2010年12月10日(金),第199回研究会を開催した。出席者は36名であった。

(1)招待事例「T法(1)を使った不動産評価のまとめと課題」(吉野不動産鑑定事務所 吉野荘平) ①T法(1)の有効性について,②相関係数を利用した項目診断,③T法(1)を適用する上での留意点,④欠損値(建物付の取引と更地の取引データが混在する時)とT法の有効性に関しての話題提供があった。不動産鑑定にどう用いていくのがよいか議論がなされた。

(2)事例相談「購買業務の中で品質工学は何ができるか」(オムロン 中野一志)

 コニカミノルタの物流業務への品質工学適用を参考に購買業務にどう適用していけば良いか計画段階での相談である。購買業務のあるべき姿から,納期遅れを予測し対応できる方法について議論がなされた。

(3)事例相談「難加工部位の共穴加工の高能率化」(三菱重工業:橋本晋吾,大泉幸介)

 異なる材料の合わせ目部に共穴加工を行う場合の切削条件を最適化する実験の相談である。評価方法,誤差因子,サンプル製作方法が議論がなされた。

(4)事例相談「SN比の整理」(マツダ:武重伸秀)

 SN比の歴史紹介,第3版実験計画法からSN比を再定義,目的に適う定義式を導出,計算に必要な2つの要素から一般式を導出した。これまでのSN比との使い分けの提案の報告があった。モータ評価の事例も紹介され,SN比に関する議論がなされた。

(村田機械 荘所義弘 記)

 

2010年11月5日(金),第198回研究会を開催した。出席者は32名であった。

(1)事例相談「品質工学を用いた廃水処理システム開発」(ヤンマー 伊勢村浩司)

 バイオマスガス化発電システムで発生する廃水処理方法の最適化についての相談である。廃水処理の研究なら基本機能は化学反応,可能なら廃水処理の研究ではなく発電システムの検討が先,などのアドバイスがあった。

(2)事例相談「RFIDチップ埋め込み工程への品質工学適用検討」(マクセル精器 近藤真澄)

 樹脂製容器にRFIDチップを埋め込む工程の最適化の相談である。成形の問題なら,チップなしのテストピースでの評価,成形時にチップがダメージを受けるなど通信機能に影響がある場合はチップとしての機能を評価する,などのアドバイスがあった。

(3)話題提供「MTSシンポジウムでの誤圧についての紹介」(オフィス ワイ・エス 清水豊)

 応用計測研究所(株)主催のMTシンポジウム(9月7日)で紹介のあった「誤圧によるパターン認識」について紹介があった。紹介のあった方法はまだ検討段階の要素が残っており,不明な点も多いとの認識に至った。その上で,MTシステムは方法が違っても評価方法は同じであるべき(総合SN比のみ)で,新しい方法の妥当性をT法(3)の推定結果との相関で判断するのはまずい,という意見があった。

(4)グループ討議

 4グループに分かれてグループ討議を行い,合計で14テーマについての議論を行った。「釣竿の基本機能」「システム選択とシステム創造」の2テーマについて,引き続き全体討議で議論した。

(村田機械 鐡見太郎 記)

 

10月8日(金)ヴィアーレ大阪において,第8回関西地区品質工学シンポジウムを開催し,一般参加を含め97名が参加し,講演と事例に対し活発な意見交換が行われた。

1.特別講演「アジアの製造業品質工学の企業での活用」(アイテック社長 井上清和):海外での品質工学普及状況が紹介された。中国,台湾,韓国,米国,日本などを比較して経済状況,有力企業の経営戦略,各国での品質工学の普及状況と問題点をわかりやすく紹介された。

2.招待事例「トヨタ自動車における品質工学の取り組み」(トヨタ自動車 小杉敬彦):2006年からの品質工学の導入経緯と状況,そして最適化事例も紹介された。既存活動と連携や品質工学は「火の用心」で「火消し」ではないことが強調された。

3.事例1「品質工学の活用によるヘアスプレイ樹脂つまり改善検討」(サンスター 米谷明雄):従来,長期間のテストが必要であったスプレイのつまりを,パラメータ設計により短期間で改善した事例が報告された。

4.事例2「シリコンオイル乳化工程の検討」(ネオス 中尾誠仁):樹脂成形に用いられるフッ素系離型剤の乳化工程の最適化事例が報告された。小さい粒子を作ることが必要で,最適化により工数が削減できた。

