2013年の活動

2013年1月12日、日刊工業新聞社において第224回関西品質工学研究会を実施、参加者は39名であった。1.総会:2012年度活動・会計報告、2013年度幹事、活動・予算計画が承認された。

2.新春記念講演「戦略的技術者をの目指せ」(原顧問):笹子トンネルの天井落下事故は安全点検の問題ばかりがクローズアップされているが、この事故の基本は「事故が起きた時に、被害を最小にする」設計問題」である。通常、我々は楽観バイアスで生きているが、このような場合、悲観バイアスで設計すべきである。すべての部品は劣化するものであるから、十分な時間がたてば故障率は100%になることを前提に設計するなら、どのような構造にすべきかを考えるのが戦略的技術者といえる。戦略性のない技術者は設計の限度を超えた失敗を「想定外」として逃げてしまう。技術開発の4つの戦略を示し、技術責任者と技術者の役割、責任を明確にした。その後、具体例の紹介があった。

3.「MTシステムに関する最近の研究結果」(立林):品質管理学会や応用統計学会で発表されたMTシステムに関する研究結果が紹介された。MT法、RT法、両側T法での研究結果が紹介された。

4.「Juse-StatworksV5の紹介(立林):2012年9月に発売された品質工学編をスクリーンに写し操作・表示を説明した。

5.WG活動:4グループに分かれて各グループのテーマについて検討した。

6.場所を変え新年会で引き続き議論した。((同)オフィスワイ・エス 清水 豊 記)

2013年2月8日、日刊工業新聞社において第225回関西品質工学研究会を実施、参加者は33名であった。

1.リコーの細川氏を迎えて「直積配置を使った許容差設計 光学設計への応用」、「T法によって拡張されたパラメータスタディー」の2テーマで講演いただいた。

 「直積配置を使った許容差設計 光学設計への応用」では、交互作用が強い光学モジュール開発で、超期間設計で量産品質を確保する為、品質工学とシミュレーションを連携した品質予測と事前対応を可能とする新しい手法について報告頂いた。

 「T法によって拡張されたパラメータスタディー」では、新規技術の開発段階で、全体最適と加法性を両立しながら技術者の創造性を引出しブレークスルーを実現する新たなアプローチであるPSET法(パラメータ・スタディ・エンハンスメント・タグチ法)について報告頂いた。これら2テーマについて考え方と手法について活発な議論を行った。

2.テーマ検討「品質工学教材 きつつき のSN比再現性についての相談」(三菱重工:高濱氏) 教材「きつつき」の落下時間の望目SN比の利得再現性UPについて相談があった。「きつつき」の理想機能の定義、機能性評価の検討、SN比の利得再現性UPの議論など、手順と考え方を同時に教育する事が重要とのアドバイスがあった。

3.テーマ検討「SN比の整理3」(マツダ 武重氏) SN比に関して、誤った計算や対象技術に相応しくない評価方法が散見され、健全な進化が心配される為、これまでのSN比の歴史を振り返りSN比の考え方と数理の紹介があった。SN比は、お客様の欲しい信号である真値のばらつきを評価する指標である等、SN比に関して活発な議論を行った。

4.原顧問より「モノづくり什の掟」について説明頂いた。①モノを作る前に品質を創れ、②品質工学は統計ではない、③科学的思考ではモノは出来ない、④市場品質はすべて設計できまる、⑤完全な設計は試験や検査は不要、⑥品質評価はn=1でよい、⑦品質を改善するときには品質を測るな(機能性の評価)、⑧評価はあるべき姿を定義して、「安全性」はSN比で行う、⑨直交表で設計の「再現性」を検査する(パラメータ設計)、⑩システムは複雑でなければ、改善できない 「ならぬものはならぬ」のです!今後の研究会で、議論を重ねていく。

5.ワーキンググループ活動 ワーキンググループ(以下、WG)活動を4つのグループ①機能性評価、②MT基礎、③MT発展+ソフト、④新WG検討 に分かれて活発に議論した。

((株)パナソニック 山口 新吾 記)

2013年3月2日(土)第226回研究会を日刊工業新聞社にて開催した。出席者は32名。

1. オムロン真崎氏より、「時刻暦データを誤差因子とした過渡時の基本機能の研究(いすゞ自動車)」の紹介があった。①通常の制御設計はチューニングしか考えないところに間違いがあり、ノイズに強くするのではなく、ノイズをつぶすことを考えている、②時間は標示因子。制御因子でSN比を向上する話と再現性の話は別である。後者を考えるのがパラメータ設計である、などの意見が出た。

