどうかなどの議論があった。

(4)「T法による売り上げ予測」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ 芝野 広志):ある製品の月ごとの売り上げ予測をT法を使ってトライした。項目データは過去の売り上げデータを用いた。項目を過去の月ごとの生データを用いるとうまく予測できなかったが,月ごとの累積データを使うと予測精度が飛躍的に上がった。また,T法における項目のηは真値と項目の間の直線関係に限る必要はなく,二乗,平方根,対数などによるデータ変換後のη,βを用いる工夫もあるのではないかとの提案があった。時系列データを扱う場合,関西QE研で議論されてきた累積法は,大きな効果がある例が多く出つつある,累積法は田口氏の推奨している指数平滑法に似た効果が含まれているのではないだろうかなどの議論があった。

(村田機械 鐡見太郎 記)

 

2007年10月5日(金)に,大阪市立中央青年センター第一ホールで第5回関西地区品質工学シンポジウムを開催した。関西品質工学研究会芝野広志会長の挨拶の後,セイコーエプソン三石明生氏の特別講演と事例発表が行われた。

1.特別講演「事業成長を支える品質工学と経営者の役割」(セイコーエプソン 三石明生):原和彦顧問とのエピソードを交えた自己紹介の後,セイコーエプソンの取り組みの紹介があった。品質工学の目的が社会に与える総損失を減らすこととしてみると,交通事故の経済的損失は04年の日本では6.75兆円で,GDPの1.4%になり,交通事故は社会に大きな損失を与えている。また,開発設計現場(知的生産の分野)が疲弊しているのに生産性向上策がされていない。日経新聞によると「電池問題に見る現場力の限界」との見出しで,日本のもの作りは生産現場の熟練工を中心とした工夫・改善で品質を高めてきた。工場に起因する電池トラブルはこの現場力の限界のサインであり,もの作りに対するノイズを考慮しない設計が生み出した問題である。日本のもの作りも設計力に軸足をおくタイミングだとして品質工学を知らない記者が以上のような記事を書いている。品質工学は評価技術だといわれている。製造では商品技術,生産技術がよくいわれるが,第3の技術として評価技術がある。ものを見ただけでは評価技術はわからないが,今後はこの評価技術が競争力強化の原動力になると考えている。ピーター・ドラッカーの書籍「すでに起こった未来」に書かれたドラッカーの考え方,示唆を事業戦略の構築の参考にした。事業の品質工学的モデルでは入力M1は資金コスト,入力M2は保険コスト,入力M3は持続成長コストの3つで,出力は顧客価値,誤差因子は価格の下落等経済変動・社会変動とした。事業のロバストネスを評価する特性としてM3=βM1と考え,まず事業規模を成長させるため事業の選択と集中によりM3の最適化を図る。

《意見・質疑等》

(1)電池問題について,品質工学で防げると考えているか,製造工程の異常であり防げないと思うという意見と,設計・開発の問題で,技術開発が未熟な状態であると思う。機能性評価が十分に行われていない。品質工学では寿命があることは認めているが,認めたうえで限界を見極めるのは機能性評価しかないと考えている意見があった。

(2)経営にいかに品質工学を当てはめるか,経営者が品質工学を理解しているとは思えない,当たり前のことを当たり前にやることが大事,人・もの・金を入れて顧客満足を得る効率を良くして利益があがればよい。

(3)田口玄一氏はインプットではなくアウトプットを見なさいといわれている,アウトプットの有効成分と無効成分を見るべきでないか。

(4)品質工学を取り入れてよくなったことを経営者に納得させるにはどうすればよいかに

ついて,いかにわかりやすい言葉で説明できるかだと思う。

2.事例発表

(1)「MTシステムへの2つの提案」(村田機械 鐡見太郎):MTシステムの簡単な紹介の後,

 ①「マハラノビス距離を用いた調整」では単位空間を構成する項目の中に調整可能な項目がある場合を考える。あるサンプルで調整項目以外の項目のデータを固定した状態でマハラノビス距離が最小になるように調整項目の値を決めると,このサンプルの状態は最も正常らしい状態に調整されることが期待できる。紡績機械のドラフトゲージの調整に用いた実施例が紹介された。マハラノビス距離を用いた調整は「陰極線管の製造方法」において鶴田らが行っている。

 ②「T法において相関を考慮する方法」では,パターン認識において,主効果によって認識できるパターンは存在するが,一方で相関を考慮しなければ検出できない,または検出し難いパターンも存在する。しかし,単位空間が中央で項目間の相関を重視した手法は存在しないので,項目間の相関を考慮する方法を提案する。

