2009年12月4日(金)に第186回研究会を開催した。出席者は34名であった。

1.テーマ検討1 「オンライン品質工学による最適在庫量の検討」(コニカミノルタ 芝野広志):物流業務への品質工学の適用の事例相談があった。目的は,『在庫量の適正化』と『倉庫作業の効率化』である。『在庫量の適正化』は,計画に対して受注量の変動が大きく,通常は船で輸送しているが受注量が計画を超過した場合は空輸で対応しているが,空輸代金が高いので在庫でも対応することを考えている。在庫は保管経費などの費用がかかるため,総費用が最小になるような在庫量を決めたいので,オンライン品質工学の考えかたを適用しようと考えている。『倉庫作業の効率化』は,倉庫での入出庫作業時間を分析して,作業の時間短縮や効率的工数配置につなげるため,日々の入出庫記録のデーターからT法で作業時間を予測しようと考えている。これに対し,倉庫作業の効率化では,作業時間以外のデーター(例えば,人や曜日など)を使うべきであるなどのアドバイスがあった。

2.テーマ検討2 「項目選択に使う直交表の検討」(積水エンジニアリング 佐藤聡):MTシステムの項目選択や項目診断に使う直交表について調べた事例報告があった。4の素数倍の直交表は交互作用が分散しているので良いと言われているが,今回は4の素数倍の直交表とPaley法で作った直交表の交絡を調べた。結果としては,Paley法で作った素数べき乗系直交表(L32,L128)も交互作用は各列にほぼ均等に交絡しており,MTシステムに使うには,Paley法で作った直交表であれば4の素数倍,素数べき乗系のいずれでもよいといえる。但し,Paley法で作った3水準の直交表では交互作用は特定の列に交絡する。項目数が少なくても,L128のような十分大きい直交表を使えば特定の列への交絡が少なくなるので都合がよいなどのコメントがあった。

(コニカミノルタテクノロジーセンター(株) 平野雅康 記)

 

2009年11月7日(土)に第185回研究会を開催した。出席者は37名であった。

1 テーマ検討1 「パッド印刷の安定性の検討」(マクセル精器 近藤真澄):パッドと呼ばれる特殊なゴムを用いた凹版印刷技術について,転写性を基本機能とした事例紹介があった。併せて外観についても望小特性で評価した。利得の再現性,評価方法について議論した。利得の再現性は得られず,原因としてノイズの因子数が少ないこと,印刷の最初の10ショットを捨てている点が指摘された。これについては,予め誤差の影響を調べたり,最初の10ショットを過渡応答として評価することが提案された。また,印刷であれば色の品質(濃淡ばらつき)についても評価すべきとの意見が出された。評価方法については,信号の大きさに留意すべきで,値の差が大きければ,信号の大きいもの,小さいものでそれぞれ計算してもよいとの示唆があった。

2 テーマ検討2 「オンライン品質工学 検査設計の適用」(富士通テン 田畑文夫):工程検査要否の基準として,臨界不良率の求め方について,事例相談があった。「検査コストが市場コストを下回れば,検査不要としてよいか」という疑問があった。これに対して,以下のような意見が出された。不良率の実力レベルを測る検査は常に必要であり,「検査不要」という考えはない。自社からの出荷規格をユーザの受入規格よりも小さくすべきであり,自社工程の規格値は出荷規格よりもさらに小さくするのが普通だ。クレーム処理費用に加えて機会損失をどう見込むかが重要で,会社によって2倍~5倍とさまざまである。

(タツタ電線(株)高木正和 記)

 

2009年10月2日(金)にキャンパスプラザ京都5F第1講義室において「関西地区品質工学シンポジウム」を開催し,一般参加を含め93名が参加した。京都府中小企業技術センター所長 門間洋治氏の挨拶の後,講演と事例発表が行われた。

1 講演「品質工学導入による企業体質の強化」(元品質工学会副会長 小板橋洸夫):品質工学導入の目的は開発のスピードアップであり,現在では品質工学が定着してきており,開発期間の短縮に大きな効果があった。しかし,技術者やマネージャは従来の逐次実験に馴れており,品質工学の導入を訴えても乗ってこない。ともすればメカニズム解明を重視し,科学的思考から抜け出せない。田口玄一はスピードを重要視していた。良いテーマを人より先に,シミュレーションでも3Dと平面がある時は平面の採用を推奨した。基本機能においても完全を求めるより,70点でも時間が掛からない方を選択する。現在の複合機では数百万行にも及ぶソフトが搭載されており,そのバグ取りには天文学的な工数が掛かる。ソフトのバグで発見しにくいものは2因子間で起こるので,2因子の組合せであれば計画的欠番法(松坂昌司考案)で効率化を図ることができる。その他,品質工学導入に当たってのノウハウ,抵抗勢力への対処法などについて講演が行われた。

 《意見・質疑等》(1)部門評価をどのように考えているか。→ 評価できていない。品質工学だけでなく,企業全体で評価を行うということを考えてほしい。(2)アイデアを出す人と実験をやる人の分業はできるか。→分業できる。スピードを優先すると分業の方がよいかもしれない,など活発な意見交換があった。

