2005年12月3日に第140回研究会を開催した。出席者は32名。

(1)勉強会

①「MTシステムにおける項目選択用直交表について」(積水化学 佐藤聡):製造工程の効率改善にMTシステムを使用し,重要管理項目・改善すべき工程を抽出する場合,2水準系直交表に項目を割り付け,項目選択を実施するやり方が一般的である。しかし,項目選択時に標準系直交表を使用していると,因子の割り付ける列を入れ替えることにより,解析結果が異なる問題が潜在している。この問題を解決するため,L68以上の大規模な4の素数倍直交表の紹介,作成方法,検証結果の報告があった。4の素数倍直交表を使用することで交互作用が均等にばらまかれることを確認した。

②「電子写真の現像プロセスの性能向上について」(東レエンジニアリング 稲垣潤):電子写真プリンタの現像プロセスの性能を向上させるため,入力を現像電位差として出力を現像トナー量とした場合と,入力をバックグラウンド電位差として出力をカブリ量(濃度)とした場合との2通りの基本機能を考案してL18実験を実施した。データ解析はどうしたらよいかについて検討し,機能窓法,望小機能,21世紀型動的機能窓法等で解析する方法等についての議論が行われた。

(2)グループ討議

5グループに分かれて,各自が持ち寄った事例について議論した。その中から次の2件のテーマについて全体討議を行った。

①「ロボット用ケーブルの基本機能について」(タツタ電線 大西寿章):ロボット用ケーブルの基本機能について相談があり,V-I特性で評価する方法,応力-変位特性で評価する方法等について議論が行われた。

②「タッチパネルの評価方法について」(日本写真印刷 坂田善博):パネルの評価方法について相談があり,入力Mを変位,出力yを電圧で評価する方法について議論が行われた。

(富士ゼロックス 櫻井英二 記)

 

2005年11月11日に田口玄一氏を招聘して第139回研究会を開催した。

(1)田口玄一氏の講演:品質工学の全体的な考え方についての講義を行った上でMTA法のパターン認識についての説明が行われた。

・技術開発では新しい製品を作ることが目的で,重要なのは生産性を上げることである。電話の交換機が開発されたことにより,多くの交換手が仕事を失った。また,米国では農業の生産性が100倍に上がったことによって失業者が増えたため,自動車やテレビを作った。このように新しい仕事を作り出すのがR&D部門の役割である。

・伊奈製陶ではタイル製造工程のパラメータ実験で,すべて一級品ができるように設計できた。そこで,二級品が2割できるところまで生産速度を上げた。生産現場は品質改善を行ってはいけない。生産速度を2倍にし,余った従業員で次の新しい製品を作らなければならない。

・技術屋にテーマを決めさせてはいけない。

・事故を起こさない自動車の設計には前後左右の状態のセンサーが必要で,さらに総合判断が必要である。総合判断を行うには統計は役に立たず,総合判断を行うのがMTAであり,一つの距離(一次元)にしなければ制御できない。品質工学は,お客のわかる品質問題を工学的に解くことである。血圧はMaxとMinそれぞれを,別々の規格で判断しているが,多くの箇所の血圧データから同時にベクトルとして考えるべきである。米国ビクター社のトレードマークの犬は蓄音機から流れる主人の声を判別しているが,専門家は専門的な特徴をつかんで判別しようとする。しかし,犬は専門的知識がなくても判別できている。また,特徴で判別している郵便番号の読み取りは精度が悪い。

・そしてT法を「お」という文字の識別事例によって,従来と違うやり方「はじっこのT法」について説明された。

(2)事例検討

①「風合い評価方法」(村田機械 森田晃弘):リング糸と糸構造が異なるMVS糸を柔らかい風合いに作り込みたい。そのパラメータ設計の実験結果から,工程データ+物性データを用いて MT法で風合いの評価を試みた。本事例に対して,改善には大同毛織での事例を参考にしたらよいことと,測定器の評価にはソムリエのデータを真値としたSN比で評価すべきなどのアドバイスがあった。また,風合いの評価は多くの研究者が挑戦したがうまくいかなかった。少なくとも糸物性の曲線,ヒステリシスの形などすべて項目として使った研究をしないといけないとの指摘があった。

②「自転車用変速機の最適化」(シマノ 山口壮太):自転車用変速機において,変速の安定性評価にはどのような評価方法がよいかについて検討された。

③「トナージェット最適化検討」(村田機械 荘所義弘):前回に引き続き,プリンターのトナー飛翔軌跡を安定化させるためのシミュレーション実験について,再現性や欠足値処理についての相談があり,誤差因子,信号因子についての議論が行われた。

(シマノ 太田勝之 記)

 

10月7日に第139回研究会を第3回関西地区品質工学研究会シンポジウムとして龍谷大学瀬田学舎6号館プレゼンテーションルームにおいて開催し,97名が参加した。

(1)講演「品質工学普及の成功要因の分析」 中島建夫(東亜合成):次の内容の講演が行われた。

・品質工学会「経営における品質工学研究委員会」では,2003年7月から①経営課題に対する品質工学の有効性,②普及・推進,③社会への発信(社会貢献)について活動を行っている。