提案①は2つの項目間で回帰式を求め,斜交による投影で,項目数を増やしていくことで相関を考慮することになる。単位空間のデータ数が1個またはデータ数が少ない場合は回帰式が求まらない,または,信頼性に欠けるので,予測・診断の精度が悪くなる可能性がある。単位空間データと信号区間データを用い,2つの項目と真値からなる座標系において,単位空間データおよび信号区間データからの距離の偏差二乗和が最小になる偏回帰平面を考え,この偏回帰平面と単位空間の平均値平面との交線を回帰式の代用とする。この方法で「布の風合い」(官能検査データを真値とし,糸物性を項目とした)事例に適用するとT法で総合SN比が1.7dB良くなった。今回,汎用的・具体的方法論の提案ができた。品質工学会は学術団体であり,事例研究以外にも方法論の提案や議論があってもよい。今まで,このような方法論の提案は田口氏1人に頼ってきた。

《意見・質疑等》

 a)調整の方で推定値がありえない値(寸法が負になる)になる場合がありそうなので制限領域付の推定を行う方法にした方がよい。

 b)T法で相関を考慮した場合,相関を考慮した効果か,項目数が増えた効果かどちらかわからない。また,学会としても新しい手法に対する評価方法の統一見解が必要だ。項目毎のηで,元の項目のηより追加した項目のηが大きいものがあれば,相関を考慮した効果といえるのではないか。

 c)MT法では偏相関を考慮(擬似相関を排除)するために逆行列を使っている。T法では逆行列が使えない場合であり,どんな項目を追加しても擬似相関は排除されないので,MT法と同等とは思えない。

(2)「金属材料評価の研究I~III」(いすゞ自動車 衛藤洋仁):金属材料の評価方法として何が最適かを検討した。日頃の研究で抱いた疑問,問題は,①金属材料に疲労劣化の誤差因子を与えても,顕著な差が表れない。②強い疲労劣化を与えると,折れる,折れないのON-OFF評価となる場合が多い。③信号範囲の大きさにより評価が変わる。④ゼロ点比例と標準SN比の誤差因子の考え方は同じでよいのか。過去の事例で確認しても疲労劣化を誤差因子として与えてみているが,ゼロ点比例式・標準SN比共に疲労の有無で顕著な差が見られない。疲労劣化に対する強さは疲労強度であり,疲労強度は降伏強度に応じて変化するので,降伏強度に注目すればよい。荷重と変形の関係は降伏強度までは一直線で上がり,降伏後は水平でどこまでも伸びる線図が理想である。球状黒鉛鋳鉄の高強度高延性化,アルミ鍛造部品のエネルギー吸収特性に荷重と変形の関係での評価が可能であることを実証した。試験片破断の取り扱い(重み)を軽減すると再現性がよくなった。

《意見・質疑等》a)劣化の代わりに化学反応のようなものを誤差因子としてはどうか。b)材料の使い方によっていろいろな試験方法があるが,引張試験だけでよいのか。c)疲労劣化を入れない最適条件で劣化についても強い材料になっているのか。これに対して,球状黒鉛鋳鉄の例で疲労強度が上っていることも確認している。

(3)「アルミドラム外観検査装置の最適化」(古河電工 加藤巧二):コピー機,プリンタ用のアルミドラムの外観検査機を導入しているが,しきい値の数が多く(24ある)バランスを取るのが難しく,導入時に調整と評価の繰り返しが必要で手間がかかっていた。検査機は照明,カメラ,画像処理装置,パソコンで構成され,撮影画像を画像処理装置で2値化され,輝度しきい値,欠陥サイズしきい値の組み合わせでOK,保留,NGと判定する。L18直交表にしきい値を割り付け,品質保証部のエキスパートによる目視判定を基準に検査機の自動判定結果をデジタルのSN比で評価することにした。保留とNGをNGとした場合と保留をOKとした場合を検討した結果,保留をOKとした場合は再現性が悪かった。2因子について水準を外挿してSN比の改善があるか確認したところ,約4dB改善できることが判明した。

《意見・質疑等》a)ドラムの良品の定義は何か。それは傷の大きさという品質特性か。傷の種類や位置によって機能に与える影響が異なるのでは。→しきい値が24項目ある,中には次工程で消えてしまうものもある。b)今回のテーマのような場合には通常MT法を使うが,パラメータ設計とした理由は?→既存の設備で新たにシステムを作るわけではないのでMT法は使わなかった。c)デジタルのSN比を使っているが,判別に影響する誤差因子を考えた方がよい。→画像・カメラによりばらつきが出るので誤差因子としたかったができていない。→アルミドラムを利用する立場としては誤判定はあってほしくないきずの大きさ,レベル,タイプが信号にならないか。何を誤って判定したかを分析してはどうか。d)今回の解析法では不良品が多くいるのではないか。MT法であれば良品の解析をすることになるので効率的ではないか。e)データを2値化しているので情報損失が大きい。画像の波形データから項目を多数作ったほうが判別精度が上がる。