2 事例発表

(1) 「シミュレーションによるタイミングチェーンシステムの最適化」(椿本チェーン 中野義和):エンジンのクランク軸と2軸のカム軸をタイミングチェーンで繋ぐシステムの開発を行う。タイミングチェーンの基本機能はクランク軸の回転を正確にカム軸に伝達することとし,計測特性として,①軸角度 ②回転速度 ③軸トルクを考えた。解析はシミュレーションで行うこととし,タイミングチェーンシステムのモデルを単純な物理モデルの等価回路とし,解析時間の短縮を行い,総合的な評価方法の確立がねらいで,L18直交表に8因子の制御因子を割り付け,制御因子1個を含む7個の誤差因子を選び,L8直交表で外側にわりつけ,3つの計測特性を測定し,1回の実験で3000個のデータを得た。信号因子も測定値であるので,エネルギ比型SN比でも計算を行った。3つの計測特性での評価結果では,再現性が最も良かった軸トルクを採用し,さらに再現性をよくするため,逐次計算を行ったが,最適条件に至るまでに収束してしまった。

 《意見・質疑等》(a)クランク軸1回転に2周期の速度変動を付加しているが,不要と思える。(b)1回転の評価でよいと思う。立ち上がりの過渡特性をみる方がよい。(c)等価回路の場合,実際に設計する場合の適用をどうするかを考えておく必要がある。(d)ノイズとして,わざわざ別の因子を取り上げた理由は→変化させて見たかった因子があったので,取り上げた。(e)逐次計算の目的は→再現性向上がねらいで,水準幅は1/10,元の方向と逆の方向に移動して収束→逐次計算で,元の水準幅の中にもうひとつ低いピークがあり,このピークで収束したと考えられるが,初めて見た,など活発な意見交換があった。

(2) 「損失関数の統計的性質に着目したパラメータ設計法」(滋賀県立大 奥村 進):従来のパラメータ設計法が抱えている問題点を克服するべく,品質不良によって発生する損失の平均と分散に着目したパラメータ設計法の提案がなされた。目的特性が一つ存在する場合の適用例として,交流回路に対する適用例が示され,従来法と同等の結果が得られたことが報告された。また,目的特性が二つ存在する場合の適用例として,PID制御系のパラメータ設計問題を取り上げ,提案した方法が有効であることが示された。提案した方法は,目的特性が複数個存在する場合にも適用でき,調整因子の有無に関わらず制御因子の最適な水準値が連続量として決定できるという特長がある。

 《意見・質疑等》(a)パラメータ設計となっているがロバストデザインなのかチューニングなのか許容差設計なのか。1つの基本機能で複数の品質特性を同時に改善するのが田口流だが→ロバスト性の方を意識している。(b)複数の機能がある場合は機能毎にサブシステムとして別の制御因子が存在するのが普通であり,部分最適をしても,全体最適になっているとは限らないところに悩みがある。複数の目的特性があって,共通の制御因子で最適化を図るこの方法が使えるとは思えない。奥村流パラメータ設計であればよい。目標からのばらつきに分布はないにもかかわらず,分散を考えている。平均と分散を同時に考えているSN比は望小・望大特性で基本的なSN比ではなく,現在では田口は使わない方がよいと言っている。(c)損失関数を使って損失を最小にすることで,パラメータ設計とチューニングを同時にするというストーリーは間違っていないと思う,など活発な意見交換があった。

(3) 「エネルギ比型SN比の研究」

(a) 「MTシステムにおけるSN比の問題点とエネルギ比型SN比」(三菱電機 鶴田明三):MTシステムに用いられるSN比には問題点がある。①総合推定精度のSN比 η20Cの絶対値で精度を比較できない。信号・データ数が違うと比較があいまい。②TS法,T法(1)(2)における項目毎η。項目毎ηが負の値になる(Sβ<Ve)ので,0とすると,その項目を使用せずに予測を行うことになる。→全項目を研究対象とした方が可能性が広がらないか。 ③T法(3)におけるサンプル毎η,比較対象間の信号・データ数をそろえるのが原則ではないか。 →項目毎の物理量(単位)が違う場合,規準化が必要である。公表事例での検討として,「MTシステムによる地震の予知の可能性の研究」(矢野宏 早川幸弘,標準化と品質管理 Vol.62,No.7,2009,p.27~40)を取り上げた。この論文を読む限りでは,この研究のη20Cによる推定精度の絶対値を論じることは意味がないのではないか。第1種と第2種の地震は信号の大きさ,数が異なり,比較対象間で信号とデータ数を合わせる原則が守られないまま比較が行われているようである。概略の信号の平均値を用いてエネルギ比型SN比に変換し,変化率に換算すると,第1種は25%,第2種は41%でグラフの傾向と一致する。エネルギ比型SN比を用いると,信号・データ数が違う場合でも優劣の比較が可能,総合推定精度を絶対値で判断可能となる。

(b) 「MTシステムにおけるエネルギ比型SN比の効用」(オフィスワイ・エス 清水 豊):従来のT法(1)(両側T法)によると,8つの項目毎ηがすべて0となり,計算が止まってしまった事例について相談があった。そこで,エネルギ比型SN比を採用したT法(1)であれば,全項目がη=0とならないので,解析ができるようになり,直交表による項目選択が可能になった。MTシステムにおいてはエネルギ比型SN比の採用をお勧めすると主張された。