5.事例3「T法による光ケーブルの耐蝉性評価」(タツタ電線 鈴木祥充):光ケーブルへのクマゼミの産卵による被害を削減するため,試験小屋にセミを放ち,21種類のサンプルにおいて疵数と深さを測定し,T法で解析した事例が報告された。

6.事例4「ガスタービンプラントの異常予兆検知」(三菱重工業 三上尚高):各プラントの遠隔監視にMT法を用いて異常診断を行うようにした事例が報告された。従来は多岐にわたる監視項目のそれぞれについて正常パターンを研究しなければならなかったが,小さな兆候の早期発見にMT法によるパターン認識が有効で,マハラノビス距離のみで自動判定ができるようになったと報告があった。

7.まとめと講評(原和彦関西品質工学研究会顧問):それぞれの講評と「全体最適」の大切さのまとめがあった。

(シマノ 太田勝之 記)

 

9月4日(土),日本規格協会関西支部において第196回関西品質工学研究会を開催した。出席者は34名であった。

1.事例相談「プリンタ用ピントラクタの検討」(東レエンジニアリング 稲垣 潤):業務用プリンタの構成部材で,送り孔つき用紙を定速搬送するためのピントラクタである。現行品が製造中止となり,その代替品採用する機会にあわせて速度アップのため用紙の重連化を検討したが,スタック不良,用紙破れなど搬送不良が発生した。早く原因を調べたいという社内設計担当者の要望に対し,L18直交表を用い,出スタック不良の程度を出力として,望小特性で解析した。用紙の送り孔をピンへ深く挿入しすぎたことが原因であることが分かった。問題解決と実験効率を優先するなら今回の静特性評価で十分だが,全体最適という観点から,動特性での評価やプリンタの印字精度という本来機能での評価についても議論した。

2.事例相談「ガスタービンプラントの異常予兆検知」(三菱重工 高濱正幸):ガスタービンコンバインドサイクル発電とは,ガスタービンで発電し,その排熱で発生させた蒸気で蒸気タービンを回転させもう一度発電する方式である。今回はMT法を用いて,トラブル発生を未然防止できた。MT法を用いることで,マハラノビス距離(MD)という一つの尺度で診断できることが大きなメリットであり,異常時には項目診断で異常要因を診断することも可能である。課題は,閾値の決定や,さまざまな運転状態への対応である。関連して多重共線性の問題など,MT法適用の際の詳細な事項について討議した。

3.事例相談「“品質工学に用いるSN比の再検討”の審査部会コメントに対する解説」(三菱電機 鶴田明三):エネルギー比型SN比の報文投稿の経緯を紹介し,審査部会よりコメントおよび補足が付されていたので投稿者よりこれに対して解説した。η21cとηEの違いは自由度nk-1の有無だけで,利得の考え方や技術的意味は変わらない。また,下流の予測は無限母集団に対する推定ではなく,下流の再現性で確認されるべきであるなどの解説があった。「正しいかどうかではなく,どちらがより効率的かで議論してほしい」という田口の言葉を引用し,今後は会員各位の意見を求めることを考えるとした。

(タツタ電線 高木正和 記)

 

2010年8月7日(土),日本規格協会関西支部において第195回関西品質工学研究会を開催した。出席者は32名であった。

1.事例相談 「シーケンサのOSのデバッグ」(村田機械 鐡見太郎):繊維機械はカムなどのメカ制御から独立したアクチュエータで制御する方式に変わってきており,ソフトウェア制御が増大している。その制御ソフトの検証に直交表を活用する計画について議論した。システムの入出力ではなく,OSの入出力が何かをしっかり定義するべきであり,そのためにはOSの機能や働きをはっきりさせるのが良い,どのくらいのテスト時間や工数が可能かを決めてそれにより直交表のへの割付をするべきである,などのアドバイスがあった。

2.事例相談 「樹脂シャフト振れ改善」(村田機械 荘所義弘):トナー搬送用スクリューは,金属製から樹脂製の置き換えが進んでいる。高い寸法精度が要求されるが樹脂製は金属に比べて高精度化が難しい。特に振れの精度が要求されるので成形条件を検討してこれを改善する実験計画について議論した。ノイズが製造段階のものばかりなので市場のノイズもとるべきである,測りやすくて成形しにくい形状のテストピースを使うべきである,強度も必要なのでフックの法則の評価をするのが良い,などのアドバイスがあった。