(4)「低速ポリゴンモータの回転ムラ改善」(鈴鹿富士ゼロックス 須賀谷伸晃):現行2000rpm前後のポリゴンモータより低速回転である1000rpmの要求があり,低速になる程回転精度は悪化するが,コスト要求からシステム変更は不可とされ,システム変更をさせずに回転精度を得るためは制御回路(PLL)の最適化が必要となった。PLL(Phase Locked Loop)制御は位相同期回路で基準信号と回転数信号の位相を一致させる制御で回路定数により伝達特性が決まる。回転ムラには部品精度のばらつきによる周期的な回転速度変動の定常回転ムラと大きな外乱による突発的な回転速度変動の突発回転ムラがある。突発回転ムラについては観測型の測定で観測中には発生しなくても,使用時に発生しない保証はなく,いつ起こるかわからない状態であった。そこで品質工学による実験を計画することにし,制御の伝達特性が回路部品でなくゲインカーブによることであることに注目してゲインカーブの形を項目とすることにした。突発回転ムラの場合は同じレベルのノイズを意図的に入力して元に復帰する回復力を評価することとした。定常回転ムラは回転速度のMAX-MINを取り,望小特性で解析した。実験結果では定常・突発回転ムラともに再現性が悪かった。事例発表後,実際にモータ開発の機会があり,今回の考え方を取り入れた結果,品質工学の考え方が有効であることを確認し,開発工数も50%減となった。

《意見・質疑等》a)何を測ったのか。→回転速度のMAX-MINで望小特性とした。b)目標回転数があるから望目特性でないのか。→想定した範囲の書く回転数でムラがないことを目指した。c)制御乖離はごまかしをやっているのではないか。モータの機能性と制御回路の機能性は分けて考えるべき。d)お客様は回転数がほしいのではないか。→要求回転数には合っている。→モータON時の立ち上がり特性を見てはどうか。e)モータを買ってきて制御回路で合わせこみをやる方法ではダメ。→モータの設計は自社でやってる。f)データは回転数を採るべき。回転速度でもよい。モータに負荷変動を与え,負荷があっても回転数一定がよい。伝達特性に注目したことはよい。ゲインカーブの変化を制御因子としたのは良いと思うが,回路部品の組合せでカーブを変化させることになると思う。どう組合せて水準とするカーブに合わせたのか。→各部品がゲインカーブにどう影響するかは事前に確認している。機能が破綻しない組合せであればよいと考えた。g)ゲインカーブの安定性を研究する必要があるのではないか。→ゲインカーブがばらつきを持っても回転数が一定。h)誤差因子の検討が不十分。MAX-MINでなく,モータの負荷変動を誤差因子にとってはどうか

まとめと講評(関西品質工学研究会 原和彦顧問):経営にQEをどう活用するかという三石明生氏の話は一般には聞くことができない内容で貴重な講演であった。マツダに代表されるQEを経営に活用という場合は個々の問題に活用しているので事例研究で,点にしかなっていない。点→線→面にすることが課題である。日本の社会は政府を含めて戦略的でない。QEを手段(戦術)としてしか使っていない。あたり前のことが日本では通用しない。日本の企業はものづくりはやってい

ても,人づくりができていない。電池問題をはじめ,ものはどんどん進化しているが,評価技術が進化していない。安全設計・保全設計が弱い。社会的損失を考えていない。

関西品質工学研究会芝野広志会長の閉会の挨拶の後,パル法円坂に場所を移し,懇親会を開催した。多数の参加があり,引き続き活発な意見交換があった。

(オフィスワイ・エス 清水 豊 記)

 

2007年9月1日(土)に第160回研究会を,日本規格協会関西支部で開催した。出席者は35名。特別講演者として,松坂ティーエムコンサルタンツ(株) 松阪昌司社長を迎え,特別講演とテーマ検討会を実施した。

1.講演「研究事例から掴む,品質工学の要点」 (松阪ティーエムコンサルタンツ 松阪昌司):講演者の松阪昌司氏はコニカミノルタで品質工学を推進されていた方で,現在は品質工学のコンサルティングをされている。今回の講演は,コニカミノルタで推進された4事例について紹介された。  事例1は,「動的機能窓法による写真システムの評価」で,化学反応を動的機能窓法で評価した最初の事例である。何を評価するかを十分考えれば,良い評価方法が見つかり,良い評価方法が見つかれば,アイデアがいっぱい出てきて,大きな改善ができた事例であった。

 事例2は,「撮りっきりカメラシャッター機構安定性のタグチメソッドに設計」で,標準SN比を用いた最初の事例である。標準条件での出力を信号として解析し,制御因子の水準値を誤差としてシミュレーション実験を行った。本実験は品質工学が全く初めての人が行ったが,この実験後,品質工学信者になったそうである。品質工学は成功体験することが大切だと認識できる事例であった。

 事例3は,「シミュレーションによる晶析反応システム設計」で,化学反応にシミュレーションを用いた最初の事例である。本来,化学反応はダイナミック(過渡応答)であるが,ポテンシャルエネルギーに着目し平衡状態で解析を行った。これは,過渡応答に相関が大きい平衡状態を評価することで,実験が非常に簡単となる。また,シミュレーションで危惧される現物実験での確認は,固有技術で達成できる目処があることも大切である。