(c) 「意見・質疑等」(三菱電機 鶴田明三,オフィスワイ・エス 清水 豊,シマノ 太田勝之,村田機械 鐡見太郎):(1)タイミングチェーンの事例で軸角度と回転速度のSN比が29dbと-43dbと大きく違うが,実際には同じ位ではないか。軸角度の信号は0~720度,回転速度は3000~6000rpmと100倍近く違うので大きな差となっている。エネルギ比型SN比では変わらない結果となっていないか。→SN比では比較していないが,別の特性ではほぼ同一の結果であった。(2)タイミングチェーンの事例では誤差因子をL8に割り付けているのでカーブが8本あり,8本のカーブで信号が違う。こんな場合はどうするのか。→8本それぞれで線形式を作り,計算すればよい。(3)サンプル数が多くなるとSN比が大きくなるのは当たり前と思うが→サンプル数が多くなって推定精度が上がってもSN比は一定値に収束しない。サンプル数が少なくてもよいと言っているのではなく,サンプル数の影響を受けてしまうことを問題にしている。(4)欠測値がデータベースに存在する場合でもT法(1)は計算できるが,欠測値についての意見を伺いたい。→欠測値の内容によると思う。平均値で代用できるようなものであれば問題はないが,特別な意味で欠測になっている場合はそれなりの対応が必要。→T法(1)で計算ができるのは欠測値を0とみなして計算していると思うので,計算した結果が妥当かどうかはわからないと考えた方がよいなど,活発な意見交換があった。

3 まとめと講評(関西品質工学研究会 顧問 原 和彦):田口玄一の「部門評価制度」から引用して,最近の企業は分業化で視野が狭くなり,与えられた仕事しかしていないため,仕事に喜びを感じていないのではないか。技術者は自分のやった設計について責任を取る覚悟があるか。図面や設計資料に上司のハンコは必要ないことを力説された。

この後,グランヴェルジュ 京都七条倶楽部に場所を移し交流会を開催した。多数の参加があり,引き続き活発な意見交換があった。

(オフィスワイ・エス 清水 豊 記)

 

2009年9月4日(金)に第184回研究会を開催した。出席者は40名。

1 「エネルギー比型SN比の論点の整理とトピックスについて」(三菱電機 鶴田明三):エネルギー比型SN比(ηE)につき,関西品質工学研究会メンバーの理解を深めるための紹介があった。定義・計算方法は,データの二乗和を有効成分と有害成分に分けて比を求める。算出式は,ηE=(Sβ/nr)/(SN/nr)とする。分子分母共にnrで割るのは,データ数と信号の大きさによる総合補正を行っている。特長・利点は,実験データ数の差の影響が少ないことで,データの変化率に対して絶対値化できることである。静特性・動特性・デジタルとアナログの標準SN比の計算方法に一貫性があるなどの説明があり,今後,普及させるためには,機能性評価・パラメータ設計の分野で100事例を目標に積み上げていくことが必要,失敗した実験の救済を目的にしていないことを強調すべき,などの活発な意見交換があった。

2 「弾性を利用した締結部品の最適化設計について」(コニカミノルタセンシング 繁永伸明):測定器の付属部品の接続方法に関して,CAEでパラメータ設計した事例発表があった。基本機能は,外力に対する形状の安定性が必要と考え,入力M:荷重・出力y:変位量および入力M:荷重・出力y:応力と定義し,ノイズは制御因子のばらつきとしてパラメータ設計を行った。変位量の要因効果図から最適条件を求めて変位量と応力の確認実験を行ったところ,変位量はSN比の利得の再現性は良好であったが,応力はSN比の利得の再現性は悪かった。その後,応力集中する箇所を標示因子として解析したところ再現性がよくなったと発表があり,弾性設計の考え方ではなく,塑性設計の考え方でトライした方がよい。まず変位量の安定性を確保し,次に応力が均一になるようにチューニングすればよい,などの意見交換があった。

3 「計画的欠番法の設計への利用について」(コニカミノルタセンシング 舘田典浩):L-18直交表欠番9実験(Aの2水準目を除外)の適用検討した事例報告があった。本テーマを適用するケースは,L18実験において18個の試作ができない場合,また,材料選定するケースで候補が沢山ある場合などで候補を簡単に早く絞り込む場面で使用している。要因効果図に与える非直交性の影響を減らすため,主効果が大きいと思われる因子が他因子の要因効果図へ与える影響分を計算し,その分を他因子の効果から補正する。要因効果図から効果が大きいと見込める因子を絞込み,効果が大きいと思われる因子の影響を除外した要因効果図を作成し,効果の確認を行うなどの報告があった。沢山あるシステムの中から,システム選択する場合には使えるが,交互作用がある場合には使えないので,欠番法を使用する時は注意する必要がある,などの意見交換が行われた。

4 「MTシステムによる人の能力判断について」(コニカミノルタテクノロジーセンタ 芝野広志):社員の能力テスト結果・さまざまなアンケート結果をもとにして,適切な職場へ配置・適切な業務への転換・育成支援などを実施するために,MTシステムの活用を検討しているという報告があった。アンケート結果の場合,ある選択結果に応じて回答先が変わるケースがある。このような場合は回答結果が存在しないので0を代入し解析したがうまく解析できなかったのでよい方法を検討しているとの相談があり,アンケート結果である選択結果に応じて回答先が変わるケースは,①Q1Y→Q11Y→Q12Y,②Q1Y→Q11Y→Q12N,③Q1Nの形でデータ整理するとよい。T法(3)でデータを数字のパターンとして解析する方法も検討の余地はある,などの活発な意見交換が行われた。

5 「エネルギー比型SN比による機能窓法の提案について」(シマノ 太田勝之):エネルギー比型SN比による機能窓法の提案について報告があった。機能窓法は,速度比法・速度差法・望小特性+望大特性のなどの方法が提案されているが,従来のSN比の問題を含んでいると思われるため,エネルギー比型SN比の観点から,(有効エネルギー/有害エネルギー)の式での展開を説明し,事例を積み上げる必要がある,との意見交換があった。

(富士ゼロックス(株) 櫻井英二 記)

 