・品質工学を社内に普及させることに成功した会社の成功要因を分析することにした。

・委員会では成功要因を①マネジメントとしてのリーダーシップ,②開発プロセスの整理と徹底化,③技術者への普及とエキスパートの養成,④適用検討会の継続的開催,⑤社内外の専門家・コンサルタントの活用,⑥活用した成果の明確化,⑦中間管理職への働きかけとした。また,資料にはないが,⑧品質工学を熱心に推進する担当者がいるというのもある。

・また,普及のポイントを①導入レベルあるいは企業の状況に応じた推進組織編成,②導入初期は専門家の指導を受けるのが望ましい,③導入初期は重要品質問題に焦点を当てる,④教育をして開発プロセスに適用できるようになってきたら経営課題に直結したテーマに適用させる,⑤推進を継続し,特定の人によらない文化を醸成,ほっておくと衰退するとした。

・経営者は自分の会社だけのことを考えていたのではいけない。社会への貢献を考えるべきである。

・未然防止をどう評価するかは,技術系経営者の重要な役割である。

・テーマを選ぶのは経営者の役割で,個々の技術者に選ばせるとできるテーマしかやらないから,経営者はムリを言って成功させなければならない。

・品質工学を使わないとならないようにプロセスに織り込むことが必要である。

本講演に対して以下の活発な意見交換があった。

a.品質工学を使えというのは手段を限定することになるのではないかとの意見に対して,アルプス電気の谷本氏は使えと指導しているとの返答があった。また,手段は自由だとし,品質工学を使えと言わないほうがよくないかとの意見に対して開発期間の短縮,予算を削減するということを行っても品質工学を使えばできるということになるのではないかとの議論が行われた。

b.委員会の経営者は品質工学を普及させようとしているのかとの意見に対して,委員会のメンバーは普及させたい人とある程度やっている人の2種類存在しているとの返答があった。

(2)事例発表

①「風合い測定法の検討」(村田機械 森田晃弘,荘所義弘):以下に示す内容について事例発表が行われた。

・糸の構造は糸のより方によって一般的なリング糸と村田機械の独自のMVS糸があり,MVS糸はケバは少なく,風合いが硬い。従来はKESシステム(既存の風合い計測システム)で風合いを測定していたが,村田独自の風合い測定器を開発し,糸の段階で風合いの測定をしたい。

・MVS糸の紡織条件を検討することで,任意の風合いを得て,同時に糸物性も狙いの仕様に調整する方法を選定したい。

・紡織機の条件を制御因子に,誤差因子をローラの新旧,測定員,風合い測定器条件とし,糸を作り,布にして,風合いを測定する。

・風合いは専門家が判断する順位,新測定器の出力で,望目特性の解析をした。

・SN比の再現性は悪かったが感度はそこそこ再現しているので,感度の大きい因子を使って風合い値の調整を行った。

・新測定器では人の評価と同じようになった。

本事例に対して以下の活発な意見交換があった。

a.誤差因子が悪く,お客様の使用条件になっていない。洗濯前後のようなものを取り上げるべきではないか。

b.風合いの調整については初期条件だけの合わせこみになっている。

c.タイトルは測定方法の検討とあるが,測定方法についてはどうなっているのかの質問に対して,今回はまだできていないので,これから検討するとの返答があった。

②「スポット溶接の溶接条件の最適化」(マツダ 松井克真):以下に示す内容について事例発表が行われた。

・自動車の製造工程で利用されているスポット溶接の溶接条件について,従来はフックの法則に基づく評価を行っていたが,再現性が悪いとの指摘があり,入力を通電時間,出力を累積エネルギーとして評価を行うこととした溶接機の最適化により,スポット溶接の最適化を狙った。

・実験の対象は製造工程におけるノイズの影響をうけやすい複数重ね溶接(1.2mm×3枚)とし,標準条件N0には板厚3.6mm×1枚の通電状態を設定した。

・誤差因子は板間隙,打点角度,分流の3つを取り上げ,N1はノイズなし,N2はチリが発生しやすい条件とした。

・最適条件ではエネルギ不足のために強度不足となり,感度での調整が必要となり,電流値で調整し溶接強度を確保した。

・04年には電極のドレッサについて,ドレッサ後の電極を用い,溶接して電流―電圧特性での評価を行ったが,再現性が悪かったので,誤差因子を見直し再度挑戦した結果,再現性がよくなり,電極の寿命も5倍になった。

・05年は3社のドレッサについて機能性評価を行い,損失関数でのコスト比較を行った。

本事例に対して以下の活発な意見交換があった。

a.実際の工程に適用した時,設定した条件が設定通りになっているか確認しているかとの質問に対して,設定条件が実現しているかは不明で,今後,取り組みたいテーマと考えているとの返答があった。

b.標準条件に目標値をもってきたらだめ。これでは安定性と合わせ込みを同時にやっていることになり,まずく,安定性の確保と目標値への合わせ込みは別々にすべきである。

c.今回の電流―電圧特性の評価では,市場で大丈夫かどうかはわからないのではないか。

③「CAEによる圧縮機用ケーシングのロバスト設計」(三菱電機 春名一志):以下に示す内容について事例発表が行われた。

・圧縮機のケーシングとスクリューの熱容量が異なるため,ある程度の隙間が必要で,運転状況や周辺温度により,熱変形量が変わるため,隙間縮小には熱変形変動を減衰させる設計が必要となる。