 事例4は,「6社共同による写真用ゼラチン新試験法の開発と制定」で,写真用ゼラチン試験法としてゼラチン中の還元性分量に比例する反応だけ起こす条件を考え,還元された銀コロイド量に比例する吸光度を評価した。6社分担実験でパラメータ設計を行い,共通の新規試験方法が制

定できた。

2.「新SN比のリレー検討」:SN比の式において,20世紀型,21世紀型,当研究会で提案された新SN比(η=10log(Sβ/SN))に関して,リレー形式で太田勝之(シマノ),鐡見太郎(村田機械),清水豊(オフィースワイ・エス)の各氏から説明があり,新SN比に関する討議を行った。

3.テーマ検討会「プリンタ用トナーの後処理条件最適化検討」(村田機械(株) 荘所義弘):トナーの後処理開発において,現在の検討システムの限界があるかどうか判断する実験を行った。4種類の処理剤を制御因子とし添加部数を水準としてL9直交表に割付,画像品質項目を評価した。実験結果は,最適条件においても目標値に到達しないことが判明した。この実験結果から,本システムには解がないと判断し,別システムの検討を行うこととした。アドバイスとしては,計画段階で4つの制御因子しかないのが一番の問題で,最初に制御因子を沢山出し切る程,十分考えることが必要。また,大きな直交表を使って実験が長くなる場合,途中で解析して方向性を判断するのも効率良くできる裏技である。

4.松坂昌司氏への質問コーナー

質問:標準SN比から入出力はエネルギー変換でなくても良いか?

回答:実践する上で,基本機能が判り難い場合がある。そういう場合,目的機能を標準SN比で評価するのが良く,失敗も少ない。

(村田機械(株) 荘所義弘 記)

 

2007年8月3日(金)に第159回研究会を開催した。出席者は38名。

1.「光ファイバケーブルの設計評価方法の検討」(タツタ電線 浦下清貴):光ファイバケーブルの製品化検討では,設計と製造条件確立を同時に行い,品質特性により評価しているが,試作前に光ファイバケーブルの設計評価を行う際の評価方法に関して議論がなされた。製造の際の誤差も含め,いろいろな誤差に対してロバストになるように設計する必要があるなどの意見が出た。

2.「現象解明は技術者の仕事か?」(村田機械 鐡見太郎):科学と技術の違いを明確にすることの重要性を感じている。現象解明を主業務にしては困る,技術者として早く物を作るためにCAEを使うべきと考えている。科学の知識を利用して技術に生かすべきであるが,現象をすべて解明してから技術に生かすのでは時間が掛かりすぎる。この考え方を理解してもらうようにするには,どのようにすればよいかについて議論がなされた。

3.「スキャナーピッチブレ最小化への設計条件最適化」(シャープ 林勇治):高速複写機のスキャナーにおけるピッチブレを最小限に抑えたい。原稿の全2点間距離を入力に,読み取り寸法を出力にしてゼロ点比例式にて評価した。スキャン速度により,利得の再現性に差が出た。スキャン速度を制御因子として取り扱ったが,標示因子として扱うべき等の意見が出た。また,スキャン速度に対して,標準SN比で評価する方法もあるとの意見も出た。

4.「削り出し加工に於ける最適切削条件の検討」(三菱重工 友光秀一):切削加工は,テストピースを用い,電力量と切削時間,電力量と切削除去量の2つの基本機能にて動特性で評価しており,これにより,加工効率を改善できたが,実際の加工で工具の欠損が発生し次善の条件で加工を行っている。切り込み量に対する電力量を標準SN比で評価すると,次善の条件で行った条件がロバストな条件となった。機械加工評価に関して,さまざまな議論がなされた。

5.「SQCとエンジアリング-設計パラメータ最適化の技術動向と今日的課題-」(デンソーテクニカルレビュー吉野睦氏の論文)」(GS-YUASA 出水清治):最適化手法に関して,応答曲面を用いた最適化ソフトが進歩し,設計者が数値シミュレーション,CAEを用いている状況について,統計的品質管理(SQC)の研究者の視点での論評について,議論を行った。品質工学について誤った理解の記述があるので,品質工学を分かりやすく理解してもらうために,情報を発信する必要がある等の意見が出た。

(三菱重工 高濱正幸 記)

2007年7月7日(土)に第158回研究会を日本規格協会関西支部で開催した。

出席者は39名。特別講演者として田口伸ASI社長を迎え,特別講演とテーマ検討会を実施した。

1.特別講演 「品質工学とDFSS」(ASI 田口伸):講演者の田口伸氏は田口玄一氏の子息で,アメリカや韓国の自動車産業を中心に,さまざまな企業へのコンサルタントとして広く活躍されている。今回の講演では,米国で成功した研究事例の紹介とDFSS(Design for Six Sigma)導入に対する考え方,さらに,品質工学が生まれ,今日に至るまで発展してきた歴史も説明された。最後に,質疑で締めくくったが,実に盛りだくさんの内容で,要点は次の通りであった。

