1月14日に総会と第13回研究会を実施した。

当研究会は設立後1年間を経過したので,総会を開催し,幹事から平成6年度の活動報告及び会計報告が行われ,承認された。続いて平成7年度の活動報告,会則の変更及び役員の承認を行い,総会を終了した。総会終了後第13回研究会を実施し,次の事例報告が行われた。

1)「開発プロセスの効率化」(ITEQ井上):アメリカの自動車メーカを中心に取り組んでいるコンカレントエンジニアリングについて紹介された。次に,品質工学だけでは企業になかなか根付かないので,品質工学の周辺部分をサポートする事が重要であることから,ITEQでのコンサルティングに使用している開発7つの道具D7(De-

veloprnemt&Design7tools)について説明された。

2)「フィルムコンデンサの基本機能検査」(松下電工大日方):コンデンサの品質評価はJIS規格に定める試験によって行われるのが通常のやり方である。しかし、1000h程度の試験を必要とし,コンデンサの容量の変化を把握しようとすると7000~8000h程度の試験が必要である。そこで,評価の短縮化を図るために,コンデンサの入出力関係を基本機能と考え,5hのロバストネス評価試験を行った結果が報告された。

この実験について,初期条件の特性値だけで評価を行っているが,それだけで十分か,劣化加速条件の特性値でも評価すべきではないかとの議論が行われた。

3)「複写機スチレンモノマー放出量計測誤差の検討」

(シャープ尾川):複写機のトナーに含まれる樹脂(スチレンァクリル共重合体)の微量の未反応のスチレンモノマーが残留し,定着部で加熱されて空気中に放出され,特臭を発生する。複写機のスチレンモノマー放出量に対する環境問題の影響について欧州を中心とした強い要求が出ている。その環境要求基準をクリァする測定マニュアルを作成するために,スチレンモノマー放出量をガスクロマトグラフ分析によって測定を行って計測誤差を求めるための実験計画について検討を行った。

4)研究会終了後,新年会を実施し,会員相互の親睦を深めた。

 

2月3日に第14回研究会を実施した。

1)品質工学の勉強会(原会長):第12回研究会に引き続き,品質工学のフィロソフィについて,1月に

発生した阪神大震災の建物崩壊の例を交えながら解説された。次回以降の勉強会は,基本機能,許容差

設計,オンライン品質工学にっいて行うことになった。

2)「ダイオード高周波位相変調回路の性能バラツキ低減」(住友電工合田):ダイオード高周波位相変調回路は,高周波の基準位相信号に対してダイオートの反射係数を利用して同相,逆相の信号を出力する回路であり,周囲温度や基準位相信号の周波数がばらついても,基準位相信号の振幅の広い範囲で,変調波信号の同相と逆相で振幅が等しく位相が正確に180度ずれていることが必要である。本事例は,電気特性WG(EQE)で発表され,議論されたものであるが,その時に指摘された解析方法を加えた2つの解析方法の妥当性について再議論された。

3)「プラスチック成形の品質設計システム」(計量研究所田中):計量研究所が品質工学の考え方を総合的に導入して,プラスチック射出成形工程を対象として高品質を実現するために構築した品質設計システム(CAMPS)にっいてビデオ映写も加えてその内容が説明された。

4)「超音波硬度計の校正」(日本軸受検査協会中井):超音波硬度計は,圧子を取り付けた振動棒に

超音波振動を与えて,押し込み深さの変化を共振周波数の変化で検出して硬さ測定を行う小型,軽量の

ポータブル硬度計である。その超音波硬度計の校正方法を,メーカが推奨するスパン校正と1次式校正,

2次式校正を行った場合の試験機の精度を比較した実験を行い,スパン校正では誤差が大きく,1次式校正か2次式校正が必要である結果が報告された。

この実験について,試験機の性能評価という立場からは使用状態の実態を考慮した多くの誤差因子を取

り上げるべきであるとの指摘があった。

(軸受検査協会中井記)

3月3日に田口先生を招聰し,第15回研究会を実施した。

(1)センスアップの最適設計」(シャープ朝田):

ランダムアクセスメモリの増幅回路の最適設計を行うために差動アンプのシュミレーションによる解析を行った事例が報告された。この事例に関連してシュミレーションの場合と望目特性で解析する場合の誤差因子の取り扱いについて議論が行われた。