2.マツダ武重氏より、「ハイポイギア高速加工条件の最適化(マツダ)」の紹介があった。切削「加工」の目的は「部材の分離」であり、表面積が増えることで、エンタルピーが増加する。そのためにどれだけエネルギーを投入したかが機能ではないか。エンタルピーの計測は困難なので表面積で代用できる。表面積は切削量でもよいが直線が理想とは限らないので標準SN比がよい。本テーマは汎用性の問題を考えていないこと、品質だけで生産性が評価されていないことが問題である、等の意見があった。

3. ゴールドラットコンサルティング関氏より、「ザ・ゴール」で著名なゴールドラット博士のTOC(Theory of Constraint:制約理論)の紹介があった。キーワードは「つながり」と「ばらつき」。ボトルネックの工程(制約)があると、一生懸命働いても仕掛品の山になるだけ。この制約に着目して、改善することで全体のスループットを上げることができる。その人にしかできない仕事というのは実は少なく、そこに集中させることが重要、等の示唆に富む講演であった。

4.ワーキンググループ:「機能性」「MTシステム基礎」「MTシステム応用+S/W」「新WG発足検討」の4グループに分かれて、活発な議論を行った。

(三菱電機 鶴田明三 記)

2013年4月5日(土)第227回研究会を開催した(午前は造幣局工場見学、午後は日刊工業新聞大阪支社にて通常の研究会)。出席者は36名。

1. ニイタカ/生田氏より「粉状洗剤供給装置の評価およびそのS/Wのデバッグ」について相談があった。①評価を実施する前に目的や検討範囲を明確にするべき、②ハードの評価では洗剤の状態変化等のノイズ因子を考えること、③S/Wのデバッグでは機能仕様書等から信号を抽出することが第一歩、などの意見が出た。

2.ブラザー工業/高田氏より、機能定義についての相談があった(題材は①樹脂射出成形と②プリンターの紙送り)。①転写性は基本機能ではない。樹脂の流れを測る方が射出成形の本質を測ることになる、②1枚目と2枚目の理想状態を定義すれば、搬送機能を評価する中に重送や空送の要素を入れることができる、などの意見が出た。

3. 三菱電機/鶴田氏よりパラメータ設計の解析手順について相談があった。例えば利得の推定の際に全因子を使う場合と約半数の因子を使う場合が知られているが、多数の初心者に示すガイドラインではいずれか一方に集約したい事情がある。これに対し、迷うことの少ない全因子を使うやり方でよいのではないか、などの意見が出た。

4.ワーキンググループ:「機能性」「MTシステム基礎」「MTシステム応用+S/W」「新WG発足検討(検討後、高度化WGと命名)」の4グループに分かれて、活発な議論を行った。(三菱電機 鐡見太郎 記)

2013年5月10日(金)第228回研究会を京都品質工学研究会と合同で開催した。出席者は52名。

1.京都研究会会員より「ダイヤモンド電着めっき条件の最適化」について相談があった。実部材ではなくTPで評価すべき、ダイヤモンド粒子関連の誤差因子の影響を見て制御因子を再考しないと改善しない、などの意見が出された。

2.京都研究会/宮内氏より原顧問の「モノづくり什の掟」の中の“科学的思考ではモノは出来ない”、“完全な設計は試験や検査は不要”、“品質評価はn=1でよい”について質問が出され、意味について議論がなされた。3.関西研究会/中山氏より「糸端引出し装置の評価方法」について相談があり、具体的な評価方法について議論がなされた。

4.関西研究会/鶴田氏より「高周波回路のパラメータ設計」の紹介があった。逐次法によるSN比と感度の最適化において大幅に計算時間を短縮する方法論が紹介され、その方法論の是非や更に改善する方法などについて議論がなされた。

5.5Grに分けて各自の悩みや品質工学の不明点などについてフリーディスカッションを行った。自テーマの進め方、品質工学教育の内容、機能性評価の各社での普及状況、品質工学を含めた商品開発の方法論、風土改革の方法、など、幅広いテーマで活発に議論がなされた。(マツダ 武重伸秀 記)