・大型機器であるので試作にコスト・時間を要するので,3次元CAD,CAEを利用し,ケーシングのパラメータ設計を行った。

・簡易化された3次元モデル作成→熱伝導計算→熱変形量計算を自動化し,計算時間の短縮を図った。

・SN比,感度とも再現性が得られ,その結果を反映させた試作品(1台)では,温度分布が大きい極端な稼動条件でもケーシングとスクリューに接触のないことが確認できた。

・また,ケーシングとスクリューの隙間を33%が縮小でき,冷媒漏れ量の削減により,性能向上(省エネ11%向上)ができた。

・今回のやり方で開発期間が実試作に比べ1/70と短縮できた。

本事例に対して以下の活発な意見交換があった。

a.シミュレーションの精度が悪くてもよいということを他の人達も理解しているかとの質問に対して,担当した人は理解しているとの返答があった。

b.芯振れや磨耗等の実際に使っている状態を再現するような,総合的なものをやる必要はなかったか。

c.隙間問題では,各々のばらつきを小さくする必要があり,ケーシングだけでは不安が残る。

④「MTシステムによる溶接ロボットケーブル負荷診断システム開発」(日産自動車 栗原憲二):以下に示す内容について事例発表が行われた。

・自動車の組み立て工程で使われている産業ロボットの動作負荷が高くなり,ロボットのケーブルが断線することによる,生産ラインの停止が散発している。工場では品質管理手法を使って断線の解析を行ってきたが,限界となって相談があり,MTシステムで対応することになった。

・ケーブルへの負荷はロボットの動作プログラムに応じて時々刻々と変化し,ケーブルへの負荷は曲げや捩れ等の時系列で多数の特徴量から構成される。動作プログラムをもとにケーブル両端の座標の時系列変化に着目し,曲げ負荷3項目,捻れ負荷3項目と工場,ロボット型式,ケーブル諸元などの非動作特性14項目も検討対象とした。

・国内3工場から,生産開始後2年以上断線が発生していないロボット79台の動作プログラムを正常集団として定義し,306のプログラムを集め,異常データとして,断線が発生したロボット7台について26プログラムを集めた。

・時系列データは分割し,区間の最大値,最小値,平均値,標準偏差を抽出した。

・非動作特性,分割区間数,同時性特性,周波数特性をL9直交表に割り付け,各条件で単位空間を作成し,ロボットの等価動作回数,マハラノビス距離を求め,SN比を求めた。

・断線診断システムとしては断線発生の閾値を3とすることでできることがわかった。

・診断システムの能力を検証する意味でベテラン技術者が診断した結果と診断システムとを比較したが,診断システムでは技術者が不明としたものをNGと判定できた。

・異常プログラムの修正のため,2要因間の散布図を作り,単位空間からの外れ具合を見ることで修正方向を示す方法を提案した。

本事例に対して以下の活発な意見交換があった。

a.ケーブルが断線することを評価する能力がないからこのような仕事をすることになったのではないか。ロボット購入時に評価することができていれば,この事例のようなことはやらなくてよかったのではないかとの意見に対して,定格能力を超えた範囲でロボットを使いこなすことを日産はやろうとしている。この事例をやったから評価できるようになったとの返答があった。

b.工場の現実をなんとかしなければならないという立場であればよくやったと評価できる。

c.マハラノビスの距離と動作回数から,新しく作ったプログラムではケーブルの寿命がどれ位になるかを予測できないか。

(ダイハツ 清水 豊 記)

 

9月3日に第138回研究会を開催し,32名が参加した。

(1)勉強会:①「内燃機関用ピストンのスラップ騒音に対する形状最適化(いすゞ中央研究所)」(ヤンマー 清水明彦):シミュレーションによる騒音の小さいピストンの設計方法について議論した。衝突エネルギー評価の是非,SN比の計算方法の妥当性,誤差因子の割付方法などについて疑問点が指摘され,シミュレーションによる直交実験のあり方について一般論を再整理した。

②「高含水率コンクリート下地用プライマーの材料設計(東亜合成)」(住友ダウ 岡田耕治):下地コンクリートの水分率が高くても安定した高い接着力を発揮できるプライマーの材料設計を品質工学的に検討したという事例。初期特性の評価であり,ノイズとして劣化を考えたほうがよいのではないかなどの意見が出された。

(2)グループ検討会:5グループに分かれグループ毎に持ち寄ったテーマを討議した。その中から下記の3テーマについて全体討議を行った。

①「金属リレー曲げ加工」(オムロン 田中秀明):加工寸法のばらつきを低減させることが目的である。加工装置の制御因子が一つしかないので増やすべきであり,金属部分以外に樹脂モールド成型条件など製造ノイズが何かを知るために水準を振って実験的に調べるとよいなどの意見が出された。

②「レーザ基盤切断方法」(三菱電機 鶴田明三):基板にキズをつけて折っているが,折れ方にばらつきがある。装置のばらつきをノイズにして,寸法をゼロ望目特性で評価するなどの意見が出された。