8月1日(土)に第183回研究会を開催した。出席者は32名であった。

1.テーマ検討 「直交表の計画的欠番法について」(コニカミノルタテクノロジー 芝野広志):S/Wのデバッグにおいて直交表を横に並べたり,行を省略(欠番直交表)したりして,テスト効率を向上させることが行われてきた。これをH/Wの評価にも応用して,①機能性評価時にノイズを欠番直交表に割り付けて製品のできばえ評価に使用することで,多くのノイズを少ない実験回数で評価する。②システム選択時に制御因子を欠番直交表に割り付けて,おおまかな可能性判断に使

用することを提案する。モデルデータでL36(完全),L36-12,L36-9の比較を行ったところ,大きな主効果を見逃すことはなさそうである。→これに対して,「機能の計測特性が適切かどうかなど,再現性を含むパラメータ設計本来の目的で使用するのはまずい,等の忠告もあったが,上流でのおおまかな可能性検討に用いるなど,目的を限定すれば効率化に有効な方法であるとの意見が多かった。

2.グループディスカッション:4グループに分かれて以下のような内容を討議した。1件は全体討議で議論した。

Q1:社内のQE普及をどうすればよいか。→A1-1.教育プログラムに織り込んでもらう。A1-2.勉強会を週1時間新人に実施したことがある。A1-3.ゲリラ的な個別指導を実施している。

Q2:推進目標を出すように言われている。→A2-1.件数,研修回数を目標にして,徐々に金額効果を目標にしてはどうか。

Q3:粉体の入った袋の中の空気(酸素)と不活性ガスを置換するシステムの評価を実施したい。スペックは置換率で,評価としては流体シミュレーションの実施を考えている。→A3-1.袋が不活性ガスの流れによって変形しないように固定した方が安定しそう。A3-2.空気の抜き穴を設けてはどうか。A3-3.流体解析における安定性が,置換率の向上につながるのかどうかの検証が必要である。

Q4:光学機器のレンズアタッチメントの接続機構の評価。爪の弾性変形によって保持する構造になっているため,大きな変形量(反力)でしっかり保持しようとすると,爪周辺の応力集中による割れの問題が出てきてしまう。L18実験で(a)外力-たわみ量(フックの法則)の評価と,(b)たわみ量-最大剪断応力の評価を行ったが,(b)のSN比は再現しなかった。→A4-1.最大のところは条件ごとに位置が変わるのでまずい。まず応力分布が一定の条件を求めてから,目標の応力分布(たとえば均一)にチューニングする。

Q5:0/1データ(テストや適性検査結果)をMTシステムで使えないか。→A5-1.2進数にして解析する。A2-2.波形解析(微分特性,積分特性)を使う。

Q6:介護システム(排便処理)の使い心地の評価をしたいが,病院での評価は大変である。→A6-1.健常者で実験したほうがよい。健常者でよい条件は病人でもよい。

Q7:ポンプメンテナンスにおけるドライアイス洗浄の評価方法について。→A7-1.洗浄の原理から基本機能を考え,何を測ればよいか考える。A7-2.汚れがどの程度洗浄できたか評価する(洗浄の目的機能)。

3.全体討議 「圧入・抵抗溶接の評価方法について」(ヒラタ精機 佐藤真一)

:筒状の材料に棒状の材料を圧入して,接触部分に電流を流して抵抗溶接する接合方法を開発中である。接合強度と材料の形状(歪みの大きさ)の両方が要求される。圧入しろを大きくすると歪みが大きくなり,圧入しろを小さくすると溶接されにくく,強度がでない。→これに対して,①接合の前に,材料側の真円度が必要で,材料の加工技術のパラメータ設計を実施すべき,②溶接では測定できるものはすべて測ったが,破壊強度がもっとも再現性がよかった,などの意見が出

された。

(三菱電機(株) 鶴田明三 記)

 

7月3日(金)にASI田口伸社長を迎えて,第182回研究会を開催した。出席者は合計38名であった。

1.講演『米国(ASI)での品質工学』(ASI社長 田口伸):米国での品質工学の普及状況やASIの教育内容を紹介してもらい,活発な議論を行った。関西品質工学研究会は招聘した講演者にも厳しいとの感想を持たれたようだが,去年よりは研究会の雰囲気に慣れてこられたようで,結構楽しく議論できたのではないだろうか。紹介されたクイズ形式の教育も斬新で,いかにもアメリカ流という内容であった。田口の講演内容の要旨を下記に整理する。

①品質工学推進者にはバリデーションを否定する向きもあるが,実際のモノづくりを考えれば絶対に必要である。バリデーションの時間を十分に作るために品質工学を活用する,開発でのアセスメントを早く確実に実施するための手法が品質工学という考え方である。

②先行技術開発テーマにどれだけ取り組めるか,「ロバスト技術(設計)の棚」を作れるかが,開発期間短縮のポイントである。ロバスト技術の棚を効率的に作る手段が品質工学であり,理想的には開発工数の80%を先行技術開発に使いたい。残り20%が製品開発工数で,そのためには,製品開発の流れ(仕組み),さらには会社の仕組みが変わらなければならず,企業トップの判断と関与(責任)が重要になる。

番外①米国の高校教科書に,Dr.Taguchiが紹介されている。ただし,品質工学を正確に伝えているわけではない。⇒これは凄い事である。ぜひ,その教科書を入手したいものだ。