3.事例相談「物流業務への品質工学活用」(コニカミノルタ 芝野広志):T法(1)による倉庫作業時間の予測がテーマである。このテーマの目的は,作業工数を予測するとともに,間接業務にまで品質工学の適用分野を広げることである。管理・間接業務は大きな成果が期待できるしデータがたくさんあるが,IT化が進んでいるものの仕事のやり方は変わっていない。入庫場所や個数によって倉庫作業時間を予測し,また出荷先や個数によっても倉庫作業時間を予測した。SN比は高いがグラフからは精度が高いようには見えないので予測精度はSN比だけでなく相関係数が高いかどうかが重要,重要度は重みだけでなくηを見たほうがよい,などの意見やアドバイスがあった。

4.グループ討議:4グループに分かれてグループ討議をした。全17件の相談があった。その中の1件を全体で討議した。入力と出力(縦軸と横軸)をどうとるかについて活発な議論がされた。

(コニカミノルタ 平野雅康 記)

 

2010年7月10日(土),日本規格協会関西支部において第194回関西品質工学研究会を開催した。出席者は33名であった。

1.講演「大学での研究・産学連携の問題点などに関係する研究遂行上の問題点」(大阪府立大学 内藤裕義):企業と大学の研究者を動員して「課題解決型」の研究を展開していく必要性が提案された。また,最近の学生のメンタリティへの対応や,大学の研究・教育以外業務の多さなどの苦労話にも及んで問題点について説明された。

2.話題提供「技術評価の考え方の再整理」(マツダ 武重伸秀):QES2008の岩崎浩一郎の基調講演を聞いて思うところがあり,田口哲学を再整理した。その中で感じたのは「企業⇒消費者⇒地球環境への視野の拡大」が重要であり,その評価方法の創出が課題である。公害評価は,「自然の営みをどれだけ乱したか」で評価することができ,これは使った自然エネルギーのうち,自然界に捨てているエネルギーの総和を評価することで可能になりそうである。

3.事例相談「オンライン品質工学(検査設計)での疑問点」(富士通テン 田畑文夫):検査設計で臨界不良率を求める際の品質上の損失の金額をどう見積もるべきか議論した。不良品には損失AのものからA0のものまであるが安全側に見てA0で計算するという意見と,許容差ΔにすでにA0は考慮されているので,損失は許容差Δの損失Aでよいという意見が出た。最終的には各企業の考え方が反映されるべきであるとした。

4.話題提供「タグチの視点で切る技術の悩み」(村田機械 鐡見太郎):市場不良を起こした製品を,機能性評価で追試してみるとすぐに機能しなくなることが分かった。上流で機能性評価やロバストネスの作りこみを行えばよい問題であるが,なかなか社内で理解が得られない。企業では「技術そのものに対する理解」がボトルネックになっており,上記のような問題を発生させている。最後は「人づくり」であろうと考える。

(三菱電機(株)鶴田明三 記)

 

2010年6月11日(金),第193回関西品質工学研究会を開催した。出席者は38名であった。

1 講演「ロバスト・アセスメント─機能性評価」(ASI 田口伸):年1回恒例となった田口伸を招聘しての講演で,ASIでのDFSSの内容の紹介があった。また,提示された研究会用の演習課題を,4Gに分かれ,Gディスカッションを実施した。。

2 事例発表

(1)「ソフトデバッグについて」(富士通テン 内村英郎)

:ソフト評価支援ツールAutoCOVの紹介である。評価漏れが少なくなるように評価手順を生成する。ソフトデバッグの各因子は直交の必要はなく,一度でも組合せが出現すればよい。これにより,テストパターンの大幅削減,因子数・水準数の制限なしを実現した。

(2)「介護用品(スマイレット)の改善検討」(村田機械 荘所義弘):

寝たきり状態になった人の排泄物を自動排出処理する装置の問題点を改善したい。樹脂製カップに専用のおむつをセット,排泄物を自動で検出,洗浄水で回収,周辺の洗浄を無人で行う。問題点は,①回収できない排泄物がある。②洗浄水がもれる。③カップにおむつをセットしにくい。本事例に対して,回収能力は排泄物の出た量と回収量を,もれは水の使用量と回収量を測るべきではないかとの意見があった。

(3)「シックスシグマを活用した技術開発プロセス」(マツダ 山田洋史)