③「砥石によるゴムローラ加工方法」(ヤマウチ 加藤敦士):最適化を電力評価で行いたい。研磨工程では電力変化が少ないので,微小電力計を用いる方法もあるが,インバータがあると電力一定となり計測の意味がなく,むしろ寸法を計測して評価すればよいなどのアドバイスがあった。

(タツタ電線 高木正和 記)

 

8月5日に田口玄一氏を招聘して第137回研究会を開催した。出席者は35名。

(1)田口氏の講義:書籍「研究開発の戦略」をベースに,品質工学の考え方,手法など全般について次のような講義があった。

・品質工学の定義を行うことが学会の目的であると考えるが,いまだにできていない。

・R&Dの部署が,お客の分かること(品質問題)を研究していたのでは,能率が悪い。品質工学では,品質ではなく機能を研究する。たとえば自動車エンジンの機能は,ガソリンの消費量とトルクではなく,化学反応である。前者の研究では,NOXの問題が解決されない。フォードには化学者が不在であったため,残念ながら基本機能の研究ができなかった。

・コピー機の機能を考えれば,感光ドラムの電位を800Vのような高電圧に設定する必要はなく,もっと低電圧にして画質の最適化を図る研究をテーマとすべきである。

・元日産自動車の上野憲造氏が取り組んだ研究は,“物づくり”ではなく,すべての物が加工できる“加工技術開発”である。製品ごとの研究はやめるべきである。ただ,上野氏の研究(転写性)も,今では古い考え方で,現在の加工技術開発は電力と加工量の関係を調べている。余分なエネルギーを消費せず,投入された電力がすべて加工に使用されるなら,表面の凹凸や騒音は発生しない。

・市場で発生する品質問題を,工学的に解決するのが技術者の役目である。現在は,かなりの時間と工数をかけて性能を評価しているが,もっと早く正確に評価することに取り組むべきである。

・今年の発表大会で金賞を受賞した事例は,ゼラチンの機能を評価する研究であったが,製造者と消費者が共同で取り組んだテーマであり,9月にアメリカでも発表する。

・電気技術者の間違いは,常に現象を研究する点にある。ラジオであれば,音声のパワーを研究するのでなく,共振,共振点のズレを研究すべきである。

・技術者には創造性が必要である。科学者には創造性より観察力(現象の)が重要である。

・標準SN比の方が,比例式のSN比より加法性が良い。(比例式からの誤差を入れてないから)

・JRの脱線事故も,速度と回転半径についてパラメータ設計を行っていない結果である。人のミスをいかにして防止するかが技術者の任務である。

・T法のメリットは,項目が増えても計算時間が短い点にある。行列を利用する計算や,直交展開を利用すると,判別や予測の精度は上がるが,計算に時間がかかる。製造工程や瞬時の判断を必要とするテーマでは,T法が有効である。

(2)事例検討①「コンバインの走行時振動評価方法」(ヤンマー 清水明彦):コンバインの走行振動は,田畑のように地面がやわらかいところでは問題ないが,アスファルトになると運転者にかなりの負担になる。そこで,運転席での振動低減を目的としたシミュレーションによる研究を検討している。本事例に対して,次のアドバイスが行われた。

・振動の評価は,運転席だけではなく,他の場所(左右)でも計測した方が良い。

・ラグ(突起)の高さ,大きさも制御因子ではないか。高さを低くすれば振動は小さくなるが,スリップを抑制する効果も小さくなり,湿田での走行性に問題が出る。

・自動車のタイヤは振動を吸収する機能を持っている。ラグにも振動を吸収させる機能(ダンパーとしての)を持たせてはどうか。

・振動を低減したい時に,振動そのものを計測するのはよいのか。加振力を変えて,振動の減衰機能を調べれば問題ない。加振力は,ラグの高さを変えても良い。

・転輪を支持する構造まで入り込んでパラメータ設計すべきだと思う。

・ロバスト設計とは,振動の大きさがノイズによって変化しないことである。

・シミュレーションによるパラメータ設計では,誤差に制御因子を使うことを推奨している。

・コンバインを走行させない形での静的な解析でも可能ではないか。

②「原子燃料棒支持棒溶接の最適化」(原子燃料工業 塩田哲也):原子燃料棒を支持する部材(金属)の溶接技術開発のテーマ。溶接状態を評価する方法の検討を行っている。接合部の強度確保,スパッタ発生の低減などが目的であるが,これらは品質であり,基本機能として考えられる特性を探したい。現状は,テストピースで強度の評価や目視検査をしている。また,誤差因子も適切な物を探している段階である。本事例に対して,次のアドバイスが行われた。

・一般的には,溶接部に荷重をかけたときの変位を計測する(フックの法則)。ただし,荷重をかける方向や角度(ねじりなど)は,どのように評価に入れるかを充分に吟味することが必要。単純な曲げや引張りでは精度の良い評価にならない。