(2)CDデッキのオーディオ性能を動的機能窓法によって解析した事例が報告された。この事例では信号因子の範囲を小さく取っていることについて議論され,研究の対象とするシステムの範囲は出来るだけ広く取った方がよいとの指摘があった。

(3)「家具の耐震施策の評価」(コクヨ日野):

先の大震災により家具の破損が問題になっており,家具の新耐震対策の必要施策の評価を品質工学の手法

を用いて実験を行うためになにを特性値にとって,信号因子,誤差因子をどう選択したらよいかについて議論が行われた。

(4)田口先生の講演:「最近の電子回路設計」の試みについて講演が行われた。従来の電気回路の研究では正弦を入れて定常状態を入出力することが行われていたが,うまくいかなかった場合が多かった。現在では

複素数として取り扱い,振幅と位相のずれの両方を考慮してSN比を算出する方法を提案している。さ

らに,定常状態の波を測るのではなく,パルスを入れ,入出力の大きさと時間遅れを測る方法が最良であると考えていることにっいて説明された。

 

4月7日に第16回研究会を実施した。

(1)勉強会「機能について」(ITEQ中野):技術開発を行うとき,技術の基本機能を考えるべきであるというのが新しい方法である。そこで,入力と出力の関係から理想機能,目的機能,基本機能をどのように考えていくかという事をいくつかの具体的な製品を示しながら解説された。

(2)「複合材料の均一分散性と結着性の評価技術」(ミノルタ芝野):複写機現像材の均一分散と樹脂との結着性を評価するためのに,混練物の応カーひずみ特性を利用した事例について報告された。この事例では,信号因子を広く取ったためにデータの取れなかったものが多く存在する。データの取れなかったものに0のデータを当てはめて解析しているが,このことの妥当性について議論が行われた。

(3)「研修効果の評価について」(ダイハツ清水):

原価見積研修を実施したときの被研修者のアンケートによる5段階評価を行ったデータから望小特性の

SN比を用いて解析した結果が報告された。

(4)「一石三鳥の品質工学」(ITEQ原):品質工学フォーラ会誌Vol.lNo.4に記載された「一石三鳥の品質工学」の内容について解説された。

(軸受検査協会中井記)

5月13日に第7回研究会を実施した。

(1)機能にっいての勉強会(ITEQ中野):機械の評価方法として,ゼロ点比例式の場合のSN比の算出内容の意味にっいて解説された。

(2)「オレフィン系樹脂の変色加速試験条件の検討」

(朝日ナショナル照明川添):照明器具の構造材であるセード,カバー等に用いられているオレフィン系樹脂が,蛍光ランプからの紫外線によって変色する。この黄変色を色差計を用いて評価するための実験計画にっいて検討した。

(3)「増幅器の安定設計」(ITEQ原):日本規格協会電気特性委員会(EQE)で議論が行われている増幅回路の安定性評価の内容について紹介された。

CR結合回路の例をもとにして,従来から行われてきた正弦波を入力し実効値と位相を複素数で扱うという方法は,実効値に与えるノイズと位相に与えるノイズが異なり良くない。そこで,パルス入力を行い,出力の振幅が半分になるパルス入力幅を特性値としたらどうかという提案がされている事が報告され,このことの妥当性について議論が行われた。

 

 

6月2日に田口先生をお迎えして第18回研究会を実施した。

(1)「シーラー定量塗布の最適条件検討」

(ダイハツ工業吉野,青山):自動車ボデー組立工程で用いられる接着剤・シーリング材は,銅板どうしの接着・シール目的にドア下片等に用いられ,水漏れ防止・防錆をねらったもので,高い信頼性が要求される。

しかし,現状では塗布幅が太くなったり細くなったりする事がある。そこで,安定した塗布が行える条件について検討した結果が報告された。

この事例に対して,制御因子とした塗出ガンの移動速度は制御因子に含めずそれ以外の因子でばらつきの改善を行い,後で移動速度を考えるべき,との指摘や,特性値は塗出幅か塗出量か,について議論が行われた。