:2001年に導入のSS活用の紹介である。

(4)「溶接部品の機能性評価における解析方法の検討」(マツダ 渡辺忠俊)

:製造上の誤差条件に対し,ロバストな溶接条件AとそうでないBを用い,パイプとプレートの接合試験体を製作し,機能性評価を実施した。機能性評価を用いて市場での劣化を評価できる目処がついた。

本事例に対して,ネジリであればフックの法則で溶接部全体の評価になるとの意見があった。

(5)「損失関数とはなにか」(三菱電機 鶴田明三):損失関数を活用する際の課題や現実に使用されていない理由を議論した。エネルギー比型SN比を採用すると補正なしで損失関数や変化率と連携できることが説明された。

((同)オフィスワイ・エス 清水 豊 記)

2010年5月8日(土),第192回研究会を開催し,事例検討を行った。出席者は36名であった。

(1)「社会損失を最小化する品質工学」(ブラザー工業 加藤重己)

:過去に体験した家電製品などの不具合のさまざまな事例を題材として,社会損失を最小化するためには,企業や技術者としてどのようなことが重要なのかを検討してみた。機能性評価を実施すれば解決できるかについて議論が行われた。

(2)「シミュレーションと品質工学の連携による開発プロセス改革」

(コニカミノルタオプト 平野雅康)

:社内で実施された光学関連の事例をもとに,シミュレーションによるパラメータ設計の留意点などについて説明された。シミュレーション活用に抵抗はないが,ロバスト設計という概念が希薄であり,これらの問題についてシミュレーションによって光学系の機能性評価を行う場合の工夫について議論された。

(3)「発電プラント部品の組み立て条件最適化」(三菱重工 森田龍介):工場内で組み立てた製品を一度分解して現地へ搬送し,現地で再度組み立てを行うと,工場での状態(トルク値)が再現できない課題が発生している。現地でのトルク値が低下する問題についてパラメータ設

計を実施した。最適条件では,トルクの上下限規格をクリアした。

(4)「透明タッチパネルの表面平滑性向上」(パナソニック 中上裕一)

:透明タッチパネルの最表面フィルムの接合過程で,熱加圧している影響を受けて表面が変形し,平滑性が損なわれる不具合がある。平滑性の評価は干渉縞を目視評価し,ランク付けしている。加工工程の諸条件を制御因子としてパラメータ設計を実施し,最適条件では狙い通りの

改善効果を得た。本事例は,6月の品質工学研究発表大会で発表する。

(5)「EMC対策への品質工学的アプローチ」(パナソニック 中沢弘一)

:製品のEMC対策は,試作品を特殊な場所(EMCサイト)に搬送し,そこで評価して対策案を検討し,対策したものを再評価するという手順が一般的に繰り返されている。EMCサイトへの搬送や測定の煩わしさなどが課題であり,本事例では,それらの課題に対する簡略化方法を,パラ

メータ設計を活用して検討した。重要な周波数(数か所)でのEMC測定値を評価特性とし,望目特性での解析を実施,最適条件では現行よりマージンを広げることができた。本事例は,6月の品質工学研究発表大会で発表する。

(コニカミノルタテクノロジーセンター(株) 芝野広志 記)

 

2010年4月2日(金)に第191回研究会を開催した。出席者は30名。

(1)「品質工学とマーケティング」(タツタ電線:高木正和):マーケティング(販売促進)に品質工学的な売り込みをしたい。新材料の販売方法に関して,品質工学を利用するアイデアが議論された。今後,効果の判断に長期間必要な場合にどういう評価結果を持ってお客様に売り込むかを考えていく。

(2)「ドライアイスショットブラスト装置の使用条件の評価」(三菱重工:寺坂宏介):ドライアイスショットブラスト装置の塗装除去効率を評価検討した結果についての相談があった。使用条件の評価方法,実験誤差の与え方,解析方法に関する討議が行われた。

(3)「何を計れば良いか?」(コニカミノルタ:芝野広志):過去事例でも何を計れば良いかを考えると,事例の価値が違って見える。過去に自分自身が関わった①OA機器の温度上昇対策,②材料の均一分散技術の開発,③現像剤粉砕工程の最適化の3事例に対して,客が欲しいもの