・森永キャラメルの改善研究からすでに,エネルギーやロバストといった考え方が見て取れる。

・電気通信研究所での仕事は設計しかないので,自然とロバスト設計が必要になった。

・ベル研究所での仕事は2段階設計を活用しているが,当時はその重要性の認識が低かった。

・米国でも,50%の企業が火消し仕事に取り組み,専門部隊を抱え,火消しのうまい人が評価される。

・米国では,今でも統計の専門家が企業内で活躍している。

・ロバストのアセスメント(評価)をきちんと行えば,ヴァリデーション(確認)は一回でパスできるはずである。

・品質工学導入の目的は,あくまで未然防止を目的にするべきである。

・ロバストを中心とした,技術開発に取り組める体制を作る必要がある。

2.テーマ検討会

(1)「T法における単位空間の均一性」(オフィースワイエス 清水豊):T法を用いて自動車燃費の推定を行ったが,単位空間データとして平均値を用いた場合でも,平均値付近のいくつかのデータを用いた場合でも,推定精度に変化は見られなかった。T法では,単位空間の均一性は必要ないのか。また類似事例として日本全国各地の年間降水量の予測,各国の食料自給率,二酸化炭素の排出量の事例などが示された。議論のポイントは,次の通りであった。

・T法では,単位空間の役割が平均値による基準化だけなので,どこにしてもたいして変わらないのかも知れない。平均値がゼロ(原点)ならなんでもよいということで,すべてゼロのデータ1個で単位空間としてもよいことになる。

・今回のデータが,非常に精度よく推定できているので,真値と推定値が原点を通る直線に並んでいることになる。それで,このような現象が起こっているのではないか。つまり,原点を通る直線上であればどこでも良いかもしれないが,直線から外れると,推定精度(SN比)は落ちると思う。

・年間降水量の予測や食料自給率の事例については,年度ごとによる差よりも場所(データの属性)による差のほうが大きいため,ゼロ点比例のSN比で評価した場合,必然的にSN比がよくなってしまう。場所ごとに未来の降水量や自給率が予測できたかどうかを見た上で,単位空間の是非を検討する必要がある。

(2)「金属巻尺の機能性評価」(村田機械(株) 荘所義弘):巻尺の機能としては,①引き出す,②巻き戻す,③測定するの3つがある。①,②の機能を物理量で表現すると,長さが変化しても力量が変化しないことといえるので,さまざまなノイズを入れて,力量を測定するような実験を検討している。これに対して,下記の意見が出た。

・商品として機能は明確であり,精度よく“長さ”が測れることである。したがって,さまざまな誤差を入れて,測定長さを評価特性とすべきである。

・測定長さの評価では十分とはいえず,復元力の評価も必要である。たとえば,引き出しや巻き戻しの際に,ものすごい力が必要な巻尺は使えない。また,巻き戻しの速度が早すぎると,指などを損傷する恐れもあり,危険である。したがって,これらの性能も重要な商品と考えるべき。さらに,長さの測定では,今の構成でも十分なSN比が維持できていると考える。

・復元力の評価であれば,単純な構成なのでシミュレーションで計算できるのではないか。シミュレーションとして,逆巻きのパターンがやりにくいのであれば無理にする必要はなく,正規の巻き方でのシミュレーションで,ロバスト性を確認すべき。ロバスト性の評価なら,通常の巻き方と違ってもできる可能性が高い。

(3)「流動性分布測定器の測定条件最適化」(村田機械(株) 荘所義弘):パーツフィーダの原理を利用して,振動で粉を送る装置を製作し,粉の移動時間の推移から流動性を測定している。現状の装置構成では,測定精度に限界があり,精度を向上させるために振動エネルギーの安定化を図りたい。これに対して,次の意見が出た。

・時間の測定で,移動性(流動性)が評価できていると考えるのか。どのようなプロファイルの違いが流動性の差を表しているのかが不明で,まず真値の定義が必要。

・2種類の粉の混合物を中間の水準としているが,プロファイルや流動性も中間の値となるのか。二山に分かれたような特性にならないか。これに対しては中間の特性になると考えているとのことであった。

・もっと,誤差因子を積極的に活用すればよい。

・「Pughの方法」をやってみれば,もっと良いアイデア(粒子の移動性に関する)が出てくるかも知れない。

3.テーマ紹介「田口家のオムレツの作り方―TM活用例―」(ASI 田口伸):田口家での研究事例として,オムレツの作り方に対して品質工学を適用し,家族で実験することで品質工学の考え方を理解させた。身近なものから品質工学を知ってもらうには良い事例と考え,紹介された。ポイントは,次の通りである。