番外②Dr.Taguchiの祖母は,なんと明治時代に養蚕のコンサルタントをしていた。⇒田口家のルーツを見るとともに,血筋を感じた。

質疑応答:田口への質問

Q1:品質工学の活用,研究は世界的にはどうなのか。

A1:米国では広がりはあるがレベルは低く,望目特性などの静特性での研究が一般的である。韓国では品質工学単体ではなく,DFSSとして取り組んでいるが,中身(テーマ)はほとんど品質工学で,年間600テーマほど実施している企業もある。現代自動車は,DFSSで製品の品質が大きく変わった企業の1つである。ヨーロッパでも取り組まれているがドイツが多い。

Q2:米国(ASI)での品質工学教育,セミナーは何を中心に教えるのか。

A2:10日間コースが基本で,受講料金は一人$9000程度。まず機能を考えさせる。次に望目特性,動特性,望小,望大,標準SN比も教えている。MT法も講義するが,T法はまだである。

2.事例検討『人口増加率の予測』(村田機械 鐵見太郎):〔報告概要〕人口推移の予測は,社会的にも意義のあるテーマと考え,取り組みを始めた(業務としては,将来,会社のマーケット規模予測にも応用したいと考えている)。データはネット上(国連のサイト)から拾える。一般的には人の生存曲線に仮定をおいて予測式を作ったり,指数的な回帰や対数的な回帰などから,増加率の最大値と最小値を予測したりしている。本研究ではT法(1)を使い,QES 2009でも発表したが,さらに検討項目を追加したところ,思わぬ結果が出てきたので議論したい。

〔検討内容〕直交表を使った各項目の重要度と項目ごとのSN比の傾向が一致しない。極端な例では,SN比の最も大きい項目が,直交表による項目選択では最も重要度が低下している。⇒考えにくいことであるが,T法では偶然でSN比が大きくなるのは事実である。したがって,項目ごとのSN比は信用できないので,直交表による項目選択は必ず実施するべきである。

・内戦などによって人口変動が普通の国と異なる国も含めて予測できることはすばらしい結果であるが,一般的に考えれば結果が飛躍しているように思う。日本の人口増減に,アフリカ諸国の人口増減が寄与するとは考えにくい。国ごとに予測するほうが良いのでは?⇒予測式を作るためのデータ(信号データ)に国や年代がさまざまなデータを集めただけで,日本の将来の予測をするときには,日本のデータを項目として予測しようとしている。

・相関を考慮した項目を加えると,QES 2009で発表した段階までの研究では予測精度が向上しているが,データ数を増やした再解析の結果では若干ではあるが予測精度が低下した。原因は不明である。⇒ 真数が負になる項目を除外する従来の方法より,新SN比による計算方法の方が予測精度は良くなる,もしくは同等程度になることから考えて,この現象は現在の知見では理解できない。さらに研究が必要である。

3.懇親会:研究会と同じ会場で田口伸を囲んだ懇親会を開催した。さらに突っ込んだ意見交換をし,来年度も来阪いただけるように願った。

(コニカミノルタ 芝野広志 記)

 

2009年6月5日(金)~6日(土)に第181回研究会を「コニカミノルタ健康保険組合琵琶湖保養所」において合宿研究会として開催し,テーマ検討を行った。出席者は32名であった。

(1)「テーパローラ用カット刃の機能性評価」(ヤマウチ 加藤敦士):ゴム製テーパローラの両端を切断するためのカット刃の機能性評価方法について検討を行った。基本機能としては,原和彦顧問HPのカッタの切れ味評価を参考に,入力を押す力,出力を切込み深さに取り,制御因子として刃先角度や刃の形など,誤差としてはゴム材料の硬度を3水準に設定した。試験方法は,オートグラフに平刃を取り付けて,ストローク(等速)と荷重を測定するもので,刃の角度が変わった位置でストローク-荷重曲線に変曲点が見られたため,標準SN比で評価を行った。ノイズの設定法,評価方法などについて活発な議論が行われた。

(2)「削出加工の評価」(三菱重工 高濱正幸):ポンプ羽根車の削り出し加工について,最適な切削条件を選定して加工能率の改善,品質向上を図ることを目的に,マシニングセンタを用いたテストピースの切削実験を行った。基本機能としては,①加工時間に対する電力量,②除去量に対する電力量を考え,評価は,空転時と切削時の電力の差,制御因子として切削方向など,誤差因子としてワーク剛性,径方向切り込み量,電力の最大最小を設定した。0点比例で解析したところ,利得の再現性は良く,従来条件より切削量で20%向上,消費電力で27%削減,工具寿命は80%向上と大幅に改善した。電力の測定方法や基本機能の考え方などについて議論が行われた。

(3)「利益損失低減に向けて」(村田機械 鐵見太郎):利益損失とは製品やシステムを出荷後に,クレームなどの発生により支払った後出し費用を指す。利益損失低減を図るための連関図分析では未然防止の観点がないことが問題と考えられ,DRの進め方にも問題があった。品質工学支援チームがDRに参加することで原因調査に時間が取られる問題は改善されるが,品質工学が断わられる場合があり,その理由としては,①品質工学以前の状態,②今は問題解決の段階だからQCで十分などが上げられる。周囲と技術の仕事の考え方にギャップがあるため,研究会メンバの単位空間と社員間のギャップを埋める努力が必要であり,理を説くことが重要となる。

(4)「MTシステムにおけるエネルギ比型SN比の運用」(オフィスワイエス 清水豊):日本の食料自給率を予測するため,真値を総合自給率の変化率としてT法(1)で解析した。項目は品目別食料自給率と総就労人口などであり,単位空間は変化率0の年度,信号データは変化率が計算できる年度,未知データは変化率が計算できない年度とした。エネルギー比型と従来の0点比例で総合SN比と相関係数を算出したところ,9年先が予測精度が高くなった。また,項目選択において2n型直交表では項目間の交互作用により判断を誤る可能性があるので,混合型直交表を用いるのが良いことがわかった。