・溶接部の機能は上記の評価で良いと考えるが,お客は形状の安定性(保形性)を求めているはずで,この評価も必要ではないか。

・機能性評価には,ベンチマーク(現行条件,他社製品など)を入れておくのが良い。

・寿命も問題であるが,寿命試験をそのまま実施しては効率が悪い。機能の変化(誤差に対する)を評価すれば,寿命試験の代用になるというのが品質工学の基本的な考え方。

・誤差因子は,温水中で使用することを考えて決めるべき。

③「トナージェットの飛翔条件最適化」(村田機械 荘所義弘):新しい作像システムとして,トナージェット(トナー粒子を直接媒体に吹き付けるシステム)を,シミュレーションで検討している。L18直交表に制御因子を割り付けて,トナーの移動軌跡を計算し,媒体のどの位置にトナーが移動したかを調べた。トナーが一点に集中する条件を見つけるため,飛翔前のトナーの位置を誤差とし,媒体上のトナー位置をデータとして望小特性で解析したが,確認実験での再現性が得られなかった。この原因としては,実験中に著しくトナーの移動性が悪い実験があったことが考えられた。そこで,いくつかを省いて計算しなおすと,再現性が確保できた。本事例に対して,次のアドバイスが行われた。

・この解析では,結像性しか考えられていない。 結像性より,トナー移動の安定性を評価する方が良い。

・媒体の一点にトナーを集中させるのはチューニングである。制御因子中の一つの因子でチューニングできるはず。トナーの飛翔性を安定化させた後,必要な位置へのトナーの集中をチューニングすればよい。

・計算速度は速いが,モデル作りが大変なので,誤差因子の与え方は工夫が必要である。

・電子顕微鏡の場合には,倍率の安定性を研究している。

(コニカミノルタ 芝野広志 記)

 

7月2日に第136回研究会を開催し,30名が参加した。

(1)勉強会 ①「CAEによる圧縮機用ケーシングのロバスト設計(三菱電機)」(ヤマウチ 加藤敦士):圧縮機のケーシング設計において,コンピュータシミュレーションを用いて温度を信号に基準点比例式でケーシング内径とスクリューとの隙間を解析した事例。本事例について,a)最大変位と最小変位だけのデータを使用しているのはなぜか。b)誤差因子を調合しているのはなぜか。c)こういう実験後に上司から1因子実験での確認を求められるがどう対応すれば良いかについての質問があった。これに対して,a)については計算を簡略化したかったためと推定されるが,シミュレ-ションなので,すべてのデータを用いる方が再現性が良くなる。b)についてはシミュレーションなので,正側,負側に調合しているのではないか。c)固有技術となりそうな因子での1因子実験で確認検証することは大切であるとのコメントが行われた。

②「直交表の作り方」(松下電器 山口新吾):直交表の選び方,作成の仕方等が会員から質問があったので,「直交表の性質」(山本昌吾 中部品質管理協会)の資料を基に,直交表の作成方法を分かりやすくまとめた山口ノートによって説明があった。また,シマノの太田勝之氏から社内で利用されている直交表の選び方(エクセルファイル)の紹介があった。さらに,大きな直交表でも少ない試作数で済む裏技(直交表L18の裏技:2,4,5列に割り付ければ9個のサンプルでよい)についても紹介があった,

(2)グループ検討会:4グループに分かれ,グループ毎に持ち寄ったテーマを議論した。その中から次のテーマについて全体討議を行った。

①「溶接ワイヤーの品質に影響を及ぼすパラメータを特定したくMT法で解析したい」(神戸製鋼 原宣宏):溶接ワイヤー(メッキ)の品質を曲げ試験後のメッキはがれの目視判定によって行っているが,客観的な評価技術を確立したい。そこで現在保有しているメッキはがれのデータを活用してMT法で解析したい。ところが良品が少なく単位空間を作るべき正常なデータがない。こうした場合どのように解析したらよいかについて討議した。

②「コンバイン走行時の振動をシミュレーションで最適化したい」(ヤンマー 清水明彦):コンバイン走行時の振動問題はどういうシミュレーション実験がよいかについて討議した。

③「原子燃料棒を束ねる支持格子の溶接条件の最適化」(原子燃料工業 塩田哲也):原子燃料棒を束ねる支持格子の溶接条件は,強度,組織観察によって評価しているが,最適化を図りたい。そのためにはどのような実験を行うべきかについて討議した。

(村田機械 荘所義弘 記)

 

6月10日に田口玄一氏を招聘して第135回研究会を開催した。

(1)田口氏の講演:テーマ設定の重要性等について以下のように述べられた。

品質問題はお客様にはわかるものである。但し,使って見ないとわからない。技術者にとって,お客様のところで発生するトラブルは開発時にはわからない。よって,開発時に市場・製造で発生するトラブルを予測して技術開発をしなければならないので,市場で現在発生しているトラブルをテーマとして取り上げるのではいけない。また,テーマ設定については,技術者はテーマを解く力は備えているが,設定することは訓練されておらず,技術者に行わせてはいけない。テーマの内容は,すでに発生したトラブルをつぶすのではなく,上流で未然に防止するシステムとその実現が重要であり,そういったテーマを設定しなければいけない。

美術と技術は同一であり,物理現象は設計できない。つまり,自然科学の世界は観察はできるが,設計はできない。観察しかできない世界が非常に多く,設計はできない。プロジェクターは自然界にはない。自然界にないものを創造,設計しているので,その責任は100%設計者が負わなければならない。自然界にないものを創造,設計している際にはトラブルは発生していないので,どのような品質問題が発生するかは不明である。だからこそ,機能をいかに安定させるかが重要となってくるのである。