2013年6月1日(土)第229回研究会を日刊工業新聞社ビルにて開催した。出席者は38名。1.4Grに分かれて、機能性評価、MTの基本と応用、統計学との相克など、各自の事例や公開論文をもとに活発に議論した。2.シマノ/栗山氏より「竿曲がりのAC/NCを数値化して判定する」と題して話題提供があった(発表者の意向により内容非公開)。3.コニカミノルタ/西川氏より「機能の定義を考えてみよう」と、田口博士の言葉とされる「基本機能をやめて目的機能を評価する」ことの真偽と真意について議論した。目的機能はお客が決めるものであり、目的があって、機能があり、次にものを考えるという順序が大事という意見が出された。4.コニカミノルタ/志茂氏より「教育資料の活用方法」と題して話題提供があった(発表者の意向により内容非公開)。5.マツダ/武重氏より「マツダR&D部門における品質工学の取り組み」として1970年代から現在までの同社での変遷が紹介された。その間の品質工学の普及や定着、技術者の質的変化と組織の対応について原因とあるべき対策など人材教育の観点で大いに議論した(タツタ電線 高木正和 記)

2013年6月28日(金)~29日(土)第230回研究会を河内長野YHにて開催した。出席者は30名。1. 田口伸氏を招待して、事例検討「自動車の制限速度はどう決めるべきか」を議論し、講演「統計学と品質工学」をいただいた。前者では、高速側と低速側で発生する損失を定量的に見積り、損失が最適となる速度を望目特性の損失関数から導いた。後者では、統計学と品質工学の関わりや、統計学者からの批判等が説明された。最後に、品質工学には統計学では扱っていない“タグチ”の独創的なアイデアがたくさんあることが示された。引き続き、コニカミノルタ芝野氏、三菱電機鐡見氏より、「田口玄一博士一周忌シンポジウム」(竹内啓氏講演)の内容や感想が紹介され、活発な議論が尽きなかった。

2.事例相談では、ブラザー加藤氏より「アイロンの機能」が議論された。アイロンの機能はシワを伸ばすことで、目的機能の評価でよい、水分や加圧は制御因子の問題でサブシステムに分けて考えるべきでない、などの意見が出た。その他、村田機械荘所氏より「マイクロ波加熱の研究」、他1件が議論された。

3.論文紹介では、神戸製鋼所原氏より、「プレス絞り加工のCAEモデル簡略化によるパラメータ設計の効率向上」が紹介された。塑性変形させるための歪が安定しているかを評価すればよい、形はチューニングの問題。基本機能は重要で応力-歪を計測する、等の意見が出た。また、ブラザー加藤氏より「押しボタン動作感触の定量評価の研究」が紹介され、感触がよければ、押しと帰りの差がないほうが良いかどうかは別の問題、等の意見が出た。

4.ワーキンググループ:「機能性」「MTシステム基礎」「MTシステム応用+S/W」「QE高度化」の4グループに分かれて、活発な議論を行った。

(三菱電機 鶴田明三 記)

2013年8月3日(土)第231回研究会を日刊工業新聞大阪支社にて開催した。出席者は36名。

1.関西の製造業と電力事情(日刊工業新聞社/田井氏)京都企業はオール勝ち組だったのが優勝劣敗のまだら模様になりつつあること、火力発電増強でこの夏・冬の電力不足は避けられる目処等の紹介があった。これに対し、特に政府は国や地球に対する全体最適で政策立案することが必要などの議論があった。

2.DOEによる接着工程の最適化(シマノ/藤谷氏)従来は圧入だった工程を諸事情から接着へ変更しようとしている。DOEを用いて接着工程条件の最適化を試みた。SN比は荷重-変位の関係の標準SN比とせん断強度の望大特性の2通りで求めたところ、前者は再現性が低かったが後者は比較的再現性が良かった。これに対し、改善では望大特性は使うべきでない、SN比と感度は別に解析して2段階設計を行うべき、従来の望大とは違う解析をしているのでこれで良い、等の議論があった。

3.総損失による制限速度の検討(コニカミノルタ/芝野氏)オンラインQEの考え方を活用し、(総損失L)=(品質コストQ)+(管理コストC)が最小になる最適速度を求める検討を行った。これに対し、経済速度はこれで求まるが規制のための速度表示は別ではないか、ドライバーの損失は考えているが歩行者の損失が考慮されていない、等の議論があった。

4.論文紹介(パナソニック/山口氏)(対象論文「MT法による主軸寿命予知システムの開発:松浦機械製作所 高澤ら)。RT法を画像認識以外に用いる場合の注意点等について議論があった。

5.ワーキンググループ:「機能性」「MTシステム基礎」「MTシステム応用+S/W」「QE高度化」の4グループに分かれて、活発な議論を行った。(三菱電機 鐡見太郎 記)

2013年9月6日(金)第232回研究会を日刊工業新聞大阪支社にて開催した。出席者は32名。

1.パラメーター設計による歯車加工条件の最適化(シマノ 井上氏) 

2.MTシステムに関する事例相談(パナソニック 山口氏) 