(2)「超音波モニタによるワイヤーボンディング性評価」(オムロン山口,三井):ワイヤーボンディング性の評価について,従来は抜き取りの破壊強度検査で行われてきたが,接合部形状の影響から測定値のばらっきが大きい上,接合過程中の変化が不明という課題がある。これらの課題の解決とインラインでの評価を目的として,接合中のツールの受ける抵抗を電気的に測定する非破壊全数検査による評価の可能性について検討した結果が報告された。

この事例に対して,インラインでの全数検査評価法の開発よりは,工程のSN比を上げることが重要であるとの意見が出された。

(3)「バックアップ電源切断検知回路の最適化」(富士通テン西,濱田):セキュリティシステムの一部として使用され,一定時間電源が切断されたとき動作する回路中の電圧検知ICのばらつきが大きいので回路の新規設計を行った結果が報告された。この事例に対して,βが小さくゼロ点比例式に乗っていないので,1次式で解明すべき,との指摘があった。

㈲田口先生による講演「社長のコストを下げる」:1953年のINAX社のトンネル釜でのタイル焼成実験,1994年の三宝化学のもやしの育成条件の検討の例を示しながら,生産性の向上が極めて重要であること,生産性を上げることにより,社長のコストを初めあらゆるコストが下げられること,を力説された。(軸受検査協会中井記)

11月11日に第23回研究会を実施した。

勉強会「品質工学全般の話」(原会長):企業の空洞化を防ぐ品質工学として源流にさかのぼる技術開

発とオンライン品質工学として㈱ユーシン広島のキー加工工程のフィードバック制御の事例について

解説が行われた。

「七三黄銅の圧延実験」(旭工業所,井上):低硬度用硬さ標準片に用いられる七三黄銅の冷間圧延条件

と熱処理条件のパラメータ設計を行った結果が報告された。

この事例では,標示因子の割り付けは内側直交表か外側直交表かにっいて議論が行われた。

「半導体製造におけるパターニング技術への適用(住友電工,合田):半導体の基板上に形成される

回路線幅の微細化と安定化を目的としてマスクパターンからレジストパターンへの転写性,線幅と電

圧の2信号のSN比を用いた実験を行った結果が報告された。

この事例は,日刊工業新聞社主催の「品質工学リレーシンポジウム」に事例として発表される

ことから,事前検討を兼ねて報告されたものである。

 

12月8日に田口先生を招聴し,第24回研究会を実施した。

「大きく粒径の異なる2種以上の流体混合における均一性評価」(ミノルタ,岩崎):現像材に流動性を付与するために流動化剤を現像材粒子表面に均一に付着させることを目的として均一性を評価したい。

過去の評価では,理想的に混合されて現像材粒子の表面に流動化剤粒子が均一に付着すると,現像材の流動性はその流動化剤粒子の量と付着状態に比例して変化するとされ,流動性は粉体を一定の速度で落下させ,ある一定容積の容器にいっぱいになるまで投入し,充填された粉体の重量を測定して,単位体積当たりの重量を計算するゆるみ見掛け比重で評価されてきた。

しかし,ゆるみ見掛け比重では,直線性が崩れるし,粉体流動性が基本機能とは考えにくい。

そのため,この系の入出力関係について議論が行われた。

「ハンダ印刷技術一部品の多様化と狭ピッチ化に対応した印刷性評価について(オムロン平野)

電子部品の小型化,多様化に伴い,SMT(表面実装技術)には,狭ピッチ部品に対応して接合の精密化,大小様々な部品を混載した基板上での接合安定化が要求される。これらの要求をクリアするためには,ハンダ印刷工程の安定化と精密化が求められている。

そのため,メタルマスクの開口幅と印刷されたハンダの幅との関係に着目し,転写性による評価を行った結果が報告された。

この事例について転写性より電気特性で評価すべきとの指摘があった。

「低電流電源(充電気用)の開発」(松下電工,福井)

充電器と電池の一体化充電器で,抵抗,電源電圧のばらつきに対して充電電流を流す充電器を開発するために,動特性による実験を目指したが,ICが破損したため望目特性として実験となった結果が報告された。

この事例にっいて,動特性による実験を行うための方法について議論が行われた。

田口先生の講演:音声のパターン認識にっいて講演してもらう予定であったが,現在進行している研究成果がでてから解説することになり,アメリカでロボットの研究している先生から質問があったロボットの腕の位置決めについて解説が行われた。

(日本軸受検査協会中井記)

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