を考え,目的~結果を考え直すと,どう研究を行うべきであったかについて議論が行われた。

(4)「微小信号での機能性が重要な場合の評価方法」(三菱電機:鶴田明三):従来のSN比の評価方法は,微小信号に対する機能性評価が軽視される点を指摘し,動特性の機能は設計目的により2種類の考え方があることを仮説し,新しい観点の提示があった。広い信号水準範囲で出力の変化率が重要な場合,信号水準毎の損失関数の平均値から計算した総合損失SN比で評価することが提案された。提案の評価方法に対して,さまざまな議論が行われた。

(村田機械 荘所義弘 記)

 

2010年3月6日(土)に第190回研究会を開催し,事例討議とグループ討議が行われた。出席者は28名。

1 事例討議

(1)「コニカミノルタでの推進施策報告」(コニカミノルタテクノロジーセンター 西川智晴):コニカミノルタでの汎用技術(QFDやTRIZを含む)の普及・推進について報告があった。これに対し,それぞれの手法を教えることは構わないが,単に手法としてそれぞれの開発フェーズを分担するのではなく,目的から考える技術者を育成することが大切だという意見があった。

(2)「偏相関行列を使ったMT法」(オフィス ワイ・エス 清水 豊):MT法の相関行列のかわりに,偏相関行列を用いた方法が紹介された。フィッシャーのアイリスのデータに適用してみたが,判別精度は普通のMT法の方がよかった。多重共線性の回避の一手段にもなりうるので,有用な事例が今後出るかも知れない。

(3)「多水準での効果的なデバッグ」(シマノ 太田勝之):ソフトのデバッグで,水準数が非常に多い信号が存在する場合がある(例えば,電車の駅の券売機)。このような時,組合せ実験では3水準で代表させ,残りを1因子実験する方法が知られているが,多水準の信号を直交表の外に出し,1因子実験と他の信号をわりつけた直交表との組合せでテスト計画を作る方法が提案された。できるだけ少ない実験数でバグのリスクを小さくすることが期待できる。

2 グループ討議

4グループに分かれてグループ討議が行われた。その中から,次の2テーマについて全体で討議した。

(1)「3水準間の水準ずらしをどう考えるか」(オムロン 真崎藤義):3因子間の水準ずらしをどう考えればよいかについて問題提起が行われた。

(2)「銅板のレーザー溶接の評価について質問」(パナソニックエレクトロニックデバイス 林 千春):銅板のレーザー溶接の評価についての機能の考え方,標準条件N0をどのように設定するかについて議論が行われた。

(村田機械 鐡見太郎 記)

 

2010年2月5日(金)に第189回研究会を開催した。出席者は23名であった。

1「部品製作コスト予測システムの研究」(村田機械 鐡見太郎):コストの80%が設計で決まるが,その見積もりには経験が必要である。そのため,寸法などの図面情報を元にT法(1)を使って予測を行い,相関の考慮や項目選択などをした場合としない場合などで解析を比較した。その結果,従来方法より予測精度が向上した。類似形状で分けてT法をした方が,さらに精度が上がるのではないか。安い製品を単位空間にしているが,いっぱい加工しているものを単位空間にしてはどうか。これで設計者が簡単に見積もりできればすばらしいシステムであるなどの意見が出された。

2「ドライバーPCBとモータの破損」(村田機械 鐡見太郎):糸を作る機械(精紡機)で,糸を一定速度で引っ張るためのモータの故障対策を行ったが,前兆もなくいきなり故障する場合は,どのように評価したらよいかが議論された。回路は,電流-電圧特性で測れないのか。通常の定格以上の電圧をかけたときの応答をみてはどうか。回路の機能ではなく,もっと大きなシステム全体で見てはどうか。たとえば,モータが糸を引っ張るところまで評価してはどうかなどの意見が出された。

3「大丈夫か? 日本の技術」(村田機械 鐡見太郎):最近,買い換えた自宅の電子レンジでさまざまなトラブルが続出したことや,それに対する対応のまずさなどが報告された。そのことから最近の国内メーカの技術についての議論がなされた。

4グループ討議:午後からは,小グループに分かれ,それぞれで活発な議論が行われた。個別の事例相談の他,「QEの推進方法」や「水準ずらし」や「MT法」などの不明な点について,広範囲な内容の話し合いや助言がなされ,その中の2テーマを全体で討議を行った。

(1)「コイルの端子の溶接の接合評価」(オムロン 中野一志):TIG溶接の最適条件を見つける場合の評価方法は何がよいかとの質問に対し,電流-電圧特性では難しいなら,ワイヤーの強度を評価する方法や溶接の機能ととらえ,溶接の電力の安定性を評価するなどの意見が出された。