(2)事例相談①「MTシステムによる画像評価方法の効率化」(コニカミノルタ 西川智春):カラープリンターを対象に自社・他社の画像品質をベンチマークして,MTシステムを用いて評価効率の向上と定量評価手段の確立を目的に,取り組まれた事例である。田口氏から,正負のケースでは,すべてシュミットのTS法を使わなければならず,項目選択を行ってはならない。真値について,社内モニターを真値としているが,真値が一番重要であり,真値は売れ行きであり,それと関連のあるデータを取らなければいけないとアドバイスがあった。メンバーからも,この問題に対しては,評価項目に現れているものに対しては機能性評価,評価項目に現れていないものは好みの問題としてアプローチすべきである等のアドバイスがあった。

②「NC加工機主軸用モータの低騒音化・高生産性設計」(三菱電機 鶴田明二):NC工作機械用の主軸に使用されるモータの高速回転領域での騒音問題に対して,新システムでの対策をパラメータ設計を用いて最適化した事例について検討した。田口氏から,スムーズに1回転することに対するばらつきを評価すべきであり,製造条件のばらつきだけでなく,劣化に対する安定性についても検討すること,シミュレーション実験であるので,水準をすべてばらつかせてパラメータ設計を実施すること等のアドバイスがあった。

③「アイソレータの機能性評価について」(三菱電機 鶴田明二):高周波電力を一方向に流すデバイスであるアイソレータの基本機能について検討した。田口氏から,出力値を直接評価せず,カットオフ周波数の半値周波数にノイズを印加して評価し,立ち上げる部分と立ち下げる部分の周波数のばらつきを評価する。また,制御因子によってはfo値は変わるが,そのときの-3dB値のデータをノイズとして印加する等のアドバイスがあった。

④「風合い評価方法」(村田機械 荘所義弘):異なる2種の糸で作成した布サンプルの風合い比較について検討が行われた。田口氏から,過去に「味」「におい」など,人間の評価が真値であるものの研究は行っているが,工学的に難しい。専門家の「優・良・可」の評価データで実験計画法に取り組み,工学的な計測と比較する。また,現状の計測器は平均値をアウトプットするが,ばらつきは把握できないので,これを把握するようにしないといけない等のアドバイスがあった。

⑤「トナージェット最適化検討」(村田機械 荘所義弘):プリンターのトナージェットのトナー飛翔軌跡を安定化させるためのシミュレーション実験の考え方,評価方法について検討が行われた。田口氏から,到達点の1点にトナーを集中させたいのであれば,電磁レンズの設計問題であり電磁レンズに機能を持たせて,安定化させなければならないとのアドバイスがあった。メンバーからは,レンズ群は1群ではなく,ある程度の群数が必要である。また,左側の像を右側の像へ転写するという考え方をしてはどうかとのアドバイスがあった。

(松下電工(株) 木村哲夫 記)

 

5月13日に第134回研究会を開催し,31名が参加した。

(1)事例相談「人に優しい自動改札機扉検証」(オムロン 藤本貴之):自動改札機の扉の評価方法について事例相談があった。まず,信号因子とノイズを直交表に割り付けて,シミュレーション実験を行い,開発目標の妥当性を検証する。次に,扉の機能性を評価するやり方を議論した。

(2)勉強会「Crメッキ処理条件の最適化(石川島播磨重工業)」(GS-YUASA 出水清治):Crメッキ処理工程の最適化における事例。実験データの中でN1・N2の出力が逆転している箇所があるため,ノイズはメッキの厚みのばらつきデータにした方がよいのでないか。テストピースの形状を平板から球形・ドーナツ形等に工夫すれば更に改善できたのではないかという意見交換が行われた。

(3)日経BP社から5月23日に出版される「MANAGEMENT OF TECHNOLOGY」という雑誌に品質工学事例の特集があるとITEQの中野恵司氏から紹介があった。

(4)第15回企業交流会(4月22日 於:松浦機械製作所)の報告が原和彦顧問から行われた。アルプス電気の谷本勲氏の講演では,品質工学の推進を全社に号令をかけてうまく行っていることと,松浦機械製作所の最新金型製造システム(金属光造形とNC技術を応用した高速切削加工を融合させた高度な加工技術)の紹介があった。

(5)グループ検討会:5グループに分かれグループ毎に持ち寄ったテーマを討議した。個々のテーマは,グループ内の討議で問題解決されたため,全体討議にかけるテーマはなかった。

(富士ゼロックス 櫻井英二 記)

 

4月2日に第133回研究会を開催し,32名が参加した。

(1) 事例検討「直交表によるソフトバグの効率的な検証」(シャープ 林勇治):複合機のFAX機能についてソフトバグ検出を短期間で行う方法について議論した。多因子・多水準での並列直交表へのわりつけ方について議論が行われた。ソフトバグの検出ではあるが,ハードとの組み合わせ評価も必要ではないかとの指摘が出された。

(2) 勉強会「MTシステムによる熔接ロボットケーブル負荷診断システムの開発(日産自動車)」(シマノ 石川記尉):MTシステムを適用し,ロボットの動作プログラム設定時点で,量産時のケーブル段断線発生の有無を精度よく診断するシステムを構築したという事例で,等価動作回数Xの定義式が理解しづらく,改善手法や改善後の状況についても興味深い事例で疑問点について議論を行った。関西,京都および滋賀品質工学研究会共催のシンポジウムで招待講演の候補となっていることから,直接討議できるよう講演依頼の強い要望が出された。