・評価は家族全員で行い,項目としては①美味しさと,②硬さの二つを実施した。

・美味しさの評価では,評価者の違いが歴然として出てくるので,再現性が悪い。

・硬さの評価は,個人差が出てこないので再現性も良く,結果的に官能評価の難しさがわかる。最後に,田口伸氏より現代自動車での品質工学導入について紹介があった。90年代初頭の米国進出の失敗から品質経営に乗り出し,DFSSの導入とともに,部長クラス全員に研修を受けさせ,自らの事例を実施させたことが大変大きな成果を生んでいる。トップの本気が企業での導入成功のためには必要である。

(コニカミノルタ 芝野広志 記)

 

2007年6月1日(金),2日(土)にコニカミノルタびわこ保養所で,第157回研究会(宿泊)を開催した。出席者は32名で,テーマ検討会と新入会員向け講習会を並行して実施した。

1.「釣竿塗装条件の最適化」((株)シマノ 川下剛生):釣竿表面の塗装プロセスを短時間化するために,熱硬化からUV硬化塗装への変更を検討した。UV塗装の機能として密着強度と理論強度(∝面積)の動特性をとった。効果があったのは硬化剤の種類が主で,時間に対してはほとんど変化がなかったので最短時間とした。誤差因子は70°C水没と耐候性をとった。「実験はこれでよかったのか」の質問があった。これに対して,①剥離強度は最終の破断強度であり,剥がれ残りもあるので再現性が悪くなる。②誤差因子として耐ガス性(梱包材からの硫黄化物)や繰り返し応力(釣竿のしなり)を取るほうがよい。③繰り返し応力は1次固有値で同調加振すれば短時間に負荷を与えることができる。先端に錘をつけるとさらに厳しい評価になる。④短時間化が目的のときは,制御因子で時間を振らず,必要な最短時間のもとで他の制御因子を最適化する方法もあるなどの議論を行った。

2.「消音器のパラメータ設計」(ヤンマー(株) 清水明彦):自動車の排気音などの吸音機能をシミュレーションで設計した。吸音機の寸法を制御因子にして,前回アドバイスを受けた水準ずらしを実施してL18に割り付けた。誤差因子は寸法のばらつきとして外側L12に割り付けた。吸音特性は周波数特性があるので,吸音量を周波数軸での積分値をとり,望目特性のSN比で評価した。SN比の再現性はまずまず(1~2db前後)であったが,感度が全く再現しない。これに対して,①周波数特性があるものを積分してはまずい。ターゲットとするいくつかの周波数ごとに解析するか,周波数特性そのものを標準SN比で評価してはどうか。目標とする理想カーブへのチューニングは後の問題である。②シミュレーションでは感度は合わないものである。まずシミュレーションでロバスト性を改善して実物でチューニングする。③L18×L12の中によい条件があったとしても,そのような局所最適条件は実物では再現しないので注意した方がよい。④消音器に挿入する管の長さも消音器の長さに対して比で与えた方がよい。⑤消音は音のエネルギーと熱エネルギーの変換が本質だが,微量で測れない,などの議論を行った。

3.「マイクロスイッチの評価」(村田機械(株) 鐡見太郎):糸巻装置のON/OFFを行うためのマイクロスイッチのローコスト品への切り替える際の品質評価を行いたい。従来は部品寸法規格,接触抵抗,耐水圧,耐久試験(20万回)などの品質特性を評価していた。特に耐久試験に時間がかかる上,評価精度も悪く判断が下せない。評価する機能として以下の候補を考えている。①ON/OFFの誤り率を使ったデジタルのSN比,②ONとOFFが切り替わるポイント(接点位置)の望目特性,③SW動作の荷重-変位特性の標準SN比。ノイズとして振動,埃,温度,湿度などを考えている。これに対して,評価範囲について以下の相反する意見が出て活発な討論となった。①スイッチ単体の評価ではなく,メカの目的機能の評価が必要ではないか。②メカの設計はそのままでスイッチの置き換えの問題なので,購入品のよしあしを評価するべきである。システム全体を改善する設計問題の場合と,品質保証などが行う購入部品の評価で議論を分けるべきである。今回は後者で,部品の機能性評価で,最終製品での確認も実施すればよい,との結論に至った。

また,別室にて,新入会員向けの講座が次のテーマ(講師)について行われた。①「品質工学の歩み」(三菱重工業 高濱正幸),②「基本機能」(村田機械 荘所義弘),③「SN比」(コニカミノルタ 平野雅康),④「許容差設計」(シマノ 太田勝之),⑤「オンライン品質工学」(コニカミノルタ 芝野広志),⑥「MTシステム」(オフィス ワイ・エス 清水豊)。

(三菱電機 鶴田明三 記)

 

2007年5月12日(金)に第156回研究会を開催した。出席者は42名で,研究発表大会での発表予定事例を含めた事例が検討された。

1.「化学反応の機能性評価の事例」(顧問 原和彦):反応速度比法を用いた動的機能窓法の評価である。L9を使った事例で,実験No.毎に反応速度が大きく異なっている。実験結果には再現性があった。デジタルの標準SN比や収率の望小特性でも結果は同じであったが,L9は特定列に交互作用が出るので同じ実験データをL18で解析したら再現性が悪くなった。これは交互作用の影響であり,L9を使わない方がよいとの意見であった。