(2)「SN×β=0ならノイズの影響なしと言えるか?」(三菱電機 鶴田明三)

:変位-応力特性で,途中で破断した場合,破断以降のデータをゼロにしたが問

題がある。標準SN比で解析した場合,N1とN2が入れ替わる。その過程で,SN×βとSeのそれぞれがもつ意味があいまいで,分解することに意味がないと気づいたと報告された。標準SN比では,ノイズが与えられていない状態がN0であり,N1が新品状態なら平均をとらずにそれをN0にする。変位を信号,応力を出力にとっているが,破断した場合は信号と出力を逆にするとよいなどの意見が出された。

(シマノ 太田勝之 記)

 

2010年1月16日(土)に総会に引き続いて第188回研究会を開催した。出席者は47名であった。

1 新春記念講演(原和彦顧問):消費者は賢い。消費者の満足を得られない製品は淘汰される。生活者の満足を得るために活動できているか,自分に問うてほしい。そこに品質工学が貢献しているか,自問してほしい。顧客が満足する機能性を評価するためには,顧客の求める機能が何であるか知らなければならない。「生活者のウォンツ」こそが機能である。顧客の声(VOC)が目的機能である。本研究会で是非とも,このことを研究してほしい。手段,選択できるシステムは無数

にあるが,顧客のウォンツに即した目的機能をしっかり考えてほしい。市場ノイズに強い設計がロバスト設計(二段階設計)である。信号のことは考えないで,ノイズの影響だけを考えようというのが標準SN比である。一段目のパラメータ設計の極意は「システムは複雑」であるべきで,いわゆる「無用の用」を働かせるのであるとの講演が行われた。

2 SN比意見交換会:意見交換会の背景と目的について,鐡見太郎,鶴田明三の両氏から概略の説明があった。エネルギ比型のSN比については2007年に最初の提案があり,2008年の研究発表大会では実行委員長賞を受賞した。より深い議論を喚起するため2009年に学会誌に投稿したところ,否の判定が下されたという経緯がある。今後の品質工学の発展のためには,この時期に十分な議論が必要と考え,斯界の有識者を招いた意見交換会を開催した次第である。

有識者として招聘した手島昌一,細川哲夫,中野惠司,日座和典の四氏を交えて議論した。従来のSN比(β2/σ2)であれば機能性-感度校正-損失を一貫して考えられるなどエネルギ比型SN比にない利点がある。SN比がデータ数の影響を受けるのは当然であり,それを考慮して実験すべきである。しかし,SN比に対しては多くの考えがあり,使う者が適宜択すればよい。実際は個々のテーマで計算方法をアレンジしている。二十世紀型SN比はエネルギ単位系で計算できるようになっていたが,二十一世紀型SN比は機能に対するノイズの影響のみを考えており,計算式がエネルギ式から外れていると考える。田口玄一も,もともとは通信のSN比からの類型として以下のように定義式を提案されていた。

η=10log(Sβ/(Sβ×N+Se)=10log(Sβ/SN)

これはまさにエネルギ比型SN比である。ただ,学会誌に掲載されることを目指すなら,研究テーマをエネルギ比型SN比の論考とせず,別テーマの事例研究の中で,エネルギ比型SN比を使用することが提案された。あるいは,エネルギ比型SN比を「通信のSN比」とするなど,改名案が出された。関西研究会以外の研究会からも事例が出るよう働きかけることも提案された。審査部会との議論を呼びかけたが現時点では実現していない。また,学会誌の会員の声のような記事では敬称の有無は著者の自由筆記で良いが,著者の断りなしに編集側が改編した場合は著作権侵害となる恐れがあるなどの議論が行われた。

(タツタ電線 高木正和 記)

What's New

 

 <入会案内> 

随時入会歓迎しています。事前見学も歓迎。

 

<研究会開催日>

 定例会、リモートWGの開催予定をGoogleカレンダー形式で掲載。取り込みも可能です。→予定

 

<品質工学シンポジウム>

2024年10月4日

 

<セミナー情報>

・品質工学会イベント

・日科技連 

・ITEQ 

・日本規格協会

 など

 

<会員専用ページ>

発表予定を更新しました

毎年1月にパスワード変更

忘れた方は問い合わせください 

 

お問合わせはこちらから