(5)「SN比の合成方法の検討」(三菱電機 鶴田明三):標示因子がある場合の総合SN比を求める際に,小さい2次項を持つ水準の変化率が軽視される問題があり,標示因子水準毎のエネルギー比型SN比の真数の調和平均でSN比を求める方法を提案した。日産およびモータのパラメータ設計の事例で検証したところ,提案した合成方法は従来の合成方法より再現性が高い結果が得られ,その原因として従来の方法では,再現性のよい条件が過小評価されていたことを示した。

(神戸製鋼 原 宣宏 記)

2009年5月16日(土)に第180回研究会を開催し,テーマ検討と関西品質工学研究会設立15周年記念講演会,記念パーティーが行われた。出席者は48名であった。

1 テーマ検討

(1)「UHFタグRW搭載ハンディターミナル読取距離の安定化」(パナソニック 林慎一郎):ICチップとUHF帯電波により通信を行うリーダライタ機能のあるハンディターミナルに関して,目標とする目標読取距離以上で安定した通信が行われるようにしたい。現状のままでも目標読取距離を満足するが,ばらつきをなくし,読取距離も大きくしたい。定まった筺体内でアンテナの利得増大化に関する項目を制御因子にとり,誤差因子は,アンテナ位置,通信出力,タグ位置を距離の大小で調合した。確認実験により,利得はほぼ再現し,目標読取距離以上で安定した通信ができることを確認した。開発期間は約1/2に短縮した。基本機能の考え方,誤差因子の取り方について議論が行われた。

(2)「原因不明問題への品質工学の適用」(パナソニック 中沢弘一):原因がよく分らない品質不良問題を検討した事例の紹介である。1件目は,リモコンの受信不良で持ち帰っても再現しなかったものである。市場では,標準状態ではなく思いもよらないような使われ方をすると考え,誤差因子に角度,結露,ゴミ付着などをとり,感度大,感度小となる条件で調合した。連続200回リモコン信号を送信して受信回数を測定して評価した。感度小の条件に対して受信回数が増加し改善した。2件目は,使用中に電源が切れ,電源をON,OFFすると直ってしまい,再現しなかったものである。電源のON,OFFを繰返し,エラー発生回数で評価した。最適条件ではエラーが発生しなくなった。誤差因子の影響の評価方法について議論が行われた。

(3)「スピニングリールのギアフィーリング数値化」(シマノ 井上徹夫):釣り用リールに用いているギアに関して,歯面形状を修正するとギアフィーリングに影響をおよぼすことは分かっているが,調整する因子が多く,サンプル作製費用も高額である。また,フィーリング評価もベテランの評価者に頼っている。そこで,歯面形状のパラメータ設計を行い,そのサンプルの伝達誤差を測定し,T法によりフィーリングを評価した。まず,歯面修正に関するパラメータを制御因子にとり,フィーリングへの影響度合いが解明できた。次に,噛み合い伝達誤差測定を行い,測定した数値を用いてT法による分析を行って,フィーリングを判定できた。また,項目診断でフィーリングに対する影響の大きい因子を求め,各項目のSN比の全体のSN比に対する比率で項目の影響度を比較した。伝達誤差測定結果のグラフの画像処理は,どの部分がフィーリングに大きく影響しているかは判断可能であるが,フィーリングとの相関は劣り,予測には不向きであった。一連の数値化の手法について議論が行われた。

(4)「切断機のパラメータ設計について」(ヤンマー 清水明彦):材料を切断する際の所要動力を低減して条件を最適化したい。横軸を材料の断面積,縦軸を切断エネルギーとしたゼロ点比例式によって評価し,少ないエネルギーであることを重視して感度の低いものを選んだ。信号には材料の直径を,誤差因子には材質と材料繊維組織の方向をとった。刃の機能,評価方法,誤差因子について議論が行われた。

(5)「シミュレーションによるモータ特性の最適化」(パナソニック 江上典彦):家電用モータの効率評価に関する事例である。磁界シミュレーションによりステータコア,ロータコアの効率化を図って巻線コイルの銅線使用量を削減した。直交実験の前に診断実験として,銅量を削減せずに効率を上がることを確認後,銅量を削減して効率を維持するようにした。予備実験の位置付け,シミュレーションでの誤差の取り方について議論が行われた。

2 「関西品質工学研究会設立15周年記念講演会,記念パーティー」:研究会終了後,記念講演会では,原和彦顧問より,研究会設立の経緯など,品質工学を普及して社会全体の最適を目指すようにとの講演が行われた。また,記念パーティーでは,研究会設立後から15年間に加わった多数の関係者の出席があり,盛大に行われた。

(三菱重工 高濱正幸 記)

 

2009年4月3日(金)に品質工学会長矢野宏を招聘して第179回研究会を開催した。出席者は41名であった。

1.講演 品質工学の歴史化「品質工学の深化を位置付ける」(品質工学会会長 矢野宏):品質工学便覧発刊記念シンポジウムで話した時の資料を使い,品質工学の歴史を日本の近現代史との共通点などで関連付けて講演した。品質工学の理解のために,日本人の国民性,官僚の考え,統計学者の理解など,多くの障害があってそれでもそれを乗り越えながら現在に至っていることや田口玄一が実験計画法から現在の品質工学を築くまでのステップを説明した。講演後の質疑では,品質工学の普及や,新SN比や再現性などについての活発な質問があり,これに対する回答や説明が行われた。