(3) 「中沢メソッドについての紹介」(顧問 原和彦):タグチメソッドと中沢メソッドを比較することで,タグチメソッドへの理解を深めて欲しいということから紹介が行われた。中沢メソッドにおける技術者の開発哲学に触れた点にはおおいに同感できるが,タグチメソッドについては誤解があるように思う。中沢メソッドでは,機能誤差といっているが,たくさんの品質特性を情報量という無次元化された加法性のある評価尺度で総合情報量として最適値を求めているが,機能性設計ではなく,機能設計の考え方で,規格内の良品レベルの評価を考えていないのでタグチメソッドの機能性の評価とは全く異なるものであることが解説された。

(4) グループ検討会:4グループに分かれグループ毎に持ち寄ったテーマを討議した。グループ討議のテーマの中から下記の3テーマについて全体討議を行った。

 「企業の業績予測のつづき」(コニカミノルタ 芝野広志):前回に引き続き,会社四季報の経営指標を元に,業績予測のためにTS法で解析することにしたが上手く行かなかった。売上高の変化率を使うべきとのアドバイスがあり,業種での層別化も合わせた解析結果の報告があった。層別化により一社のみ業績予測の傾向が確認できたことが報告された。

 「光学式ロータリーエンコーダのスリット穴の最適化」(シマノ 太田勝之):購入した光センサにスリット付き円盤を内製してロータリエンコーダとしたいが,振動などノイズの影響が予想されるので,スリット穴の最適設定をしたい。その評価方法について相談が行われた。スリット形状で信号波形は変わるかもしれないが,信号波形が安定さえすればよいと考え,後でチューニングすればよいなどの意見が出された。

 「ブレーキの鳴き(騒音)問題」(三菱電機 鶴田明三):モータでの鳴きは騒音問題となり重要な品質特性となっている。音はエネルギーが小さく直接測定しづらいので何を計測特性とすればよいか。その評価方法について相談が行われた。時間に対して制動力が安定すれば鳴き方も安定するのではないか。ブレーキを鳴きの発生器と考えて,発生する周波数を計測してはどうかなどの意見が出された。

(タツタ電線 高木正和 記)

 

3月5日に第132回研究会を開催し,24名が参加した。

(1) 勉強会「トラクションドライブ表面加工の最適化(日産自動車)」(三菱重工業 高濱正幸):自動車のオートマチック変速のトロイダルCVTにおける日産自動車の最適化事例。これをベースに直交表での水準数や因子数の変更方法の基礎知識を確認した。また,本事例についても最適条件の選び方,誤差因子や信号因子の選択についての議論を行った。

(2) 事例相談「切り屑の分断化をさせる工具の形状および切り屑の吸引装置の最適化」(神戸製鋼 赤澤浩一):切り屑の分断化をさせる工具の形状についてFEMシミュレーションにより最適化を行い,実加工でも再現した結果が報告された。さらに,切り屑の吸引装置の最適化について,止まり穴切削加工後の切り屑や油を自動で除去するエア吸引機の評価方法についての相談があった。油の残量を動特性や望小特性での評価や,シミュレーション解析についてのアドバイスがあった。特に要望があった制御因子のアイデアについても議論が行われた。

(3) 「JAXA(宇宙航空研究開発機構)とのやりとりの報告」(顧問 原和彦):1月31日に,JAXAの責任者3人と日本規格協会関西支部において関西品質工学研究会のメンバー(原和彦,平野雅康,清水豊)と面会した。JAXAの現状を聞き,品質工学の導入を勧めた。打ち上げ成功後,JAXAより「これからは原氏のお説の通りに従う」とメールがあったとのことである。

(4) グループ検討会:4グループに分かれ,グループ毎に持ち寄ったテーマについて討議した。その中から下記の2テーマについて全体討議を行った。

 「企業の業績予測のつづき」(コニカミノルタ 芝野広志):会社四季報の経営指標からの来年の企業業績予測をTS法で行っているが,単位空間の取り方について相談が行われた。経済成長率の項目の追加や単位空間データの選定についてのさまざまなアドバイスが行われた。

 「多層プリント基板の変形問題」(三菱電機 鶴田明三):積層による多層プリント基板の製造工程でのソリを小さくしたい。その評価方法について相談が行われた。反りを測るパラメータ設計が勧められたほか,工程条件のパラメータ設計の方が重要である。そもそも,お客様にとっては反りが問題ではないなら,反りがあってもよい工程を作るべきではないかなどの意見が出された。

(シマノ 太田勝之 記)

 