2.「T法において相関を考慮する方法」(村田機械 鐡見太郎):大会で発表予定の事例であり,T法において項目間の相関を考慮するため,項目間の相関データを項目に加える方法を提案している。単位空間のデータ数が項目数より少ない場合に使う方法としても提案できる。

3.「両側T法による全国各地の年間降水量予測」(オフィス ワイ・エス 清水豊):全国の降水量のデータから,各地の年間降水量を予測した。70~79年の各月の累積データから80年を予測したが,予測精度はそれほど高くない。降水量以外のデータも必要ではないかとの意見があった。

(コニカミノルタ 平野雅康 記)

 

2007年3月3日(土)に第154回研究会を開催した。出席者は37名であった。

1.「ダイカストの流動解析による金型構造の最適解」(シマノ 井上徹夫):釣具のリール用のギアのダイカスト金型最適化をシミュレーションを用いて検討した事例。成形後の状態がばらつくと,リールによる巻取り時の感触が悪くなり,顧客満足が得られない。機能はギア歯先のダイカスト温度の安定性とし,ゲート数,オーバーフローなど金型設計の設計定数について検討した。これに対して,時間軸に対する温度変化などを解析してはどうかなどの意見があった。

2.「鉄粉焼結材料の開発」(神戸製鋼 赤澤浩一):焼結材料の評価評価に関する検討。一般に焼結材料は溶製材より機械特性,切削性ともに劣るので,溶製材のSS曲線を標準条件として標準SN比で解析することなどを考えている。これに対して,目標値はチューニングの問題である,目標値は顧客によって変わるので,ノイズに対する安定性を評価すべきで,さまざまな目標値に対してどのようにすればチューニングできるかについての技術情報を蓄積できるようにすればよいなどの意見があった。

3.「MTシステムによる香り強度検討」(小林製薬 古家 始):消臭剤,芳香剤など香りを使った製品の評価時間短縮を狙って,MTシステムによる香り強度の予測について検討した事例。T法を用い,真値は評価者(社内モニタ)が感じた香り強さ(5段階官能評価),項目は評価者に関する項目(住環境,年齢など)とした。これに対して,何を予測したいのか目的をはっきりさせた方がよい,MTシステムの項目はパラメータ設計の制御因子に相当するので,目的に応じて何が項目に

なるかが変わるなどの意見があった。また,カテゴリーデータの扱い方についての意見があった。

4.「ドラム逆転ローラの性能比較」(村田パーツ販売 丹 誠):回転運動を伝えるゴムローラについての事例で,購入品の比較評価を行った。ゴムローラを一定角度回転させたときの目的物の回転数を特性値とし,さまざまなノイズ条件下でデータを採取して望目特性で評価した。これに対して,購入品の比較の場合,さまざまなノイズをとり,目的機能で評価すればよい,基本機能を考えるなら回転エネルギーの伝達,摩擦力は品質特性であって機能ではない。ノイズを直交表に割り付けて複合ノイズにするとよりよいなどの意見があった。

5.「リフロー炉温度プロファイルの最適化」(村田機械 荘所義弘):基盤の表面実装におけるリフロー炉の温度プロファイルに関する事例である。炉や半田メーカの推奨条件ではうまく半田ができないので,現行量産条件は工場が別途調整した半田条件となっている。さらなる改善を求めて炉の設定条件のパラメータ実験を行った。半田が溶融する前後の温度プロファイルの各温度の存在時間を特性値として標準SN比を用いて解析を行っている。ノイズは基板の場所や部品の熱容量差とした。チューニング後の最適条件は,現行量産条件に近かった。これに対して,現行量産条件が最適条件に近いことが確認できたことは成果の一つ,更なる改善のために制御因子をもっと外側に振るなど検討してシリーズものにしてはどうかなどの意見があった。

6.「パイプ補強リブの最適化」(村田機械 荘所義弘):樹脂パイプの断面形状の最適化をシミュレーションを用いて検討した事例である。パイプの長手方向に均等荷重をかけた時の最大たわみを特性値として望目特性で解析した。SN比は再現性が得られず,感度は再現性が得られた。これに対して,最大たわみなどの特性値は加法性がないのでよくない。シミュレーションでは制御因子の微小ばらつきをノイズに入れるべきなどの意見があった。

(村田機械 鐡見太郎 記)

 

2月2日に第153回研究会を実施した。

(1)講演「規格値の決め方」(原和彦顧問):「許容差設計と許容差の決め方」の資料にそって「JISK7109プラスチックの寸法許容差の決め方」および「JISZ8403製品の品質特性─規格値の決め方通則」に規定された内容や考え方について説明され,許容差設計,損失関数,安全設計などに関して活発な議論があった。