事例1「SN比の合成方法の検討」(三菱電機 鶴田明三):SN比を求めるときに,出力値が小さいとその変化率(ばらつき)が大きいものに比べて軽視される(SN比への影響度が小さい)。標示因子水準間の出力の大きさが異なるのが一般的であり,出力の小さい水準の変化率が総合のSN比を求める過程で軽視される。これに対する対応策として,標示因子水準ごとに求めたエネルギー比型SN比それぞれの真数の調和平均でSN比を求めることを提案された。これにより確認実験の再現性の正しさが向上する可能性がある。具体的な事例で検証して効果を確認した。これに対して,以下の議論が行われた。

・出力値の大きさで変化率が変わることは,そのシステムの機能が悪いということではないのか。→標示因子を設定している以上,これらの水準間で変化率が異なることがあり,紹介した日産のステアリングの事例でもそうなっている。

・検証事例で2つの場合のSN比は同じになることが本当に必要なのか。→高速条件と低速条件でのばらつき(変化率)に対する損失は暗黙のうちに同じはずである。よって市場で高速の場合と低速の場合での総損失を考えた場合,事例の2つの場合のSN比や損失は同じになってほしいと考えた。

また,矢野宏からは,「田口氏がよく言われように,一般論で議論するのではなく,個別のテーマやデータで技術の論理を考えるべきである」とのアドバイスがあった。

事例2 「押込変形試験による材料の熱処理評価」(アサヒ技研 中井功):強度は,外力に対する破壊,変形,事故の起こりにくさと考える。強度は製品の信頼性や安全性などの社会問題につながる重要な特性である。硬さ試験は引張強度と関係のある特性だが,ここでは硬さを押し込みプロセスによって生ずる材料流れに対する抵抗と考え,加工条件により材料流れが変化する状態を求めた。新しい材料が,熱処理によって硬さ(物性)が変化するかどうかを,荷重と押込量のカーブで評価できると考え,信号として「荷重」,測定値は「押込み深さ」,制御因子は「材料の熱処理条件」,標示因子は「測定条件」とした。評価として荷重と押込み深さの直線性をβ1とβ2の要因効果図で効果のある制御因子があるかを見た。これに対して,矢野宏から「硬さは定義が難しい。発表の趣旨がうまく伝わるように資料の修正をして欲しい」との意見があった。

(コニカミノルタテクノロジーセンター(株) 平野雅康 記)

 

2009年3月7日(土)に第178回研究会を開催した。出席者は40名であった。

事例1「現像ローラ製造条件の最適化」(コニカミノルタテクノロジー 西川智晴):コピー機に用いられる現像ローラの製造条件に関する事例相談がなされた。現像ローラはトナーを感光ドラムへ搬送する機能を有する。検討の目的はトナー搬送量を安定化することである。トナー搬送量の測定には工数が掛かるため,できれば現像ローラ単体で良否を判断したい。現像ローラの表面形状がトナー搬送量と関係があると考え,表面粗さのデータを取得した。Rmaxとトナー搬送量に相関があることを確認し,Rmaxを特性値として望目特性で検討を進めたいと考えている。現像ローラの機能および表面形状との関係,表面形状の解析方法を中心とした質疑・討論が行なわれた。

事例2「ステッピングモータの評価」(村田機械 鐡見太郎):紡績機の糸貯留装置を駆動するためのステッピングモータの機能性評価に関する事例発表がなされた。検討の目的は,市販の3種類のモータから糸貯留装置においてロバスト性の高いモータを選定することである。今回の検討ではモータにおけるエネルギー変換に着目し,時間に対する電流のパルス波形の安定性を評価した。ノイズは負荷変動(高速→低速→極低速→低速→高速),回転バランスを崩すための錘の有無とした。今回の検討では高速時のSN比ηHighと低速時のSN比ηLowを別々に求めた後,総合のSN比ηを求めた。検討の結果,現行品Aに対して対策品候補B,対策品候補Cはそれぞれ2.55db,8.31dbの利得を示すことが確認された。対策品として供給したモータCは,その後半年以上トラブル発生していないことを確認している。モータの機能およびSN比の合成方法に関する質疑・討論が行われた。

事例3「SUS窒化処理済み品へのめっき」(コダマ 新井千穂):SUS窒化処理済み品に対するめっき処理の膜密着性評価に関する検討が発表された。めっきの目的は窒化処理を施したSUS製品のすべり性・耐食性・外観向上である。検討の目的はめっき膜密着性の評価方法の検討およびめっき膜密着性の向上である。めっき膜密着性の評価は,短納期で対応する必要があったため,すぐ実施できる方法として,折り曲げした部分のめっきの剥がれ長さを測定する方法を用いた。ノイズはめっき処理時の電界面の裏表とした。制御因子はめっき条件から8因子を選択し,L18直交表に割り付けてパラメータ実験を実施した。18条件のうちのいくつかは窒化膜自体が剥離した様子が伺えた。めっき膜の密着性評価を中心とした質疑・討論が行われた。

事例4「無電解ニッケル-スズ-リン合金(NiSnP)めっきの開発」(コダマ 新井千穂):新規開発予定の無電解NiSnPめっきにおけるめっき条件最適化に関する事例相談がなされた。開発目標は,硫化ガス/フッ素酸に対して現行めっき以上に耐食性が高いめっき膜を開発することである。計測特性は,硫化Na,フッ素酸への浸漬試験における重量変化,外観変化である。めっき工程は多くの工程を有し,かつ多数の薬品の組み合わせが考えられるため,通常の検討方法では実験回数が膨大になることが予想されるとのこと。制御因子が多い場合のパラメータ設計の方法を中心とした質疑・討論が行われ,参加者から多水準作成法や大規模な直交表の作成法,酵素のスクリーニング方法の援用などのアイディアが提示された。