3.基本機能をエネルギー変換とした時のSN比計算方法(マツダ 武重氏)各種SN比(計測特性、ダイナミック特性、静特性)の制約条件をまとめると共に、技術をエネルギー変換で捉えた時のSN比の求め方の一案が提起され、SN比の求め方について議論があった。 その他、1件の事例検討があった。 

4.ワーキンググループ:「機能性」「MTシステム基礎」「MTシステム応用+S/W」「QE高度化」の4グループに分かれて、活発な議論を行った。

(パナソニック 山口新吾 記)

2013年10月11日(金)エルおおさかにて、関西品質工学研究会、滋賀県品質工学研究会、京都品質工学研究会の主催で、第11回関西品質工学研究会地区品質工学シンポジウムが開催された。出席者は97名。

1. 招待講演「“技術者の意地”に込めた思い」(のっぽ技研 長谷部光雄氏):R社での品質工学展開や独立に至るまでの話、独立後の人脈拡大や執筆活動の話等があった。 

2. 招待講演「MTシステム最近の話題(イプシロン、MSR・・・)」(アングルトライ(株) 手島昌一氏):イプシロンロケット打ち上げでのMTシステムの貢献の話、新予測理論MSR(多重単回帰:Multiple Single Regression)を搭載したソフトの話などの話があった。 

3. 招待事例「T法の推定精度向上の検討」((株)ノトアロイ 林憲一氏):提案の計算方法で推定精度が向上することが示された。一方、工程のロバスト設計がより重要であるとの意見も出た。 

4.事例「パーマ剤開発への品質工学導入の取組み」(コタ(株) 岡田和樹氏):発表者はパーマ剤、品質工学とも初心者であったが1週間でノイズ(髪の傷み具合)に対してロバストなパーマ剤の配合を導いた。 

5. 事例「琵琶湖の赤潮発生の判別と発生日予測の試み」(滋賀県工業技術総合センター 井上栄一氏):琵琶湖の水質データから将来の赤潮発生日と赤潮が発生しない日の判別をRT法で試みた結果、赤潮の発生有無を判別できる可能性が高いこと等が示された。 

6.事例「技術評価の考え方-地球環境問題への挑戦-」(マツダ(株) 武重伸秀氏):技術はすべてエネルギーを扱う学問体系から成り立っており、有害エネルギーの総量を技術の損失と考えるのが良い、等の意見を展開した。最後に、原和彦顧問からの講評があり、シンポジウムは成功裏に終了した。(三菱電機 鶴田明三 記)

2013年11月2日(土)第234回研究会を日刊工業新聞大阪支社にて開催した。出席者は30名。

1.ヒラタ精機/佐藤氏より「MTシステムに関する事例相談」があり、方法論について議論がなされた。

2.三菱電機/鐡見氏より「標準SN比のN0、チューニング用のβ2」について使用上の注意点などの話題提供があった。

3.シマノ/太田氏より「重み付け誤圧によるパターン認識」をFisherが判別の事例で用いた「あやめの種類の判別」に適用した場合の結果について報告があり、RT法と同等の判別ができること、重み関数を工夫することにより更に判別精度を高めることができる可能性があることなどが報告された。

4.マツダ/武重氏より「分散分析と動特性SN比の数理」について疑問点が投げかけられ、それぞれの数理について議論がなされた。

5.「機能性」「MTシステム基礎」「MTシステム応用+S/W」「QE高度化」の4グループに分かれて、活発な議論を行った。(マツダ 武重伸秀 記)

2013年12月6日(金)第235回研究会を日刊工業新聞大阪支社にて開催した。出席者は36名。

1.日本写真印刷/齋藤氏より「パラメータ設計で用いる因子の効果的抽出方法に関する提案」の論文紹介があり、制御因子の出し方について議論がなされ、QFDやTRIZ等の道具を使うのは構わないが、道具に振り回されず機能をきちんと考えることが大切、などの意見が出された。

2.元コニカミノルタ/平野氏より、コニカミノルタ殿で作成された「田口玄一論説集の要約資料」について紹介された。本論説集も含め、品質工学を教える/学ぶためにどのようなものが必要かについて議論がなされた。

3.原子燃料工業/村瀬氏より「品質工学普及のための心理学的アプローチ」と題し、品質工学を社内で普及/指導する立場の者が理解しておくべきことについての考えが述べられ、普及させるための考え方について議論がなされた。

4.「機能性」「MTシステム基礎」「MTシステム応用+S/W」「QE高度化」の4グループに分かれ、活発な議論を行い、本年度の活動のまとめと来年度の活動内容について報告がなされた。(マツダ 武重伸秀 記)

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