(2)ASI論文「FUTURE TRUCK STEERING EFFORT ROBUSTNESS」(竹ヶ鼻俊夫顧問):ASIのロバストエンジニアリングシンポジウムで発表された事例の中から興味を持った本事例について紹介された。その後の質疑応答で,①機能設計を行っているが機能性設計をやるのがベターである。②再発防止ではなく未然防止を行っているのが良い。③客を考えない自分だけの理論になっていないかについて注意が必要である。QCD同時達成は品質工学のみで行っている。④標準SN比で解析しているが2段階設計になってない(フィーリングの場合はSN比だけでなく曲線へのチューニングが重要である。SN比の高い設計が必ずしもユーザの評価を得ていない)。⑤実験計画法的である,などについて議論された。

(3)テーマ検討「ダンボール梱包仕様の機能性評価(2006年第14回品質工学研究発表大会,論文発表42,積水エンジニアリング)」(松下電工 高島由樹):本事例について内容の検討を行った。その上で,①衝撃型外力,②振動型外力,③静的外力の3種類を一度に評価する方法について議論した。梱包材は製品の機能を落さないのが目的なので,製品の機能を評価するのが良い。汎用的な梱包技術開発の場合は,製品機能とは別に保護機能を改善する,誤差をうまく取る必要がある(温度湿度,外力の方向,静的か動的かetc),梱包材の外部と内部の加速度減衰率を評価するのも良い,などについて議論された。

(4)グループディスカッション:4グループに分かれて検討を行ったが,時間の関係で全体討議は行われなかった。

(村田機械 荘所義弘 記)

 

1月13日に総会と原和彦顧問の講演の後,第152回研究会を実施した。

(1)総会:芝野広志会長より,研究会設立から14年目を迎えて会員数がますます増加し,71名となり,活発な活動を続けている。これも会員の皆さんのご協力のおかげと感謝している。今後もギブアンドテイクを基本に,各自がテーマ・話題を持ってきて,活発な活動をお願いする。昨年好評だった新しく会員になった方を対象とした品質工学入門コースは今年も計画しており,会員のためのサービスも充実させていきたいと考えている。個人的には50歳となり,QEを始めて15年,会長5年と区切りの年を迎えたので,田口玄一氏の印象的な話やエピソード,事例などをまとめたものを「お年玉」として配布させてもらった。少しでも参考になれば幸いであるとの挨拶があった。次に,2006年度活動報告・会計報告,2007年度活動計画・予算計画,新幹事が紹介され,承認された。また,3名の顧問を特別会員とすることが提案され,承認された。

(2)原和彦顧問の講演:品質工学会も15周年を迎え,記念事業として品質工学便覧を発行することについて報告された。また,昨年行われた横幹連合総合シンポジウムで早稲田大学の永田靖氏が「統計的方法におけるSN比」をテーマに講演された。ここでは統計の立場からSN比を説明しようとしている。統計では母集団を考え,母集団から取り出した標本からσを推定する。これと同じで,変動係数(σ/μ)の逆数を母SN比とし,標本平均と標本標準偏差から標本SN比を推定するが,ここでの標準偏差σは自然発生的誤差(偶然誤差)しか考えていない。タグチメソッドでの誤差因子は「変動因子」であって,使用条件など人工的(人為的)誤差で偶然誤差よりはるかに大きい誤差(田口氏は誤圧といっている)を考えている。田口氏は昔から「変化率(初期値に対する初期値の変化)」が頭にあり,分布は考えていない。仕事量の成果は入力でなく出力の仕事量で評価することが大切で,仕事のエネルギーは有効成分と無効成分の和で表されるから,(有効成分Sβ)/(無効成分Se)がSN比である。永田靖氏とはメールで意見のやりとりをしたが,永田靖氏はそのあたりのことは理解されていた。統計的方法とタグチメソッドがうまく融合することでより適切な評価や適切なもの作りができるのではないかと考えているようだ。品質工学を正しく理解するためにはガリレオ流の演繹的実験ではなく,ベーコン流の帰納法的実験(機能性評価やパラメータ設計)を重視して,見えないものも評価予測することが大切であることについて講演された。

(3)研究会:グループディスカッションの形で5グループに分かれて実施したが,時間の関係で全体討議は行われなかった。

(4)新年会:研究会終了後,新年会を実施,和気あいあいの中,引き続き活発な議論が行われた。

(ダイハツ 清水 豊 記)

What's New

 

 <入会案内> 

随時入会歓迎しています。事前見学も歓迎。

 

<研究会開催日>

 定例会、リモートWGの開催予定をGoogleカレンダー形式で掲載。取り込みも可能です。→予定

 

<品質工学シンポジウム>

2024年10月4日

 

<セミナー情報>

・品質工学会イベント

・日科技連 

・ITEQ 

・日本規格協会

 など

 

<会員専用ページ>

発表予定を更新しました

毎年1月にパスワード変更

忘れた方は問い合わせください 

 

お問合わせはこちらから