事例5「平方剰余を利用したペイリーの直交表」(オフィス・ワイ・エス 清水豊):平方剰余を利用して大規模な直交表を作成するペイリーの直交表の方法について,L8直交表を例とした紹介がなされた。素数を用いる方法であり,1を足して4の倍数になりかつ2nとならない素数を利用して作成する。紹介された2種類の方法のうち,第一列が+1となる別解の方が利用しやすい。MTシステムでの活用方法として,別解をもとに項目数を含む素数を選択し,素数に対応するペイリーの直交表を作成し,項目選択を行う方法が提案された。作成時の注意点を中心とした質疑・討論が行なわれ,L42を例とした直交表作成のデモが行われた。

(花王(株) 坂本雅基 記)

 

2009年2月7日(土)に第177回研究会を開催し,テーマ検討会とグループ討論会が行われた。テーマ検討会については二つのテーマで活発に議論されたが,議事録記載が不可となり,グループ討論会の内容について報告する。出席者は31名であった。

(1)「恒温槽の性能に関して,ユーザの立場での評価方法」(エスペック 中浜寛和):ユーザが操作に要する時間で評価する方法がある。ユーザフレンドリーという観点では,時間が短いほど操作性がよいことになり,望小特性で評価すればよいとのアドバイスがあった。

(2)「金属の密着判定について」(コダマ 新井千穂):現状,曲げ試験での剥がれを目視判定しているが,もっと良い方法を探している。目視判定のレベルに再現性や客観性が乏しいのであれば,より厳しい条件にしてはどうかという意見が出された。

(3)「透明シートのキズ外観評価について」(日本写真印刷 仁井嘉浩):光学特性評価と判定レベルが対応しないという問題に対して,①光の当て方などの工夫,②本来,光学特性で評価すべき,③MT法による項目診断,などの提案があった。

(4)「チューブのエア漏れに関する機能性評価」(村田機械 鐡見太郎):測定特性を何とするかが重要であり,①圧力を負荷したときのチューブ径の変化を測定してはどうか。②エア漏れは素材の劣化によると考えられるので,引張試験で評価できるのではないか。③ノイズとして長さ方向に数箇所での評価が有効ではないかなどの意見が出された。

(5)「T法での項目診断について」(シマノ 井上徹夫):ηがゼロでも,項目診断により有効となることがあるが,どう考えればよいか相談があった。信号データが少ない場合に起こりやすい現象であり,信号データを増やしてみてはどうか。判別したいならRT法で行うようにしてはどうかなど意見が出された。

(6)「新入社員教育用によい実験教材はないか」(パナソニックエレクトロニックデバイス 林千春):スタタパルトがよいのではないか,入社2~3年目に実施すると効果的であるなどの意見が出された。

(タツタ電線 高木正和 記)

2009年1月17日(土)に総会と第176回研究会を日本規格協会関西支部で実施した。出席者は45名であった。

(1)総会:2008年度活動報告・会計報告,2009年度活動計画・予算計画,会則,新幹事が紹介され,それぞれ承認された。

(2)田口玄一の講演や指導を直接受けたことのない会員が増えていることから,QES 2002において学会10周年記念として講演された「品質保証(信頼性)は品質工学で~機能性評価の活用」のDVD VIDEOが上映された。

(3)講演「関西品質工学研究会新年挨拶」研究会顧問 原和彦:今年は100年に一度と言われるような激動の年となりそうだが,品質工学はますます評価される時代になったと考えている。今回は品質工学の「心」「技」「体」について述べたい。品質工学のツールや問題解決などの「技」の部分にばかり目が行くと,うまくいかないときにすぐにやめてしまう。「心」の問題とは「社会的損失の最小化」であり,新しい仕事を生み出すことによって,個人の自由の総和を拡大することである。また,「体」とは「しくみ・マネジメント」のことであり,これにも問題がある。個人がいくら勉強しても企業にしくみがないと,進まない。効率的な体制をつくること,新しい仕事を作ることはマネジメントの責任である。リストラなど誰にでもできる。経営者の責任逃れである。

品質工学の学び方が重要である。品質工学の内容については本を読めばよい。また勉強は最終的に自分がするもので教えられるものではない。学ぶ上で重要なのが「心技体の一体化」なのである。品質工学をやっても部分で終わっている例が多い。パラメータ設計をして利得が再現しましただけでなく,それで会社やお客や社会はどうなったのか,が重要である。ところで,最近私は田口の「お客がほしいものが信号である」という言葉を考えるようになった。SN比とは真値不明の信号のばらつきの評価であった。よって,風洞設計(ミノルタの例)では,お客のほしい風速を信号にとるべきで,出力には電力や電圧をとって望小機能で評価するのである。カッターナイフの評価でも切り込み量がお客のほしいものでこれを信号にする。出力は切り込む力である。京都でこの話をしたら反論が多かったが,今後関西で議論してはどうか。

これに対して,「“お客がほしいものが信号(入力)”というのは標準SN比における標準条件を入力にとることを言っているのではないか」,「エネルギー比型のSN比では入出力を入れ替えてもデータの変化率が同じであれば同じSN比になる。入出力の入れ替えは本質的な問題でないのでは」などの意見が出た。今後も継続して議論していくこととした。

(4)新年会:研究会終了後,新年会を実施,和気あいあいの中,引き続き活発な議論が行われた。

(三菱電機 鶴田明三 記)

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