2月4日に田口玄一氏を招聘して第131回研究会を実施した。

(1)田口氏の講演「タグチメソッドの戦略」:戦略・戦術・戦闘に対して,技術は戦術にあたり,具体的な問題解決を行うことである。タグチメソッドは戦略であり,そこでは専門技術を使ってはならない。共通する技術が戦略である。勤務したベル研,電電公社での経験に基づけば,技術者の仕事はコンセプトやシステムを考えることであり,設計パラメータを決定するのは作業でそこには技術はいらない。また,市場問題を解決することも技術者の仕事ではないと述べられた。さらに,R&D部門長の役割として,すべての人の技術開発の能率化であり,R&Dの部門長はそういった研究テーマを与えないといけない。技術開発の戦略は長期的に使えるものであり,1つ1つの個別問題のテーマ化ではない。また,TV,写真,コピー,プリントの各システムは入力画像を出力画像としてアウトプットする点で共通の技術で,評価は同じテスト画像で同じデータを取り,同じSN比と感度で機能性を評価すべきである。そして,4つのシステムの同じ機能を同じ評価にしようというのが,品質工学の目的である。

(2)「充填計量工程の最適化」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ 芝野広志):粉末材料のボトリング(充填)を行う充填計量工程の最適化を行うための実験計画について検討された。充填計量工程の機能について,充填重量に対するゲート開口時間をノイズ印加の下で評価し,充填ばらつきが小さく(SN比:大),充填効率が向上(感度:小)する条件を選定すべきとのアドバイスが行われた。

(3)「アルミ・樹脂複合管の曲げ加工条件の最適化」(積水化学 佐藤 聡):アルミ・樹脂複合管の曲げ加工工程での加工条件の最適化のための実験計画について検討が行われた。現状,座屈不良を管理しているが,設計起因の方が大きく,設計問題として市場のノイズに対する安定性を確保すべきとのアドバイスがあった。また,不良問題より,圧縮応力が発生しないような設備設計の問題として取り組み,外側が伸び,内側も伸びなければ圧縮応力が発生しているとして,圧縮応力を可視化して評価してはという提案もあった。

(4)「スキャンニングソナー受信アンプチャンネル間偏差の抑制」(古野電気 小河慎二):受信アンプの位相ばらつきを抑えるために現状は精度の高い部品を採用しているが,品質工学を用いて部品精度が低くても,安定した性能を確保できるシステムをシミュレーションを用いて取組んだ事例の検討が行われた。船の周囲には,プロペラ音や波浪など周囲雑音が存在することから,スキャンニングしない時と音波を発信する時の両方で安定させるべきである。また,構成する回路A・B・Cを個別に最適化しており,個々のシステムは最適化できたが,全体システム,つまり,お客様の実使用との相関の確認が必要とのアドバイスがあった。また,位相とパワーに分けて評価すべきで,位相は別途評価(ゼロ望目)が必要である。遠くへ行く方と行かない方のノイズはパワーのノイズであり,方向のノイズではなく,パワーのノイズ+方向のノイズを直交表に割付けて評価するなども提案された。

(松下電工(株)木村哲夫 記)

 

1月15日に総会と原顧問の特別講演を行った後に第130回研究会を実施した。

(1)総会:芝野会長より,昨年もシンポジウムをはじめ活発な活動ができた,本年度も関西シンポジウムをはじめ,他の研究会にない関西ならではの取り組みとともに,新しく会員になられた皆様へのサービスも充実させていきたいと考えているとの挨拶があった。2004年度の活動報告・会計報告,2005年度の活動計画・予算計画,新幹事が紹介され承認された。さらに,竹か鼻俊夫氏(TTコンサルタント)の顧問就任について推薦があり,承認された。

(2)原顧問の講演 「日本の現状と品質工学の役割」:サムソン電子が1兆円を超える利益を出している。日本の電気関係10社の利益を合わせても5400億円しかない。GDPも6位から9位に落ちてしまい,日本はおかしくなっているのではないか。H2Aロケットの打ち上げを再開しようとしているようだが,過去の失敗を反省せず,相変わらず同じことを繰り返している。国益を考えた開発テーマに取り組むべきだ。日本では開発戦略がないのでろくでもないテーマしか出てこない。会員の皆さんには,ぜひ,地震や災害の予測といった「新しい問題」に取り組んでいただきたい。

(3)研究会:グループディスカッションの形で5グループに分かれて実施した。その中から次の3テーマについて全体討議を行った。

①「分散分析表でプーリングをするか,しないか」(松下電器 山口新吾):社内で質問されることからプーリングについて質問があった。パラメータ設計時はプーリングの意味がない(分散分析表は作らない),許容差設計時には寄与率をみるために分散分析表を作る。再現性がない時,分散分析表のSeは参考になる等の討議が行われた。

②「信号で特性の桁が大きく異なる時,桁の小さいデータはSN比に反映できない。信号毎にm/σを計算し,足し算した値を望小で解析してはどうか」(三洋電機 神谷一徳):本テーマのような問題について半導体データのAミV特性(信号V)を例に検討が行われ,ほしいのが電流ならば電流Aを信号にすることで解決することになり,なにを信号にするかよく考える必要があることが再確認できた。

③「溶接のばらつき低減」(神戸製鋼 原宣宏):官能検査の結果と工程データを利用してMTSで影響の大きい工程を絞り込み,その後パラメータ設計に持っていきたい。最終の品質を測ろうとすると時間と費用がかかるが,簡易的に官能評価であればデータが採れる。長い工程で多くのパラメータがあり,実験を行うのは大変とのことに対しては,工程を分けてやればよいのではないか等の討議が行われた。

(4)新年会:研究会終了後,新年会を実施,和気あいあいの中,引き続き活発な議論が行われた。

(ダイハツ 清水 豊 記)

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